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伊藤とし子のひとりごと

佐倉市議会議員4期目
議会、市民ネットワーク千葉県、さくら・市民ネットワークの活動あれこれ、お知らせします

田中優さんコラムより「もう一つの未来」

2012-10-22 21:08:31 | 原発問題
今書いている本の内容だそうです。
田中優「持続する志」より

エネルギーの選択が、どれほど未来を変える可能性があるのか。
「もうひとつの未来(仮)」**********************


▼ 脱原発シナリオ1.節電

 政府は三つの「2030年のエネルギーシナリオ」を提示し、パブコメを国民に求めた。
彼らの目論見と違って、9万人近くが反応してコメントを寄せ、うち78%が原発の即時ゼロを求め、2030年時点のゼロを含めると脱原発が87%に達した。

 あわてた政府は姑息にも関係ない新聞の世論調査を並べて全体のトーンを下げ、「2030年代に原発ゼロ」というシナリオを提示した。
ところが政権はこれを閣議決定せず、あいまいな扱いにしてしまっている。
 
 では本当に即座に脱原発することはできないのか、考えてみよう。

 電気は発電の問題だけではない。節電した分だけ発電所が不要になるので、新たな発電所を造ったのと同じ効果がある。
「節電所」と呼ばれるゆえんだ。
 この節電で発電所は半分にできる。

 2011年、人々の節電は2010年に対して22%も電気消費を下げた。
しかしそれでも上を見上げれば、蛍光灯は反射板つきの省エネ型にはなっていない。
エアコンも電気消費が20分の1になるガスのヒートポンプにはなっていない。

 それだけで照明は10%以上の節電になり、エアコンは40%以上の節電になる。
しかもどちらも従来のランニングコストよりもずっと安くなるので、設備に要した費用は8年以内に元が取れる。
都会で最も消費を伸ばしてきたオフィスも半分以下に節電できるのだ。

 それ以外の工場なども「節電困難」と言っているが、これもまた料金でコントロールできる。
この夏、北九州市の八幡東区で実験が行われた。
そこは九州電力から独立して電気を供給し、一割以上安い電気を届けている。

 面白いのは最大の電気消費になるピーク時に対する対策だ。
電気料金が五段階になっていて、逼迫度に応じて最大10倍高くなる仕組みになっているのだ。
電気料金は前日と当日の朝に通知される。

 その結果、ピークの消費量は16%も節電された。
同じことを事業所にも進めたい。
といっても損する話ではない。

 今の家庭の電気料金は、使えば使うほど単価が上がるようになっているが、事業向けは逆だ。
使うほど安くなるようになっている。
これを家庭と同じように節電すればするほど得するように変えれば、事業所もまた簡単に半分に下げてしまうだろう。

 2011年は装置を変えていないのに22%も節電できた。
さらに装置の節電を進めたら、電気消費は半分にできるだろう。
 原発の発電量は全体の30%程度、半分に下がれば当然不要になる。

▼ 脱原発シナリオ2.発電

 ここで自然エネルギーの導入と言いたいところだが、その前にもっと安くて便利なものがある。
「未利用エネルギー」だ。
工場などの廃熱は、その70%が200℃前後の熱となっている。
私たちからすると高温だが、事業所では低温なのだ。
この熱から発電できる装置が相次いで作られている。

 ひとつはバイナリー発電。
別名「温泉発電」で、70℃以上の熱なら発電できる。

 もうひとつは「ダ・ビンチ」という会社が作っているロータリーエンジン発電だ。
こちらは50℃から発電できるという。
どちらも気化温度の低いアンモニアや代替フロンを使うことで、低い温度から発電するのだ。

 すると、今まで捨てていた廃熱が電気になる。
そのポテンシャルはものすごく、今の熱すぎて水を足している温泉熱だけで、日本全体の電気の6割を生み出せる。
それに工場の廃熱発電を加えたら、それだけで電気は足りてしまうことになるだろう。

 もちろん温泉熱も自然エネルギーだが、それ以外の自然エネルギーの出番がなくなってしまいそうだ。
それらはエネルギー自給のために進めていくのがいい。
 太陽光発電は自宅の電気を自給するためのものとして利用する。
日産の「リーフトゥホーム」のような仕組みでその電気で自動車を走らせ、貯めた電気で自宅の電気をまかなえる。

 もし屋根が狭ければ、熱効率や価格から言って太陽熱温水器の方がずっといい。
いまや20万円もしないのだから。
家庭内の熱利用はエネルギーの半分以上だ。
お湯に太陽温水器を、暖房にペレットストーブを使ったら、石油に頼らない暮らしができる。

▼もうひとつの未来

 それらを実現したら社会はどう変わるだろうか。
まず雇用が増える。
ドイツではいまや38万人の雇用を生み出している。
それはトヨタ自動車グループ全体の雇用者数325,905人を超えている。

 なにも就職できないからといって「就活自殺」なんて考えなくていい。
どこかにぶら下がって生きるのではなく、自分で仕事を作り出せばいいのだ。

 そしてこの日本もついに、あと3年で電力の自由化されることになった。
これまで悪の温床だった「総括原価方式」も廃止、「発送電の分離」も実現、家庭は携帯電話を選ぶみたいに電力会社を選ぶことができることになる。

 自然エネルギーになればもちろん地球温暖化は解決する。
原発は不要になり、しかも電気は安く自給できるようになる。
石油を奪い合わなくていいのだから、戦争すら必要ないものになっていく。

 こんな時代に生きている巡り会わせに感謝したいぐらいだ。
もうひとつの未来を選べる時代に生きているのだから。

 問題は、多くの人が「もうひとつの未来」という選択肢を知らないことだ。
もうひとつの未来を知った上で選択しよう。
 「原発がありかゼロか」というのは選択肢になっていない。どっちを選択してもらってもかまわない。
しかし一方しか提示しないのはアンフェアだ。
 私たちには大きく広がる未来もあるのだ。


(※ 川崎市職員労働組合様へ寄稿したものを、好意を得て転載しています。)


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