蔵王歌集 氷の花より
そのときもはや怖れはなかった
自ら頼む思いもなく
おぼろな薄明かりのなかに展ける
うつつの地獄絵図に肝うばわれ
首すじつめたく
しぶきたつ安山岩のやまはだを嶺の方へと
こころもとおくのぼって行った
雨はふる
横ざまに地にうちしぶく
氷雪を交え金属の音たててふる山のうえの雨
雷は鳴る
雷はまかないの雲霧のなかにとどろく
どうどうと山気をひき裂いて鳴る山のうえの雷
濁流は岩肌に奔り
雨はくらく
わが行手を無慈悲に奪う
そのとき黒い光の矢のように
翼もかろくとぶ鳥があった
(哀れというは誰がこと)
神の山
くらい四元のどよもしの中
いくつもの骨を抱いたこの嶺に
さびしくきらめき飛ぶ鳥よ
悲歌(かなしみのうた)うたうつばくらよ
そのときもはや怖れはなかった
自ら頼む思いもなく
おぼろな薄明かりのなかに展ける
うつつの地獄絵図に肝うばわれ
首すじつめたく
しぶきたつ安山岩のやまはだを嶺の方へと
こころもとおくのぼって行った
雨はふる
横ざまに地にうちしぶく
氷雪を交え金属の音たててふる山のうえの雨
雷は鳴る
雷はまかないの雲霧のなかにとどろく
どうどうと山気をひき裂いて鳴る山のうえの雷
濁流は岩肌に奔り
雨はくらく
わが行手を無慈悲に奪う
そのとき黒い光の矢のように
翼もかろくとぶ鳥があった
(哀れというは誰がこと)
神の山
くらい四元のどよもしの中
いくつもの骨を抱いたこの嶺に
さびしくきらめき飛ぶ鳥よ
悲歌(かなしみのうた)うたうつばくらよ