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なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

白馬岳2932m

2020年09月01日 17時24分00秒 | 深田久弥
高峰へ初めての人を案内するのに、好適な山である。
大雪渓があり、豊富なお花畑があり、眺望がすこぶるよい。
登りに変化があってしかも易しく、道も小屋も整っている。

白馬岳は、西側の越中や越後側では、「大蓮華山」と呼ばれた。
その白雪に輝く山容が、日本海側から見ると蓮華の開花に似ているからだという。
信州側から仰いでも実に堂々とした貫禄を持っている。
しかし私はこの山を東西の横から眺めるよりも、南北の縦から望んだ姿が好きである。
縦から見た白馬岳は、横から見たのと、別人の観がある。
東側が鋭く切れ落ち、キッと頭を持ち上げたさまは、怒れる獅子といった感じをいつも私は受ける。
颯爽たる姿である。

この立派な山に、以前は信州側にはこれという名が無く、単に西山と呼ばれていた。
それがいつ頃からか「代馬岳」と名づけられ、
それが現在の白馬岳と変わった。

代馬岳という名の起こりは、山の一角に、残雪の消えた跡が馬の形になって現れるからであった。
田植えにかかる前の苗代掻きをする頃、この馬の形が見え始めるので、苗代馬の意味で代馬と呼んだという。
朝夕、山を仰ぎながら労働している山麓の勤勉な農夫たちにとっては、
農事のしおりとなるハッキリした存在だったのであろう。

わが国の高山には大抵その頂上に古くから祠が祀ってあるが、白馬岳にはそれがない。






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