まかろんのお茶会

日々の小さなことを詩モドキにしてます。
皆さまのお茶菓子代わりに楽しんでもらえたら嬉しいです。

新作 : 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その22

2014-03-31 21:48:20 | 「乱櫻鬼譚~」 2014桜
というわけで、桜満開です。

確か東京の開花予想は4月4日だったはずなんですが・・・

週末になる頃には桜が終わってるかもしれませんが、
皆さまができるだけいっぱい、桜を楽しめますように!

では、続きでーす。


2014年3月21日~ブログ直接投稿 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その22

  女性は しばらくぽかんとしていた
  ・・・あそう ご勝手に
  それは ナヲキさんが初めて聞いた
  この女性の 冷たい声だった
  ナヲキさんは はっと女性の顔を見た

<つづき>

あなたが お父様の下で
苦労してきたのは 知ってるわよ
女性の柔和な顔は 強張ってた
その中で ここまで真っ直ぐに
生きてきたのは 偉いと思う

けど と女性はナヲキさんを見すえた
あなたが どれだけ苦しんだかなんて
お隣さんには 関係ないでしょ
お隣さんは いま困ってる
独り暮しの ご老人なのよ

ナヲキさんは 何か言わなきゃ
と思ったが 何も言葉にならなかった
暗い大きな闇が 口を開けて
足元からさらさらと 何かを
吸いこんでいく そんな気持ちがした

いま目の前の 困ってる人の苦労を見ないで
どんなケーキを 創ろうと言うの
女性は カウンターの上の包みを見た
それも どうせそんな味なんでしょ
俺は苦しんでます俺だけが苦労してますって

あたしは こんなケーキ要らない
女性はお金を 包みの上に押しつけた
お隣には あたしが行くわ
あなたは せいぜいここに籠って
桜でもなんでも 作ってれば

女性はバン!と 勢いよく出ていった
カランカラン・・・と
ドアベルが うつろに響いた
ナヲキさんは ぼうぜんと
まだベルが揺れてるドアを 見つめた

<つづく>

人気ブログランキング ※本作品の内容・名称は全て個人の創作・フィクションであり、 実在の個人・法人・企業等とは、全く一切関係ありません。
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新作 : 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その21

2014-03-31 21:39:12 | 「乱櫻鬼譚~」 2014桜
ども、お今晩は~。

今日は週明けで月末で年度末でした。
なかなか激動の日ですね。
皆さま、お元気ですか。

例のお昼の長寿番組も幕を下ろし、明日から新年度です。
まかろんの詩は終わる気配もなく、まだまだ続いちゃいますが、
皆さまが心晴れやかに、明日を迎えられますように。

では続きでーす。


2014年3月21日~ブログ直接投稿 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その21

  けど そんな言葉を
  この女性には 言いたくなかった
  ぐっと こぶしを握りしめる
  ほんと やんなるよ
  言葉が ぽろっと口からこぼれた

<つづき>

雨戸くらいで 人呼びつけてさ
ウチの商品 買いもしないくせに
ナヲキさんは 顔をゆがめた
自分が困ったときだけ 人使うなんて
ほんと 図々しいよな

女性は 驚いた顔をした
でも独り暮しの お年寄りなのよ
ちょっと 隣に行くだけじゃない
ナヲキさんは カッとした
それで図に乗ったら どうすんだよ

雨戸の次は 電球切れか雨漏りか?
俺もスタッフも 便利屋じゃないんだ
スタッフには 俺が金出してるんだぞ
女性は 目を見開いた
そんなこと 言いださないわよ

お隣さんって あの方でしょ
お父様の頃に よく来て下さった
女性は 早口に言葉を重ねた
ちょっとくらい いいじゃないの
お父様だって・・・

・・・親父の話なんかするな!
ナヲキさんは 歯を食いしばった
ここは俺の店だ 俺の経営だスタッフだ
隣がウチに 何期待しようが
ここは 親父の 店じゃ ない

女性は しばらくぽかんとしていた
・・・あそう ご勝手に
それは ナヲキさんが初めて聞いた
この女性の 冷たい声だった
ナヲキさんは はっと女性の顔を見た

<つづく>

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新作 : 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その20

2014-03-30 21:22:17 | 「乱櫻鬼譚~」 2014桜
というわけで、なかなか激動な日曜でしたけど、
どうぞ皆さま、良い一週間のスタートを切れますように。

続きでーす。


2014年3月21日~ブログ直接投稿 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その20

  ケーキの箱を 袋に入れながら
  なんか隣の人がさ とナヲキさんはぼやいた
  ・・・で 隣に行ってこないと
  いけないんだけど とナヲキさんは
  説明をして ため息をついた

<つづき>

俺 いま新作作るんで忙しいのに
言った瞬間 薄らいでた焦りが
ナヲキさんに 伸しかかってきた
新作? と女性がきょとんと聞いた
なんかコンクールとか あったっけ?

いや そうじゃないんだけど
ナヲキさんは 厨房をちらっと見た
桜をね・・・ 桜をケーキにしたくて
ああ桜ね と女性はふんわり笑った
いいねー 桜のケーキかぁ

そうだよ桜だよ とナヲキさんは言った
桜が始まる前に 仕上げなきゃ
終わった後に のこのこ出せないし
それに俺は とナヲキさんは壁をにらんだ
とにかく これを創り上げたいんだ

気持ちは分かるけど・・・
と女性は 困ったような顔で言った
そんな気を 張りつめてたら
できるものだって できないよ
とりあえず と女性はにこっとした

ここの 店番しといたげるから
お隣 行ってきたら?
ね?と なだめるように言う女性が
今のナヲキさんには ぬるく思えた
何も 分かっちゃいない

けど そんな言葉を
この女性には 言いたくなかった
ぐっと こぶしを握りしめる
ほんと やんなるよ
言葉が ぽろっと口からこぼれた

<つづく>

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新作 : 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その19

2014-03-30 21:17:37 | 「乱櫻鬼譚~」 2014桜
ども、日曜の夜です~。
皆さま、お元気ですか。

東京でも桜が満開になったようですね。

って、もう咲いたの?

うわぁ、桜の詩がまだ書き終わって・・・

今日は大風と大雨でしたが、桜はどうなったでしょうか。
皆さまが楽しめることを願ってます。

では、続きでーす。


2014年3月21日~ブログ直接投稿 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その19

  ちょっとごめん とナヲキさんは電話に出た
  あのぉすみません 老婆の小さな声が聞こえた
  わたし 隣の家の者なんですけど
  はぁ とナヲキさんは生返事をしながら
  なんかクレームか?と 身がまえた

<つづき>

突然すみません 昔はよく
お宅のお菓子を 買ったのですけど
今はこの歳で 独りなものですから
老婆は くどくどと言いだした
子供は家出てますし 夫も先立って・・・

ご用件は何ですか とナヲキさんは
苛立ちを抑えて 老婆に聞いた
あの実は・・・ と老婆は言った
家の雨戸が どうしても閉まらなくて
はい? とナヲキさんは思わず言った

雪のせいだと 思うんですけど
と老婆は言い訳がましく おどおど言った
一階なんで 泥棒が怖くて
隣を見たら まだ電気が点いていたので
どなたかに 来てもらえないかと

はぁ とまた言いながらナヲキさんは
何を言ってるんだと 顔をしかめた
ウチは確かに 客商売だけど
だからって 何でも頼めるなんて
勘違いしてないだろうな

それでも 分かりましたと言って
電話を切った ナヲキさんに
どうしたの? と女性が聞いた
何か困ったこと? 顔が険しいよ
ああいや・・・ とナヲキさんは返した

ケーキの箱を 袋に入れながら
なんか隣の人がさ とナヲキさんはぼやいた
・・・で 隣に行ってこないと
いけないんだけど とナヲキさんは
説明をして ため息をついた

<つづく>

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新作 : 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その18

2014-03-29 21:53:29 | 「乱櫻鬼譚~」 2014桜
それにしても、うーむ、桜は奥深い・・・

日本人は老若男女を問わず、桜が大好きです。

普段花を愛でる習慣がなさそうな人たちまで、写真を撮ったり、
桜を見るためだけに桜の所に大勢が集まる(宴会する場所がない所でも!)のを見ると、
心が熱くなります。

桜の何が、こんなにも日本に住む人々の心を揺り動かすのでしょう。

今回の茶菓子は、そんな人と桜の美しさのエッセンスを、
少しでもお届けできてたらな、と思ってます。

では、続きでーす。


2014年3月21日~ブログ直接投稿 「乱櫻鬼譚 ~ カミ咲けるヒト」その18

  子供向けに シンプルに
  でも素材のおいしさが 伝わるものを
  それが この女性の注文だった
  そういう組立てに しといたはず
  ナヲキさんは おぼろな記憶にうなずいた

<つづき>

ケーキって 見た目で分かるよねー
と 眺め回して女性は言った
この程度でいいやって 見え見えのもあるし
ナヲ君のは とふっと愛おしそうに笑った
深みがあるのが 一目で分かる

食べると 高い技術とこだわりと
女性は 思い出すようにうっとり言った
だけど それらをまとめる
細やかな感性と情熱が 感じられて
女性はまた ケーキを眺めた

あれから どんな味になったのかな
そう言う女性から ケーキを遠ざけ
お包みします とナヲキさんは言った
ケーキを箱に入れて リボンがけしてると
そう言えば と女性が言った

他の人たちは どうしたの?
まだ営業時間中だと 思ったけど
ああえーと・・・とナヲキさんは言った
頭が 何だかぼんやりしていた
あそっかこの雪だもんね と女性が言った

お客も来ないし 早く帰してあげなきゃね
ごめんねこんな日に と女性は肩をすくめた
いや・・・ とナヲキさんが言いかけたとき
ジリリリンと 店の電話が鳴った
あら電話よ と女性がうながした

ちょっとごめん とナヲキさんは電話に出た
あのぉすみません 老婆の小さな声が聞こえた
わたし 隣の家の者なんですけど
はぁ とナヲキさんは生返事をしながら
なんかクレームか?と 身がまえた

<つづく>

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