ただのサッカーブログ

世間知らずの人間が書くサッカーを中心とした個人ブログ。2020年からはサッカー以外の事も少しずつ。

変わる中学の部活動指導 外部委託はどうあるべきか

2022-12-22 | Weblog
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODH181YJ0Y2A710C2000000/

変わる中学の部活動指導 外部委託はどうあるべきか
ランニングインストラクター 斉藤太郎 2022年7月20日 5:00

地域スポーツクラブのニッポンランナーズを20年運営してきました。
学校教育の経験はありませんが「中高保健体育教員免許」と
「JSPO(日本スポーツ協会)公認陸上競技コーチ3」の資格を有しています。
昨今、教員の長時間労働の問題などから、中学校の部活動指導の外部委託が
動き出そうとしていますが、今回は指導資格を持つ立場
から思うところを書きたいと思います。

週末は地域クラブの繁忙期
クラブの会費収入と指導者の派遣、講習会・イベントなどの
収益により運営しているニッポンランナーズ。
小学生から80歳代の高齢者まで幅広い年齢層が在籍しています。
ただ、中高生は部活動の影響もあり、ほぼ在籍なしといった状況です。

私の知る限り、経験ある指導者を抱え、
実態ある活動を続けている地域クラブにとって、
週末は練習や大会といった、メンバーの安心・安全なスポーツ活動で
既に占められているのではないでしょうか。週末こそが繁忙期で、
活動のゴールデンタイム。週末に指導者が足りず、
外部に派遣を委託することで埋めているクラブもあるほどです。
そんな猫の手も借りたい状況で、中学校の部活動指導を
受け入れる余力のある地域クラブがどれほどあるでしょうか?

私たちにとっては、むしろ平日の稼働率向上が運営面の課題です。
時間とパワーは、むしろ平日に多く眠っているというのが本音になります。

部活動の会費負担についても判断が分かれるところです。
保護者は無償を願いますが、自立運営を目指すクラブでは
指導者・職員を雇い、指導スキルの向上を図り、
円滑にクラブを稼働させていくために、会費の徴収は生命線となっています。

施設のすみ分けをどうするか

ニッポンランナーズの活動拠点は
市営の陸上競技場や公園ですが、
こうした公共施設の使用が飽和状態になっているところは少なくないでしょう。
週末の陸上競技場は地域クラブに加えて、トラックで練習したい
中高生や大学生が集まり、超過密状態になります。
地域クラブは競技場、部活動は学校とそれぞれ主な拠点がある中で、
今後は双方の施設が効率的に利用されるよう調整が必要になりそうです。

ニッポンランナーズの昨年度の施設借用費は44万円でした。
本来、ランニングクラブが中学校の校庭を
使わせてもらうことは考えられません。
ただ、常に施設使用料の問題がついて回る地域クラブが
学校施設を無料で利用させてもらえるのだとしたら、
かなりコストを抑えることができると思います。

指導者のクオリティー

スポーツ指導で生計を立てている者ですら、様々な問題を抱え、
勉強の日々です。部活動指導の外部委託となれば、
地域クラブの指導者以外に、区市町村の「スポーツ指導者バンク」にも
声がかかるかもしれません。ただ、指導者によって指導実績や
中学生を対象とする指導能力の差は著しいと思います。
そうなると、これからはスポーツ指導の基盤となる、
JSPOのコーチ資格のようなものの取得が
前提となってくるのではないかと思っています。



指導力の問題は部活動でこそ指摘されるものかもしれません。
学生時代に競技経験のある部の顧問を務める方がいる一方で、
全くの門外漢が半ば強制的に顧問をさせられるケースもあります。
なじみがないゆえに競技の知識や指導のレベルをなかなか上げられず、
指導手腕のある顧問が率いる他校との成績の差になって表れる。
そうした「部活動格差」も大きな問題です。

時間的な問題もあります。「部活動未亡人」は、
部活動の指導に忙しく、家にいる時間が極端に
少ない夫を持つ妻を指す言葉。授業の準備やテストの採点・添削、
書類作成などただでさえ学校業務に忙殺されている上に、
部活動指導にも相当の時間を割かざるを得ない先生方の生活は
限界に達しつつあります。このことがとりわけ、
部活動改革が動き出す背景になっています。

「週末のみ」か「平日+週末」か

先生方の負担軽減を目的の一つに動き出した部活動改革ですが、
では指導の外部委託のあり方はどのようなものが考えられるでしょうか。

一つに、平日は従来通り顧問の先生が指導し、
週末の指導を外部に委ねる方法が考えられています。
ただ前述したように、地域クラブの指導者は週末こそ
会員の指導に忙しく、中学生の指導にも
目を向けるゆとりがありません。

私の子どもは剣道部に入っていますが、
週末は練習試合や公式大会で様々な場所に出向きます。
そこでは他校の先生と接することがあり、
競技を通じて様々な学校関係者とコミュニケーションを取る
貴重な機会になっているように感じます。大会などでは
顧問の先生が送迎や荷物の運搬などで保護者と密に連絡を取っており、
これらを丸ごと外部の指導者に任せるのは
あまり現実的ではないように思います。

もう一つとして、平日も週末もまとめて外部に指導を
任せる方法が考えられますが、これも懸念がないわけではありません。

来年度から日本中学校体育連盟(中体連)の総合体育大会に
クラブチームからも出場が可能になるそうです。そうなると、
平日も週末も地域クラブで専門的な指導を受け、
大会を目指す生徒が増えるかもしれません。
公式大会での結果が進路にも影響を及ぼすことを
考えると、競争が過熱しそうな予感がします。

早期の種目専門化への警笛

有能な中学生を輩出する強豪地域クラブには、
小学生も多く集まることが考えられます。
一貫性のある指導という点では、小学生のうちから一つの
競技に打ち込むのは理にかなっているかもしれません。
しかし、陸上競技に関していえば、早期の種目専門化は
決して喜べません。小さい頃は様々な運動経験を積んで
神経回路を育て、適応力を広げ、総合的な運動能力を培った後に、
初めて種目の選択をする。そのように、必要なステップを
踏んだ上での専門化の流れを大切にしてほしいです。

少なくとも12歳ごろまでは、種目を絞ることなく
いくつものスポーツに触れるべきです。大人が取り組むような、
練習の量と質を調節するだけの指導を「科学的だ」と
勘違いすることのないようにしてください。
小学生を対象とする全国規模大会の見直しの流れは、
早期の種目専門化への警笛でもあります。
子どもに関わる指導者、保護者は冷静に。
「子どもは能力の低い小さな大人ではない」。以前にも紹介した言葉です。

先生の生活が非常に厳しいものになっているという話をしましたが、
地域クラブの指導者も一人の親であり、家庭があることも
ご理解願いたいと思います。ある女性コーチの話を紹介します。
小さな子を抱えるそのコーチは、我が子の保育時間外に小学生を指導する際、
当初はメンバーの保護者らが自分の子の面倒を見てくれていましたが、
様々な事情があり、長くは続きませんでした。

私自身、子どもたちの部活動の送迎と
応援で週末のクラブ指導に出られないことが増えてきました。
会員が安心して任せられる、信頼できる指導者を育成することが、
地域クラブが存在し続けるための必須要素です。
信頼を得るにはどうすればいいかを常に考えながら、
危機感を持って、私たち地域クラブの指導者は活動しています。

部活動指導の外部委託にこれという正解があるわけではなく、
地域や学校の実情に応じて様々な形が模索されることでしょう。
スポーツはどこで習い、経験するのがいいのか。
楽しくスポーツを続けるための環境面のサポートはどうあるべきか。
指導の対価はどこが出すべきか。様々な問題が
絡み合った毛糸の玉をどうほどいていくかが問われていると思います。


さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。
リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。
2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ、
19年理事長に就任。走り方、歩き方、ストレッチ法など
体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。
300人を超える会員を指導するかたわら、
国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、
各国のレフェリーにも走り方を講習している。
「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、
その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。
エッセンシャル・マネジメント・スクール特別研究員。
著書に「こけし走り」(池田書店)、
「42.195KM トレーニング編」(フリースペース)、
「みんなのマラソン練習365」(ベースボール・マガジン社)、
「ランニングと栄養の科学」(新星出版社)など。





12月21日(水)閲覧数:630PV 訪問者数:391人
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