食品放射能規制値を年間1ミリシーベルトに引き下げるとして、国は昨年12/22に案を出した。
飲料水 10ベクレル
乳児用食品・牛乳 50ベクレル
一般食品 100ベクレル
しかし国が金科玉条にしているアノICRPでさえ、食品、呼吸による内部被ばくと外部被ばくをあわせて年間1ミリシーベルトに抑えることを勧告している。
「1ミリシーベルト以下だったら安全というわけではなく、なるべく低減を目指すことである」
まして、食品による内部被ばくを1ミリシーベルトに設定している事自体、拡大解釈ではないだろうか。
健康被害のリスクが大きい。
1ミリシーベルト「線引きの値ではない」 ICRP会議
1/7のブログ
『竹野内真理さん「放射性セシウムの1回摂取と長期摂取による体内残存量の経時推移」について』で書いたが、毎日10ベクレルの食物を摂取しただけで、100日後には体内に600ベクレルのセシウムが残存してしまう。
つまり、体重30kgの子どもだったら危険域の体重1kg当たり20ベクレルに到達してしまう。
1/19の朝日新聞
、「一日分の食事に含まれる放射性セシウム調査」の記事によると、
福島では大体4ベクレル/日、最大の人は17.3ベクレル/日もあった。
さて、厚労省はこの食品規制値と飲料水の規制値についてパブコメを募集中。
2/4まで
食品は
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令及び食品、添。等の規格基準の一部を改正する件(食品中の放射性物質に係る基準値の設定)(案)等に関する御意見の募集について
飲料水は
水道水中の放射性物質に係る指標の見直し案に関する意見の募集について
全国で
リスクコミュニケ―ション(説明会)も開催されているが、すでに東京は終わっていた。(1/16)
今後は、
福島(1/24)、福岡(1/31)、宮城(2/6)、岩手(2/10)、愛知(2/20)、大阪(2/28)
しかしリスクコミュニケーションも終わらないうちにパブコメを打ち切る。
あまりにも「形だけ」のパブコメ募集ではないだろうか。
リスクコミュニケーションもただのアリバイ作りか。
それはさておき、やっぱり「おかしいぞ」と声を上げていかなければならない。
参考までに「食品と暮らしの安全」のパブコメでは、「1ミリシーベルトにすべき」と言っている。
当初1ミりシーベルトはきびしいと思ったが、今後日本人全体が遺伝子レベルで放射能に傷つけられるリスクを最小限にするには、これしかないだろう。
食品中の放射性物質に係る基準値の設定に関する意見(全文)
放射能は、子孫に伝わる遺伝子に危害を加えるので、将来の日本人に遺伝的な悪影響を引き起こす。
それを最小限にするには、妊婦の「孫」を守ることを考えて、食品や飲用水の放射能基準を、できるだけ厳しい水準に改定する必要がある。
ところが食品安全委員会は、「確率的影響」のガンの項目の中で「遺伝的な影響については、ヒトの調査では見られていません」としているだけで、遺伝への影響を無視している。
これでは、福島だけでなく、将来の日本人に広く被害が出てしまう。
チェルノブイリで被ばくした妊婦の孫に、脳腫瘍や心臓病が増えているという報告があるので、子孫に伝わる遺伝子に傷がつく原理を述べ、どうしたらいいかを提案する。
放射線によって遺伝子に傷がつきやすいのは、細胞が増殖しているときである。
遺伝子DNAは二重らせんなので、通常は1本に傷がついても、残ったもう1本をもとに傷を複製し、治してしまう。
ところが、細胞が分裂するときは1本鎖になるので、傷がついても治すことができない。
だから、増殖している細胞は、増殖していない細胞より放射能の被害が大きくなる。
細胞の増殖が激しいのは、胎児である。
胎児を少し細かく見ると、お腹の中にいる胎児は妊婦の「子ども」。
胎児の中で発生する生殖細胞は、妊婦の「孫」である。
放射能によって胎児の脳の遺伝子に傷がついて、その細胞が生き残ったとしよう。
そのとき、脳の細胞数が1億で、それから140億に増えたら、遺伝子が傷ついた脳細胞は140倍に増える。
肝臓の細胞数が1億のときに、1つの細胞の遺伝子に傷がついて生き残ると、肝細胞が3000億に増えたとき、遺伝子が傷ついた肝細胞は3000倍に増える。
このように胎児は、放射能によって受ける被害が大人よりも桁違いに大きくなる。
胎児の中にできた「生殖細胞」の遺伝子が傷つくと、その傷は、孫のすべての細胞の遺伝子にコピーされる。
成人の細胞の総数は60兆個だが、その倍率で被害が拡大するところが「体細胞」とは決定的に違う。
したがって、放射能によって一番大きな被害を受けるのは妊婦の「孫」。
次が妊婦の「子ども」ということになる。
妊婦が妊娠5週のときから、胎児のなかで卵子や精子がつくられ始める。
これから十数週間が子孫に対するリスクが最も高い時期だ。
ところが妊娠5週では、妊娠したことがわからない女性もいる。
だから、子孫に遺伝障害が出ないように防ごうとするには、妊娠可能な女性をすべて守ろうと考えて、 食品と飲料の基準を設定する必要がある。
放射線によって遺伝子が傷ついて起きる突然変異は、生命が誕生してからずっと起き続けてきた。
それで生物は進化してきたが、そのときの生存競争で弱い生物は淘汰された。
現在は、生存に適した遺伝子だけが残っているといえるので、突然変異を起こすと、ほとんどすべて生存しにくい方向に変化する。
つまり、遺伝子に傷をつけることは有害といえる。
突然変異は、遺伝子DNAの分子が一つ変化するだけでも起こる。
発ガン性のような2段階説はないから、閾値は存在しない。
ということは、「食品中に許容することのできる放射性セシウムの線量を、現在の年間5ミリシーベルトから年間1ミリシーベルトに引き下げる」措置を取ったとしても、 遺伝的には危険性があるということである。
「放射能はどんなに微量でも危険性がある」ので、この原則を踏まえて、日本人全体で起きる突然変異をできる限り減らすように、より厳しい基準を設定しなければならない。
もう一つの遺伝の原則は、集団への影響を考える、ということである。
お茶の業界は、線量が高い地域の茶と、低い地域の茶を混ぜて基準以下にすることを行っている。
他の食品でも同様のことを行って、検出限界以下にしているケースがある。
こうして混ぜて薄めれば、個人のリスクは下がる。
しかし、放射能の摂取総量は同じなので、日本人全体で起きる突然変異は減らない。
したがって今後は、意図的に線量が高い食品と低い食品を混ぜることをやめさせるよう措置を取る必要がある。
昨年の3月20日、ドイツ放射線防護協会は日本に対して、大人が食べる食品は8ベクレル/㎏、子どもは4ベクレル/㎏に放射性セシウムを規制するよう提案した。
妊婦が食べる食品については提案がなかったので、私たちはこれに、妊婦が食べる食品は1ベクレル/㎏を追加すべきだと考えている。
しかし、「妊婦」と「妊娠可能な女性」を特定して基準を作ることは、現実的に困難なので、食品も飲料もすべて1ベクレル/㎏を基準にすべきだと、私たちは主張する。
この基準を採用すると、基準をオーバーする食品が確実に出てくる。
だが、これは、日本国民全体の被曝総量を減らす役割を果たすことなので、基準をオーバーした食品が多く出て、それを排除することはいいことだと考える必要がある。
基準を超えた食品については、原発事故を起こして放射能汚染を広げた東京電力に補償させるべきである。
(以上)