建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

危険な建築物に撤去命令を出せる場合とは?

2015年01月18日 | 法制度
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

先日、空き家問題の公開討論会をNHKでやっていました。
残念なことに、途中からしか見られなかったのですが。

コンパクトシティに対する反発は、想像以上に強かったという印象です。
(国交省の方が、2~3世代かけて実現しようというもので、急激な変化を求めるものではないという説明をされていました。)
コンパクトにする代わりに、どうしたらよいのか?という点には、答えは出ていません。

空き家問題と地方活性化、高齢化。
この先、どこへ向かうのでしょうか。

ところで、
国土交通省が今、パブコメ(法案を提出するに当たり行うご意見募集)で、
「既存不適格建築物に係る是正命令制度に関するガイドライン(案)」というものを公表しています。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155140726&Mode=0
1月23日まで。

建築基準法10条3項では、倒壊の危険性がある建物等に関し、特定行政庁が撤去・使用禁止命令を出せることになっていますが、
前にも述べたように、個人の財産権に対する強力な制限になるということもあり、おそらく、ほとんど使われていません。

これを、具体的な基準を策定することによって、
行政の濫用を防止しつつ、実際に使えるようにしようというものです。

基本的な考え方として、以下を勘案して判断するとしています。
(1)建築物において、劣化が原因で倒壊等するおそれがある
(2)建築物が倒壊等した場合、付近住民や通行人等に被害が及ぶおそれがある
(3)是正命令を行う社会的必要性

しかし、ガイドライン(案)で示されている写真の建物の朽ち果てぶりが、あまりにすさまじくて、
ここまで朽ち果てないと手が出せないのか、と逆に驚きました。
倒壊の危険性には、地震と火災を考慮することにはなっていますが(何もなくても崩れそう)。

なお、これらはあくまで建築時には適法だった「既存不適格」を対象したものであって、
違法建築に対する是正命令(建基法9条)はまた別の話のはずです。

もっとも、実務と世の中的には、古い建物は既存不適格建築物と違法建築物があまり区別されているとは思えませんね。
地震時の安全性の確保には、もっとシビアに取り組んでいただきたいものです。
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