北岳山麓合唱団

ソウルジャパンクラブ(SJC)の男声合唱団です。毎週火曜日、東部二村洞で韓国の歌と日本の歌を練習しています。

サランヘ(愛しています)

2013年04月11日 00時08分30秒 | 合唱

韓国が長い方ならサランヘ(愛してます)という歌をご存知でしょう。ところで、誰の歌か、ご存知ですか?

この歌を歌ったのは、ラナエロスポ(Lana.Et.Rospo)という男女のフォークデュオ。ラナエロスポとは「カエルとお化け」という意味だそうです。

リーダーのハンミン(한민, 男性)は鐘路の音楽学校のギター講師。デュオデビューを目指し、パートナーを探していたところ、同僚からウンヒ(은희,女性)を紹介され、1970年にラナエ ロスポを結成しました。

「サランヘ」19711月のファーストアルバム収録曲。一説によると白血病で世を去った恋人を思い出す歌だそうで、韓国フォーク史に残る大ヒット曲となりましたが、当のハンミンとミンヒは結成数ヶ月で早々とデュオを解散してしまいました。

1971年というと、日本のフォーク界では、花嫁(はしだのりひことクライマックス)、あの素晴しい愛をもう一度(加藤和彦と北山修)がヒットした年です。

まずはこの歌の原点ともいえるデビューアルバムで聞いてみましょう。

さすがというデキですね。周囲に聞いたところ、90年代の初頭までは学生たちのあいだで、さかんに歌い継がれたようですが、最近ではほとんど歌われていないようです。

さて、ラナエロスポですが、その後、パートナーが変わること、実に12

5人組のグループになったり、演歌(トロット)を歌ってみたりしたものの、時とともに、人々の関心も薄れていきました。晩年のハンミンは、奥様とレストランを経営する傍ら、コンサート活動を行われたようですが、2006脳溢血で世を去りました。享年64歳。ハンミン最後(13番目)のパートナーは実の娘様だったとのことです。


一方、初代パートナーのウンヒですが、全羅南道で染色家として活躍するかたわら、今でも音楽活動を継続されておられ、最近では、「サランヘ」はウンヒの歌であると思っている人も多いようです。

それでは、最近のウンヒによるサランヘを聞いてみましょう。語りかけるような歌い方。琵琶法師のような、独特のスタイル。まるで現代の語り部(かたりべ)ですね。

このウンヒソロバージョンによるサランヘですが、2番の歌詞が変わっています。

「さーらんへ たんしぬる ちょんまろ さらんへ」(愛しています、あなたを。本当に愛してます)と来るところが、「みーうぉへ、たんしぬる ちょんまろ みーうぉへ」(憎みます。あなたを。本当に憎みます)と正反対の歌詞!

静かな語り口の中にも、「心底、憎んでいる」という実感がひしひしと伝わってきます。ただ、その後で、밤마다 그리는 보고싶은 내사랑아(夜ごとに思い出す、逢いたい、私のいとしい人)ときて、最後は사랑해 당신을 정말로 사랑해(愛しています、あなたを。本当に愛してます)でおわり。

言霊(ことだま)の迫力を感じます。


冒頭で、ウンヒが「昔を思い出して、一緒に歌うのはどうですか!」と呼びかけ、その後も曲中で、何度も「一緒に!」呼びかけていますが、映像を見る限り、客席からの反応はなし。韓国語でいう、신들리다(神に獲り付かれた)とは、まさにこのこと。ちょっと一緒に歌える雰囲気ではありません。


最後に現在のラナエロスポですが、リーダーのハンミン亡き後、実質上の最後(12番目)のパートナーだったキムヒジン(김희진)が今もソロで活躍されています。

ヒジンさんは、初代ウンヒと同じ済州島の出身。コンサートでは、ウンヒが染色した服で登場するときもあるとか。

それでは、キムヒジンさんによるサランヘを聞いてみましょう。

如何ですか?透明感のある素敵な歌声ですね。ヒジンさんの別名はPrincess of the folksong。人生の甘辛を濃縮したようなウンヒと比べると、アッサリ風に聞こえますが、ちょっと素人にはマネができない歌唱。さすがプロという感じです。


最後は、キムヒジンさんの代表曲。花の指輪をさして(꽃반지끼고)で締めくくることにしましょう。初代のウンヒによって作詞作曲され、ウンヒ自身によって歌われた曲のリメイクですが、素晴らしい歌です。ぜひ聴いてみてください。