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なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

岩燕

2020年09月09日 18時14分52秒 | 真壁仁
蔵王歌集 氷の花より

そのときもはや怖れはなかった
自ら頼む思いもなく
おぼろな薄明かりのなかに展ける
うつつの地獄絵図に肝うばわれ
首すじつめたく
しぶきたつ安山岩のやまはだを嶺の方へと
こころもとおくのぼって行った
雨はふる
横ざまに地にうちしぶく
氷雪を交え金属の音たててふる山のうえの雨
雷は鳴る
雷はまかないの雲霧のなかにとどろく
どうどうと山気をひき裂いて鳴る山のうえの雷
濁流は岩肌に奔り
雨はくらく
わが行手を無慈悲に奪う
そのとき黒い光の矢のように
翼もかろくとぶ鳥があった
(哀れというは誰がこと)
神の山
くらい四元のどよもしの中
いくつもの骨を抱いたこの嶺に
さびしくきらめき飛ぶ鳥よ
悲歌(かなしみのうた)うたうつばくらよ

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