極楽とんぼは風まかせ

東は東、西は西。交わることなき二つとはいえ、
広い太平洋、東の風が吹き、西の風が吹き・・・

バラにはとげがあるのだ

2007年09月04日 | 今日の風の吹きまわし
ダウンタウンに出るたびに買い込んでくるDVDがけっこううず高く積み上がってしまった。シュリンクラップ
を破ったけど結局まだ見ていないもの、封さえ切っていないものを合わせて20枚近くある。そんなわけで、
きのうは「どれか見る?」という話になって、仕事の予定がきつくなるのを承知しいしい座ってしまった。

見たのはかれこれ20年くらい前の『The War of the Roses』という映画。「ばら戦争」というのはもちろん
15世紀のイギリスであったランカスター家とヨーク家の血みどろの王位争いのことだけど、映画は時代劇
とは関係がない。20世紀のローズ夫妻の文字通り血みどろの離婚戦争を描いたブラックコメディだ。

ストーリーはダニー・デヴィートが演じる弁護士が離婚の相談に来た依頼人に聞かせる話として展開する。
冒頭のオリバーとバーバラの出会いのシーンからして予言的だ。学生同志の二人がオークションでたかが
数十ドルの東洋の置物を競り合う。やがて結婚した二人。オリバーはやり手の弁護士になり、バーバラは
豪邸で料理やインテリアに精を出す。高級な家具や、豪華なクリスタルや置物のコレクションに囲まれて、
まさにセレブの暮らしを絵に描いたようなシーンが続く。

その二人が離婚することになって、財産の分割をめぐってばら戦争が繰り広げられる。バーバラは「私が
見つけた家だから」と要求した豪邸は、かって車で通りかかって欲しくなり、速攻で売ってもらおうとしたら、
ちょうど所有者の葬式だったという伏線がついている。家を巡っての神経戦はだんだんエスカレートして、
しまいにスリラーじみた展開になり、最後には二人とも巨大なシャンデリアと一緒に墜落して死んでしまう。
そこで、弁護士は依頼人に言う。「気前よく何でもやってきれいさっぱりと別れるか、でなければ家に帰って
昔彼女に恋したときの何かを思い出して、それを手がかりにやり直せ」と。

これは男と女の戦いなんてものじゃなくて、まさに所有欲のぶつかりあいだ。この二人、本当に愛し合った
ことがあったのかしらんと思ってしまう。オリバーは最後まで愛しているらしく見えるんだけど、バーバラが
仕事を始めると言いだしたときの反応や、ドアや窓に板を打ち付けてバーバラを閉じ込めてしまうところを
見ると、どうも所有欲に近い愛のようにも思える。うん、このバラ、いたって鋭いトゲがたくさんある。

離婚話になるたびに、ツレアイ君は「オレは手に入るものは全部もらうからな」と言った。私の方が収入が
多かったから「扶養料ももらう」とまで言った。きっと、家だって「オレの庭と温室があるからオレのものだ」と
主張したかもしれないな。さて、私はどうしただろう。この家は私が設計して、設計図も自分で書き上げて、
工務店に建ててもらったものだ。でも、たぶん、そっくりツレアイ君に上げたと思う。なぜなら、文字通り私の
「作品」なわけで、家の隅々まで私の手がかかっているから、ツレアイ君は「思い出」の中で暮らさなければ
ならなくなる。オンナノコが後釜に来てくれたとしても、「前妻の残したものなんかいや」とくどかれるだろう。
そういわれるとツレアイ君はよけいに「オレのもの」にこだわる。前妻の亡霊を追い払いたい現妻との間に
戦争が勃発して、私はそれを「Revenge is sweet」と笑って高みの見物という展開。バラはみんなとげが
あるんだもん。私にだってこわ~いイジワル心があるのだ、ウフフ・・・