これです。
井上雄彦の「バガボンド」。吉川英治の宮本武蔵を下敷きにした漫画です。
実は、少し前に、彼の出世作「SLAM DUNK」を一気読みしたところです。思いっきりスポ根のくせに、あまり真正面からだと照れがあるのでしょう、ギャグではずすところなどは、小林まことの「1,2の三四郎」を思い起こさせます。連載当時はすごい人気だったそうなのですが、もう少年漫画を卒業していた年頃だったので、読むのは初めてだったのでした。
で、この「バガボンド」は以前10巻くらいまで読んだのですが、まだ連載が終わっていないので、放っておいたものです。いまだ連載途中ですが、とりあえず24冊一気読みしてしまいました。
この漫画の中では、兎に角人がどんどんどんどん次から次へと死にます。斬って斬られて血しぶき舞いまくります。読んでるだけで痛そうです。この時代には、人の命はこれくらい軽く、人々は、死体や血や排泄物などと今よりももっと近い場所で暮らしていたのでしょう。そういう意味ではリアルなのかもしれません。
そもそも自分は争い事を極端に嫌います。こんな斬り合いなどは、争い事の最たるもので、自分とは真反対のところにあるものの様に普段は思っています。
でも、自分も生まれつきそうだったのかというと、多分そうではありません。
争い事があったとして、勝者の得たもの、敗者の失ったもの、さらには、勝者の失ったもの、敗者の得たもの、こういうものを足していった時、いつだってトータルでは失うものの方が莫大に大きいんだ、という事を経験的に知ったから、こんな風になったのだと思います。
けれども、自分の中に本来あったであろう、動物としての闘争本能の様なものが全く消えたわけではない事を、こういう漫画を見て再認識します。
だからといって今日から攻撃的に生きるというわけではありませんが、このような体験は貴重かもしれません。そういう認識は、攻撃的な人好戦的な人を理解するのに役立ちそうです。
それから、この漫画は物事を獲得していく、というのはどういうものなのか、と言うことを考えるきっかけを与えてくれます。
脇役をしっかりと描いているのも好きな所です。彼らに共感出来るかどうか、というのは大切な事です。これはラッセハルストレムの映画などにも通じる事かな、と思います。
それと、言わずもがなの事ですが、絵の持つ力を感じます。ってこれ一番大事かもじゃん。今、天保山のサントリーミュージアム(もうすぐ閉鎖だそうです)で井上雄彦展やってるそうで、時間があれば行ってみたいのですが。
とにかく、
「ああ、早く続きが読みてえー。」
この気持ちがいやなので、僕は大抵、連載が終了して、単行本が出きってから、一気読みをします。