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なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

マタギ奇談

2020年09月06日 09時14分43秒 | 読書・文学
1902年明治35年
「八甲田山雪中行軍遭難事件」
歩兵青森第五連隊210人
弘前第三十一連隊
11泊12日

「こんなときに八甲田に入るのは危険です。中止すべきです。」
「なんのこれしきの雪、我々は雪と戦っているのではない、ロシアと戦っているのだ」

厳冬期にも戦える兵士が必要とされ、各隊が個別に雪中行軍を競って訓練していたのである。

「この時期に山に入るのは無謀だ、やめなさい、もし進むのなら、案内人を雇いなさい」
「我々には、お前ら案内人ごときより優秀な地図とコンパスがある。
案内人を雇えというのは、金が欲しいからであろう、案内人などいらぬ」

「八甲田連峰吹雪の惨劇」1970年出版 小笠原狐酒

白神山地「暗門の滝」
菅江真澄「日本民俗学の開祖」

この滝にどこになんの秘密があるというのか。
その秘密は、弘前藩が家伝秘薬「一粒金丹」という、鎮痛、強壮に効く薬を販売していたことに
関係しているといわれている。
一粒金丹の原料には、ケシからとれるアヘンが使われていた。
弘前藩は平賀でケシを栽培し、アヘンを作っていた。
一説には、日本で最初にケシを栽培したのが津軽で、
江戸では「津軽」という言葉はアヘンの隠語といわれるほど知られていたという。
この薬のおかげで藩は月に百両もの大金を稼いでいた。

山の神とオコゼ(カサゴ目オコゼ類の魚)
マタギが山の入り口でオコゼの干物を出し、見せる。
すると山の神は自分より醜いものがいると喜び、クマを獲らせてくれるという。

クマが獲れると、その夜、山の神にお礼をした。
そのひとつが「サゲフリ」といわれる行事だ。
山の神の祭壇に向かって、いちばん若い男が裸にされ、股を広げて立たされる。
ほかの男が若い男の男根を揉んで勃起させる。
さらに男根に木の燃えさしを麻ひもで結んでぶら下げ、左右に振らせる。
男は恥ずかしいやら熱いやら煙いやらで身をよじる。
しかし、声をあげてはならない。
やがて、シカリが「山の神様がお喜びになった、おほほほ」と
手に口を添えていうと、ほかの者も、おほほほと笑う。
それがサゲフリという行事という。
男根が好きという山の神様へのお礼である。

あるとき、母グマと三頭の子グマと遭遇した。
クマは2頭の子供を産むが、三頭は珍しかった。
そのため、すなわち四つグマは山の神様の化身といわれ、獲ってはならぬというオキテがあった。

「生きるか死ぬかの真剣勝負だ。
だから獲物が来たとたん、心を鬼にする。すると獲れる。
獲物が来るたびにまた鬼になる。
字にすれば又鬼、すなわちマタギ。
節分のとき「鬼は外」ではなく「鬼は内、鬼は内」といったのもそのためじゃ。
もし「鬼は外」といったらどうなる。鬼は愛想をつかして出ていってしまう。
そうなればマタギはできなくなる。鬼はたいせつな相棒なんじゃ。

外れたと思った。
クマは弾が当たると、すぐに当たった部分を噛むが、どこも噛まなかったからだ。

「注意していけよ。
クマは追い詰められると死んだふりをして、機会をみて襲ってくるからな」
死んでいるか死んでいないかを区別するには掌を見ればいい。
死んだクマは掌を開いているが、死んだふりをしているクマは、掌を握っている。
つまり、ファイティングポーズをとり、いつでも向かっていける態勢をとっているのである。
クマは思った以上に執念深い動物だ。用心に越したことはない。

「クマという動物は人間が思う以上に賢い。
なんせ、撃ったマタギを覚えているからな」
「正直、目なのか鼻なのかどちらかはわからないが、
とにかく撃った奴を覚えていて、いつか仕返しをしてやろうとするのは確かだ」

どうやってクマを穴から出そうかと考えた。
方法はふたつある。
ひとつは、穴の中へ、周りに落ちている枯れ枝などを投げ込む方法だ。
枝を入れるとクマはその枝を邪魔だと思い、外に出すのではなく、中に引っ張り、
自分の後ろに隠す。するとそのぶん、クマは少し前に出る。
それを繰り返しているうちに、クマは出口まできてしまう。
まるで漫画のような話だが、実際にそうやって外におびき出すぼである。
もうひとつは、穴の上に立ってどんどん蹴って、音をたてる方法だ。
すると、苛立ち、やかましいぞ、とでもいうように中から出てくる。そこを狙う。
穴に銃弾を撃ち込めば、確かに一発で仕留められるが、
穴のなかに硝煙の匂いがつくと何年も消えずに、クマが嫌がり入らなくなるからだ。
クマが入る穴を減らさないようにするには、硝煙の残る猟はしない。

生まれて二年後の初夏には子別れをする。
母クマはキイチゴがある場所に連れて行き、夢中になって食べているあいだに母グマは姿を消す。
母グマは子別れをすると、今度は次の妊娠のために山奥に入っていく。
すると、よくしたもので発情した雄グマが鼻息を荒くして数頭寄ってくる。
雄グマは我先に交尾するために戦う。
勝ったクマが最初に交尾する。
交尾が済むと、それで終わりではなく、雌は次の雄とも交尾する。乱婚という。

ケンカして負けた夢をみたとか、女の裸の夢をみたとか、
要するに夢見が悪いから突然山に入るのをやめたということがたびたびあった。
山の神様は結婚式などの祝いごとが嫌い。
ちなみに葬式に参列することはなんら問題がないという。
山に入る1週間前から妻としてはならないとか、
猟に出掛ける前に妻に見送りさせてはならないなど。

怨み数・・・4と9
マタギにとっては、4と9以外に12
山の神様の別名を十二様
毎月十二日を山の神の日として山に入らないようにした。
明治12年2月12日に12人の労働者が、工事をするために八甲田に入ったが、凍死する事故があった。

目的のキノコは、ミズナラの根元に白い花が咲いたように出る一抱えもあるマイタケだ。
そうなるには、ミズナラの木が400~500年の古木でないといけない。































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