お酒のはなし第三弾です。バックナンバーは
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バーテンダー時代には、それでも色々なお酒を試しました。カクテルの世界というのもなかなかに興味深いものでした。今はもう大半を忘れてしまっていますが、レシピもたくさん覚えましたし、カクテルにまつわる気の利いたエピソードたちもお酒の世界をより豊かにしてくました。その頃に覚えたエピソードのうちで、気に入っている話にこんなのがあります。
ドライマティーニという有名なカクテルがあります。ドライジンとドライベルモットをステアグラスでささっと混ぜて、ショートグラスに注ぎます。仕上げにレモンの皮をちょっとしぼって、スティックに刺したオリーブを添えて出来上がりです。かのフィリップマーロウが愛した辛口の男っぽいカクテルです。
ジン4に対してドライベルモット1というのが基本の比率だったと思います。時とともに、ジンの比率を上げて、より「ドライ」にして飲むのがカッコいい飲み方とされるようになってきます。5対1、6対1、とどんどんエスカレートしていき、次には、「ドライマティーニ ウォッシュスタイル」なるものが登場します。これはどんなものかというと、ステアグラスにいったんベルモットを入れて軽くステアしたあと、そのベルモットを捨てます。そこへ適量のジンを注ぎ込むわけですから、比率で言えばおそらく10対1あるいはそれ以上になるのではないでしょうか。
これこそ究極のドライマティーニだ、と思われたのですが、もっと「ドライな」マティーニを考え出した人が現れます。
どんなものだと思いますか?
答えが落ちてましたので、興味のある方は
ここをどうぞ。
そんな感じで比較的楽しく働いていたのですが、以前にも書いたとおり、自分のバーテンダーとしての限界は「結局ビールが一番」というところだったと思います。ビールが一番なら、世界中のビールを飲みくらべてみるとか、自作してみるとか、深めていくやり方はいくつもあったのですが、そこが自分の文化度の低さです。
お酒に限らず、食べ物でも、音楽でも、「自分はこれが好きなんだあ」といって深くのめり込むということがありません。ファッションなどにも全く無頓着です。アコーディオンを始めたのだって、アコーディオンが、アコーディオンの音楽が好きで好きでたまらなくて始めたのではなく、ハープと合うだろうというある種実用的な発想からです。だから、皆さんが知っているようなミュゼットとかタンゴとかの名曲を自分はあまり知りません。
基本的にはそういう自分は変わりようがないと思っています。それでも、時には、もう少しは色んなことに興味を持って深めていっても良いのではないかと思わないわけでもありません。
特に、こうして人前で自分の作った曲を演奏するようになると、自分の表現の根っこにあるものは一体なんなのだ、自分が一番大切に思っていることはなんなのだ、という問いに近い将来ぶちあたってしまうかもしれません。
それに備えて、というわけではないのですが、自分の文化度を上げるために、最近ある勉強を始めました。(S)