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まかろんのお茶会

日々の小さなことを詩モドキにしてます。
皆さまのお茶菓子代わりに楽しんでもらえたら嬉しいです。

新作 ~ 「妖精の結婚式」 その84

2014-07-18 21:47:22 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その84

  生温い風の中 電車がホームにやってきた
  混んだ電車は 傘と汚れた湿気で
  二倍混み合ってるように 感じる
  それでもと さやかさんは思った
  それでも 電車は来てくれた

<つづき>

電車は のろのろと動いてる
ぎゅう詰めの体勢で ただ耐える
すえた匂いと所構わない水滴が 気持ち悪い
だけど 誰かが電車を動かしている
あたしが帰ろうと思った 雷雨の中で

ここにいる皆が 人間らしく帰れるように

あたしは カエルじゃないな
ひりっと痛みを 心に感じながら思った
妖精でもない
雨をさけて やっと生きてる
ただの フツーの人間だ

カエル君 ごめん・・・
さやかさんは 人々の頭の間から
やっと見える 窓越しの街を眺めた
今あの庭で みんな働いてるのかな
ごめん あたし帰っちゃうよ・・・

雨は 家に着く頃には小降りになってた
靴やスカートは ぐしょぬれだった
バスタオルで 水気を拭きまくる
食べ残したお弁当を テーブルに出した
今度こそ 普通に食べられそうな気がした

バラと梅酒のビンを テーブルに乗せた
バラはやっぱり電灯の下 毒々しく
梅の実はビンの中 思わしげに揺れていた
喜ぶ物を一つでも渡せる 良かった
さやかさんはぱくり おかずを口にした


<つづく>



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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その83

2014-07-18 21:42:28 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その83

  カエルだったら 良かったのに
  さやかさんは 土砂降りの雨を見つめた
  そしたら ぴょこぴょこ跳んでくの
  雨なんか全然 気にしない
  いっぱい一生懸命 働くのに

<つづき>

さやかさんは ため息ついた
そんな仮定なんか 意味がない
もう今日は帰ろうと がっかり思った
だって あたしは人間だもん
カエルじゃないんだもん・・・

駅へ行こうと 傘を開いたとき
一瞬辺りが 鋭く光った
えっと思う間もなく ドーンと音がした
これでもう小降りになるかな
そう思うけど 雨は一向に降り止まない

生ぬるい風が 吹き抜ける
頭のてっぺんが ちりちりする
パリパリパリッと 音がして
暗い光がまた 閃いた
ドドーンと遅れて音が辺りを揺るがした

人が急ぎ足で 通り過ぎていく
いつまでここで 待ってればいい
まだ空気が 何だかおかしい
暗い街の中 しがみつく狭い軒下
もういいやと 駅に向かった

帰宅ラッシュの駅は 濡れた人々で
いつも以上に 混み合っていた
手にした携帯に 目を落としながらも
かせをかけられた 人々のやるせなさが
ホーム中に 立ち込めていた

生温い風の中 電車がホームにやってきた
混んだ電車は 傘と汚れた湿気で
二倍混み合ってるように 感じる
それでもと さやかさんは思った
それでも 電車は来てくれた


<つづく>



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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その82

2014-07-18 21:34:03 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
続きです~。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その82

  昨日 ほとんど食べなかったじゃん
  急に減らすの 良くないよー?
  ううん違うの とさやかさんは言った
  ちょっと体調がね・・もう大丈夫
  そっとおかずを 口に運んだ

<つづき>

まだちょっと この一口が
重い気がする でも大丈夫
一口一口 噛みしめる
ちょっと痛い ちょっと重い
生をつなぐのは こんなにも重い

大丈夫じゃないかもしれない・・
さやかさんは はしを置いた
窓の外は どんよりしてた
まだ降らないでと さやかさんは思った
降るんなら 帰る頃には止んでいて

一日の仕事が やっと終わった
夏至前でもさすがに 暗くなっている
パソコンの電源を切って 外に出た
雨は降ってないと 手をかざした
でもこの感じ・・と思った そのとき

ポツン と雨が道路を叩いた
ポツンパタンと 大粒の雨
人々が慌てて 傘を開き始める
バタバタバタと 見る間に
激しく雨が 降りだした

傘・・は 持ってるけど
さやかさんは 傘をぎゅっと握った
これじゃ あの庭まで歩いていけない
ずぶぬれになる覚悟なら ともかく
さやかさんは 近くの軒下で立ちつくした

カエルだったら 良かったのに
さやかさんは 土砂降りの雨を見つめた
そしたら ぴょこぴょこ跳んでくの
雨なんか全然 気にしない
いっぱい一生懸命 働くのに


<つづく>



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変更:2018年8月14日
ずぶぬれの覚悟があるなら ともかく → ずぶぬれになる覚悟なら ~
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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その81

2014-07-18 21:29:32 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
さて、続き。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その81

  小道の切れ目が 見えてきた
  楽の音が 聴こえてくる
  合い間に何やら カエルたちの騒ぐ声
  良い式になるといいな
  さやかさんは そう思った

<つづく>

翌日は 朝から曇りだった
居間においた バラの花は
薄暗い中 心なしか元気だった
おおっ あたし園芸の才能あるなっ
・・なんてねと さやかさんは自分に笑った

サボテンすら ダメにしちゃうのよねぇ
お母さんとは 大違い
さやかさんは 梅酒のビンを眺めた
お母さんだったら もっと
あの庭の役に立てたのかな

おっと そろそろ出なきゃ
平日の会社員に そんな感慨は贅沢なのだ
だけどと さやかさんはバラを振り返った
バラは薄曇りの中 笑って見えた
行ってきますと 家を出た

会社は いつも通りだった
ここでは 人は道具になる
それが 誇らしい時もあったけど
それが 辛い時もあるけれど
人が 私をどう見るかじゃなくて

いただきます とさやかさんは
持参のお弁当に 軽く言った
数日前の残り物
新しく作る気には なれなかった
ダイエット? と同僚が聞いた

昨日 ほとんど食べなかったじゃん
急に減らすの 良くないよー?
ううん違うの とさやかさんは言った
ちょっと体調がね・・もう大丈夫
そっとおかずを 口に運んだ


<つづく>



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