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京都生活手帖

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蕁麻疹から学ぶ

2006-08-19 21:42:00 | いのちをはぐくむ
病院に勤めていた頃、私は慢性の蕁麻疹に悩まされていました。もともと軽いアレルギー体質ではあったのですが、それまで食べ物でも寒冷刺激でも蕁麻疹など出たことがなかったのに、それはふいに私のもとへやってきました。入職して1年目の年末、突然全身に蕁麻疹が出たのです。全身というのは何の誇張でもなく、顔面から首、お腹、背中、両腕、両足ぜんぶが真っ赤っか。もうかゆくてかゆくて気が狂いそう。しかも顔にまで蕁麻疹は襲い、まぶたがパンパンに腫れてしまってお岩さんのようになってしまったのです。これはただ事ではないなぁと思い、勤め先の病院で診てもらい、強ミノという注射を打ってもらったのでした。普段仕事で扱っている強ミノを、まさか自分が打たれる側になるとは思ってもいなかったので、「こんなこともあるんだなぁ。」とやや情けない気持ちになったことを覚えています。(そして大して強ミノが効かないことも分かりました)

そして蕁麻疹の原因は分からないうえに、その後も頻繁に蕁麻疹が出るようになってしまいました。一番原因として考えられるのは「ストレス」でしたが、蕁麻疹が出るまで私はそのストレスを自覚できないのです。いえ蕁麻疹が出ても、「これ」と思い当たるはっきりとした原因が分からないことも多く、「忙しくて疲れてるんだな。でもそれはいつものことだし。」と思う程度。慢性的に忙しく疲れていたので、疲労の程度も自覚できていなかったように思いますし、それ以外の原因について考えるゆとりもなかったのだと思います。

しかしある時、「これだ」とはっきり原因が分かる出来事がありました。紆余曲折ありながらも自分なりに関係を作ってきた、いわゆる「難しい」患者さんに、「あんたには患者の気持ちは分からない!担当を変えて!」と怒鳴られ、ショックを隠しきれずに退室してしばらくすると、みるみるうちに蕁麻疹が出てきたのです。明らかにその時私は、患者さんの言葉に傷ついていました。もっと言ってしまえば、患者さんの口から発せられた言葉が私の身体にくいこんできて、切り刻まれるような物理的な痛みを感じていたのです。その痛みが、蕁麻疹として表れている・・・そう思いました。

その時になってようやく私は理解しました。蕁麻疹の原因は「これ」とはっきり分からなくても、「私は傷ついているんだ」ということ。不規則な勤務、疲労、責任の重さ、感情労働として引き受ける精神的負担・・・原因は何であれ、自覚こそできなくても、そのどれか(どれも)が、私の身体にくいこんできて私を傷つけているのだ、ということ。

それより以前に退職することは決めていましたが、その出来事を体験して「私の選択は間違っていなかった」と確信したように思います。病棟勤務は、様々な面で私のキャパシティを超えていたのです。体力、不規則な生活への適応力もなければ、勤務を続けていくにはあまりにも精神的/肉体的にセンシティブすぎた・・・「限界だ」と認めて、私は職場をあとにしました。

けれど、私は今でもそれを ー自分が病棟勤務を続けられなかったという事実をー 100%受け入れられているわけではないのです。どうして他の人に出来て、私に出来ないのか?大好きな同僚たちに囲まれて、好きな仕事をしていたのに、何故?どうしてもっと頑張ることができないの?・・・退職してから一度も蕁麻疹が出なくなったというのに、それでも私は自分の能力の限界を嘆いているのです。

何故こんな話が急に出てきたのかというと・・・出産/育児に関しても、私はまた同じような失敗を繰り返しそうだと、ふと同僚のナースの助言を聞いて思ったからです。彼女はつい最近、私にこう言いました。「母児同室!!って厳しいこと言われないから、○○病院はいいよ。」最近の(周産期医療の)風潮としては、赤ちゃん(とお母さん)のために「母児同室」「母乳育児」がすすめられており、病院によってはそれを頑張るように指導されます。ですがこれを完璧にこなそうと思ったら、体力的にとても大変です。そして「赤ちゃんのために」頑張ることができればいいですが、できなかった場合自分を責めることにもなります。それに母児同室は本人の努力で何とかなったとしても、母乳に関しては本人の努力や責任とは関係のないところでトラブルがある可能性だってあります。

何となく「母児同室」「母乳育児」は当たり前のように考えていた私ですが・・・仕事と同じように「頑張れない自分」の可能性を受けいれなくちゃ。改めてそう自分を戒めています。なのではじめから「こうあらねば」と決めつけて、頑張ることを前提にしない。状況に応じて、自分に出来ること/出来ないことを判断しながら、最善を尽くす。そのために「母児同室」「母乳育児」に関してもゆるやかな方針でやっていけるよう、産院のスタッフと上手にコミュニケーションをとっていきたいなぁと思っているのです。
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深まるつわりの謎

2006-08-18 16:41:00 | いのちをはぐくむ


毎日まいにち、つわりの訴えばかりでスミマセンが、これが今の私の強力な助っ人「ショウハンゲ カ ブクリョウトウ」。
朝昼夕食前に飲むように処方されています。「食べる/食べない」に関わらず一日3回飲むようになってから、朝のしんどい嘔吐もなくなり、ぐったりと横にならずにはいられないような吐き気がぐんと楽になりました。そのせいで気力も出てきて、少しでも台所にたてるようになったのが何よりも嬉しい。

つわり情報を求めてこのブログに立ち寄ってくださる方もいらっしゃるようなので、つわりに関するサイトをひとつご紹介しておきます。「わかばまーくくらぶ」つわりの原因諸説、体験談、対処法などたくさんの情報がのっているので、よかったらのぞいてみてください。つわりは十人十色、人の体験が自分に当てはまるとは限らない、ということはよくよく分かっていても、「こんなにしんどいのは私だけじゃないんだ」と知ることは、つらい時期を乗り切る励みになると思います。ここのページをみていると、本当につわりで苦しんでいる人がたくさんいて、「自分なんかまだ楽なほうだなぁ」と思うくらいです。入院しても水分もとれず、ついにはIVH(中心静脈栄養)を入れられてしまった方や、あまりにしんどくて中絶しようと産院を変えた方、体重が18キロも減ってしまったという方・・・これがまた、身体のなかで何が起こっているのか分からない、というところが怖いですよね。

それともうひとつ、このサイトで面白いのは、「つわり中にはまった食べ物」「つわり中に嫌いになった食べ物」アンケートです。「つわり中にはまった食べ物」第一位はトマト、第二位は何だと思いますか??実は、「ポテトフライ」。私もつわりが始まって、「これなら食べられるかも」と真っ先に思い浮かんだのが、何故か「ポテトフライ」。つわり中はポテトフライが食べたくなるらしいよ、なんていう情報は皆無だったうえに、ポテトフライを目の前にして「食べたい」と思ったのではなく、ふと「食べられそう」と思い浮かんだポテトフライ・・・それが多くの妊婦さんと共通している、という不思議さ・・・ポテトフライには一体何があるのでしょうか??これもマクドナルドの策略だったりしたら恐ろしい・・・(スーパーサイズミーを観てから、マクドナルドに対して疑心暗鬼の私です)

少し前によしもとばななさんのエッセイを読んでいたら、「つわりの時期と、妊娠7ヶ月の頃には、子どもの頃によく食べていたものが食べたくなるらしい」ということが書かれていました。ちなみによしもとばななさんは、その説に当てはまった嗜好になったそうで、父親の吉本隆明さんがよく作ってくれた「カツ丼」や「ナポリタンスパゲティ」が無性に食べたくなったそうです。一方私も、「そうかもしれない」と思っています。子どもの頃よく食卓にあがっていたのは、子どもが好きそうな洋食メニューが中心でした。ハンバーグ、カレーライス、ナポリタンスパゲティ、グラタン、ドリア、シチューなどなど・・・そして今の私も、和食メニューよりも洋食メニューばかり食べたくなっているのです。今日も「コーンクリームスープが飲みたいなぁ」と思い、母直伝のホワイトソース作りから始めてしまった次第です。

そして「つわり中に嫌いになったもの」第一位は、圧倒的に「ごはん」。つわりがなかったというツワモノの母も、「炊きたてのご飯の臭いだけは嫌だった」と言っていたくらいなので、妊婦に普遍的に嫌われるのは「炊きたて白いご飯」のようですね。一体ご飯にも何があるのでしょう。実は妊婦の身体によくないものがたくさん含まれているとか?

つわりをめぐる謎は深まるばかりです。
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先輩おかあさんに励まされました

2006-08-11 21:17:09 | いのちをはぐくむ
帰省ラッシュが始まりましたね。
私たちもお義母さんのところへ帰省する予定でしたが、私のつわりが治まらないため、今年のお盆は京都で過ごすことにしました。お義母さんや親戚のみなさん、総勢7人の姪っ子甥っ子ちゃんたちにお会いできないのがとても残念ですが、具合が悪くなってご迷惑をかけてしまうのは申し訳ないので、今夏は自宅で静かにしていようと思います。

私たちがこのお盆に帰省しないからと、義弟さんのお嫁さんが夕方お電話を下さいました。三人のかわいい女の子のお母さん、つまり先輩お母さん。つわりのことや、身体の変化のことなどお話を伺えて、とても心強い気持ちになりました。本などから知識を得てはいるものの、実際に身体の変化を経験すると「これで大丈夫なんだろうか」「これからどうなるんだろうか」とどうしても不安になります。例えば体毛が濃くなることにしたって、「そういうこともある」と分かっていても、「赤ちゃんが産まれたあとはどうなるんだろう」って気になりますよね。ですが今日、「こどもが産まれたら薄くなっていくみたい」とおっしゃってもらえて、ものすごくほっとしました。経験者の言葉というのは、本から得るどんなに正しい知識よりも励みになったり、説得力を持つことがあるのだということを改めて実感しました。

ところで患者会やサポートグループというものをご存知でしょうか?患者会やサポートグループとは、同じような経験(病気)をした患者さんが集まり、自身の体験を語り合ったり、情報交換をする場。私が先輩お母さんの言葉に励まされたように、患者さんたちも自分と同じ経験をした人たちと出逢うことによって、「これは、自分だけじゃないんだ」という思いを持てたり、これからどうなっていくのかという見通しを持つことができたり、新しい情報を得て、病気というつらい体験を乗り越えていく助けとするのです。私はこの患者会やサポートグループに学生の頃からとても関心があり、数ヶ月に渡って参加させてもらったことがあるのですが、医療者からのケアだけではなく、患者さんにとって「仲間(ピア)」の存在の大切さを痛感しました。医療という枠だけではなく、「病気を持ちつつ生活する人」を支えるためには「仲間(ピア)」が必要。私が今地域精神医療に関わっているのも、そういった思いや認識が原点になっているような気がします。

さて、妊婦という新しい状況に立っている私にも「仲間(ピア)」が必要だなぁと思うにいたっています。京都の妊婦さん、どなたか私とお友達になってください・・・なんて他力本願ではなく、自分から積極的に場を求めていこうと思っています。
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からだの変化、あみぐるみとブランケット

2006-08-07 16:13:31 | いのちをはぐくむ
今日から妊娠11週。ここ数日、身体の変化を感じています。
もうそろそろ治まるであろうつわりですが、まだちっともスッキリしてくれません。これまで空腹時にむかむかすることが多かったのですが、最近は食べると胃のもたれを感じるようになっています。食事の量も増えないので、もしかしたら尿にケトン体がおり続けているかもしれません。教科書をみると、「尿中ケトン体(+)の場合、外来で補液(点滴)」と書いてあったので、私はともかく赤ちゃんは大丈夫なのだろうかと何だか心配になってきますが・・が、頑張って食べよう・・・

もう一つの身体の変化は、トイレがとても近くなったことです。すごーくトイレに行きたくなってトイレに行くのですが、いざ座ってみるとほんの少ししか出ません。自分の尿意と、出てくる量のギャップに「え、それだけ!?」と驚くくらいです。これは、まだ骨盤内にある子宮が大きくなるにつれて、膀胱を圧迫するために起こる現象です。膀胱というのは、膀胱壁にかかる圧力(膀胱内圧)を感知して尿意を催すような仕組みになっているのですね(つまり本来であれば、尿が膀胱内にたまってくれば圧力が高まって尿意を感じるのです)。ですが外側から膀胱が圧迫されて膀胱内腔が狭まってしまうと、尿がたまる前に圧力だけはたくさんかかってしまって、「トイレに行きたいよー」ということになってしまうのです。子宮がさらに大きくなり、骨盤の外へせり出してくるようになれば、自然と軽快してくれる症状ですが、トイレに行きたいのに出ないというのは、なかなか変な感じがするものです。

そして最後にもう一つ、ここ最近体毛がどんどん濃くなっているのです。特におなか、おへその周囲にフッサリと産毛が覆ってしまっています。これもホルモンの影響によるものだそうですが、人によっては体毛が濃くなるのではなく、逆に薄くなる人もいるとのこと。ちなみに実家の母に聞いてみたところ、「私は薄くなった」と言っていました。つわりもなければ、体毛も薄くなるなんて、いいことづくめの妊娠で羨ましい限りですが、きっと人によって必要な現象が起こるようになっているのでしょうね。


ところで話は全く変わりますが・・・
実はオットさん、編み物が得意です。なので・・・



「あみぐるみの本」
生まれてくる赤ちゃんのために、「あみぐるみ」(毛糸で編んだぬいぐるみ)を作ってくれるそうです。この表紙のうさちゃんみたいなかわいいあみぐるみが出来る日を心待ちにしている次第です。

そしてちなみにあみぐるみの本の下は、「ほぼ日」のブランケット。妊婦の禁忌は、とにかく「身体を冷やすこと」。オットさんが妊婦生活のお供にと、買ってくれました。肌触りがよくって、とっても気持ちのいいブランケット。これから大活躍すること間違いなしです。
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母子健康手帳をとりにいきました

2006-08-06 17:01:37 | いのちをはぐくむ


京都市の母子健康手帳です。
先週、オットと一緒に区役所まで取りに行ってきました。窓口の人が一生懸命色々なことを教えてくれるのですが、どうも妊娠中よりも出産後の子どもの話題(予防接種やら、歯のフッ素塗布だとか)が中心だったように思います。何でだろうと一瞬首をかしげたのですが、母子健康手帳は子どもが就学するまで使い続けるもの。そう考えると、妊娠期間中なんてほんとーうに短いものなんですね。今の私は、妊娠→出産のことで頭がいっぱいのわけですが。

母子健康手帳のほかにも色々な冊子を頂いたのですが、その中に「母親(両親)学級」のテキストもありました。帰ってきてそれをパラパラと眺めていたのですが、「懐かしいなぁ」と感慨にふけってしまいました。というのも実は私、保健師の資格も持っていて、大学在学中に保健所の実習へ行き、両親学級で妊婦体操の指導を担当したことがあるのです。自分が経験したことのないことでも指導が出来るというのがプロフェッショナルですが、それでも学生の私たちは「えぇ!そんな、妊婦体操なんてやったこともないのに指導するの!?」と、かなり及び腰だったのを覚えています。本番前に、たくさんの保健師さん達を前にリハーサルをしたのですが、緊張したことといったら・・・指導の曖昧なところはすかさず指摘されて、「自分が分かっていないことは人に教えられないよ。」とビシバシ注意されたものです。ですがしっかりとしたアドバイスをもらって自信もつけ、かつ、こう見えて役になりきるのが得意な私はその演技力を発揮して、本番後「度胸があった」と保健師さん達に誉められました。指導の内容より度胸を誉められる私って・・・

妊婦体操を指導したことがあるとはいえ、自分が妊婦としてするのはもちろん初めて。ちゃんと母親(両親)学級に通って、習おうと思っています。その際自分が看護師(保健師)であるとは明かさず、しれっと「何でも初めてです!」と言うつもりです・・・だいたい産科の医師にも自分が看護師であるとは怖くて言えません。言ったら、「看護師さんなら、それくらい分かるはず」と思われて親切に教えてもらえなくなるかもしれないし、変な質問をしたら「看護師さんでしょ、全く!」なんて呆れられるかもしれません。実際にはそんなことはないとは思いますが・・・

いずれにしても、仕事としてする(知っている)ことと、当事者として体験することの間にはやっぱり乖離があります。体験後、その乖離が少しでも埋まっているといいなぁと願っています。
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