建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

安全をどこまで機械に委ねるか? ~住宅編

2017年07月13日 | 小ネタ

建築弁護士の豆蔵です。

AIやIoTについて、もはや見聞きしない日はない、という状況になってきましたね。
(IoT・物をつなぐの先にAI・人口知能の利用があるという前提で、一緒に話をしています。)

昨日の朝刊よれば、某ドイツ車の自動運転は、いよいよ「レベル3」という「緊急時以外はお任せ」という水準まで実用化が進んだとのこと。

余談ですが、自動運転の実現には、車の技術的な課題以上に、社会的な理解や合意、法制度の整備にハードルがあると言われていますね。
ドイツの場合、中央分離帯のある高速道路を60km/h以下で走行する場合に限り、レベル3の自動運転が認められると紹介されていました。
もっとも、そうした具体的なルールがある国はまだ少なく、日本でも具体的なルール作りには入っていません。

私見ですが、
発生可能性が低くても、発生した場合に、許容できない被害が予想される場合、そのリスクを取るべきではない。と思います。
したがって、自動運転に任せる方が、人間よりも確実に安全である。という客観的な事実が必要となります。

加えて、自分や親族や大事な人が自動運転車に轢かれた場合の心理的影響をも、考慮しなければなりません。
(世の中的は、こっちの方が重大かも)

コンピューター等の機械に「安全」を委ねることについて、社会はもっと真剣に議論すべきだし、事業者は覚悟を持って進めてほしいと、
常々思う今日この頃。

 

話が脱線し過ぎましたが、ここから建築(住宅)の話です。

今般、国交省が、IoT住宅の実現へ向けた事業の補助を始めました。→リンク

事前の国交省の事前懇談会は、推進が目的ですので、従来のIT住宅の課題や新しいアイデアなど、前向きな議論が中心です。
特に、医療や介護分野における、期待・注目度が非常に高いのもよく分かります。
(自立した高齢者のサポートにおけるITの壁は、思った以上に高く、簡単には進まなさそうですが。)

一方、課題の中心として認識されているのは、個人情報保護の問題ですが、それ以上に個人的に気になってならないのが、標記の安全の問題です。

「建築では、安全性の問題はないのでは?」
いえいえ。自分の身と財産を守る防犯と防災は、住宅の最も原始的な機能ですし、IoT・AIの守備範囲に入っていますよ。

IoT・AIを駆使した住宅が、ウィルスやサイバー攻撃を受けたら?
泥棒は入り放題。家一軒焼くことも可能で、今後の展開次第では、人を殺すことも可能になると思います。

特に、住宅業界における普及の課題として、事業者の裾野がめちゃくちゃ広いこと。
普及しにくい、という心配よりはむしろ逆で、安易に普及してしまった場合の危険を心配しています。
元々、ITに関する人的資源が十分ではない中で、太陽光のようなブームなど来てしまった日には、必要な知見や危機意識が充分でないまま進む可能性が高い。

先の懇談会でも情報セキュリティの専門家が指摘してくれましたが、「つなぐ」ということに対する覚悟が必要。
作る側もですが、もちろん、作ってもらう消費者の側もです。

こんな問題、まだまだ先の話だと思っても、住宅が家電と並べて売られている時代ですからね。あっという間かもしれませんよ。

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