マックいのまたのMalt Whisky Distillery

モルト好きで株式公開/上場(IPO)の経営戦略,マーケティング,M&Aを支援する経営コンサルタントのプライベートブログ

Glenfiddich 18yo

2010-11-19 16:21:18 | グルメ

先日、とあるバーで3杯めに頼んだのはグレンフィディックの18
年でした。


Glenfiddich 18年

グレンフィディックは、世界で一番売れているシングルモルトと
して有名で、日本では流石と言いますか矢張りと言いますか、サ
ントリーが代理店になって今や近所の酒販店ならどこでも置いて
あるくらいお馴染みになりました。

私がシングルモルトのマリアナ海溝に足を踏み入れるきっかけに
なったのもこのグレンフィディックで、本当に久しぶりに飲んだ
ので懐かしく、別の意味では新鮮だったので感嘆しました。

ウィスキー、特にシングルモルトと呼ばれる各蒸溜所レベルの製
品では、生産と出荷のタイムラグが最低でも3年、良識的には8
年、ホスピタリティ的には15年位必要とされるため、会社経営
面からは事業計画の精度が当たりにくい業種として有名です。

2007年のリーマンショック前には、アメリカ特にニュー・ヨー
クやシカゴ等の金融業界から輩出されたバブリーカルチャーとア
メリカ流の演出消費共に過剰な市場の影響を受けて、スコットラ
ンドの川と丘しかないような蒸溜所でも、北米流のマーケティン
グが導入されました。

またこの頃には、悪法の汚名高いEUウィスキー法が施行となっ
てアルコール40度規制が導入されたため、それまで43度75
0mlだったボトルも40度700mlにリニューアル、併せて
ブレンドもリニューアルされて、伝統的な信者ともいえる顧客を
失う代わりに波に漂う泡の消費者の獲得へと間口を広げていった
部分が指摘されています。

あるとき、ウィスキーを買って箱から出してみると「あれ、前と
ちょっと違う気がする。」

ボトルだけでなく味も違っていたのです。これで単一蒸溜所の製
品である唯一無二の個性が特徴であった多くのシングルモルトは、
同じラベルながら別の商品になっていきました。

こうして私もグレンフィディックから離れていき、緑の三角ビン
がマイ・バーから姿を消して久しい時間が経過していた、という
具合です。

そんな時間が流れた後、本当に久しぶりに「じゃあ18年を飲ん
でみようか」と試してみたら、かつてとは別の個性でアピールす
る上質なモルトで驚きました。

緑のビンで一般的な12年物は、どちらかといえば機械的大量生
産の近代的な工業生産品に近いのですが、この18年は近くにあ
る同一オーナーが所有する純米吟醸のバルヴィニーに似て、丁寧
に作られたウィスキーだけが持つ「水の味」がします。

シングルモルトとは、単一蒸溜所で生産されたウィスキーという
定義ですので、どんな麦で、どんな麦芽に仕上げられ、どのよう
に蒸留され、どんな樽に仕込まれ、何年間熟成させ、バッティン
グやマリッジの有無、フィルタリングの有無などは定義外、すな
わち自由です。

このグレンフィディック18年は、12年に比べると熟成年数が
長いのは文字通りで当然ですが、シェリー樽仕込みの長期間熟成
モルトの割合が高いのではないかと思料します。それが豊かな香
りと味わいに繋がっています。

このように「熟成」を売るのは、マーケティングの面からみると
バルヴィニーとのカニバリを心配する部分が出てくるのではない
かと心配されるものですが、ウィリアム・グラント&サンズはむ
しろブレンデッド・ウィスキーのシーバスリーガルやバランタイ
ンとの競合を意識しているのかもしれません。

いずれにせよ、モルトが持つ生の甘みを僅かに残しつつ、バーボ
ン樽の渋みとシェリー樽のリッチなフレイバーが交互に顔を表す
食後に最適の一杯です。


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