月扇堂手帖

観能備忘録
あの頃は、番組の読み方さえ知らなかったのに…。
今じゃいっぱしのお能中毒。怖。

JAKMAK

2014年07月18日 | 歌舞伎・舞踊・文楽
BS朝日 2014/7/6放映「葉加瀬太郎×梅若玄祥 神に選ばれし表現者たち~世界遺産で奇跡の競演~」

梅若玄祥とヴァイオリニスト葉加瀬太郎のコラボ作品を、この5月に上賀茂神社で上演した記録。
かなり長いメイキング映像と、当日の公演映像(JAKMAK以外は一部)。

メイキング部分で、いかに制作に苦労したかといったことが延々語られ、かなりもったいつけてからやっと舞台の映像になった。
当日は、まず、玄祥「翁」があり、次に葉加瀬の演奏する「シャコンヌ」に玄祥師が舞をつけ、最後に「JAKMAK」が演じられた。

番組のナレーションを斉藤由貴がしているのだけれども、彼女によると「翁」はしゅくげん(字幕では「祝言」)のための特別な能で、舞台に翁が登場すると会場は〈幽玄な〉雰囲気に包まれたそうだ。なんだかそのあたりで、大丈夫かなこの番組という気になる。

「JAKMAK」というのは、「寂寞」(せきばく)の呉音読み。梅若さんから葉加瀬さんに作曲依頼をするときに指定されたテーマ。これに沿って四部構成の曲が作られた。

第一部では、エスニックな彩りの衣裳をつけたダンサーたちが踊る。
第二部では、装束をつけた玄祥師登場。ダンサーたちをバックに舞う。
第三部はまたダンサーのみが踊る。
第四部で装束を替え、蛙の面をつけた玄祥再登場。青いライトに照らされながら放った巣は、蜘蛛の巣ではなく光の表現らしい(本人は当初、ほぼ不動でこの部分を演じるつもりだったが、能楽師以外はこれを非常に不安に思い蜘蛛の巣や派手な動きを要望したようだ)。

感想を言うと、ヴァイオリン他の演奏は素敵だったし、作曲も彼らしくてなかなかよかった。
神戸女学院の学生たちによるダンスも選りすぐりのメンバーというだけあって大した物だった。
玄祥師の姿も美しかった。
でも、できることなら、別の場所で、それぞれに拝見したかった。三者とも素晴らしいけれども調和というものは少なくともテレビで見る限り感じられなかった。
なんだか新興宗教の団体が催すイベントみたい(というのは、詞章に格調がなく、どうにもこなれない上に押しつけがましくて、聞いてられないのだ)。
とりわけ、上賀茂神社の境内という〈場〉に全く調和していないような。

というわけで、作詞と演出は誉められない。

でも、まあ、これはお能ではなく〈組曲〉なのだそうだから、そういうつもりで聴いていればよいのかもしれない。
神社の境内であられもない姿の女子たちが踊るのも、天鈿女命の例もあるから神様もけっこう面白がった…かもしれない?
伝統の上にあぐらをかかず、常に実験し挑戦する姿勢は大切なのだ、きっと。

 

*****

2014/5/24上賀茂神社外幣殿にて収録

能「翁」:梅若 玄祥
    笛:森田 保美 小鼓:大倉 源次郎
    地謡:山崎正道 味方團 川口晃平 井上和幸
J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調 BWV1004 より
「シャコンヌ」
    Vn:葉加瀬太郎 Vc:柏木広樹 Gt:田中義人 pf:光田健一
    Bs:一本茂樹 Perc:仙道さおり
    舞:梅若玄祥
組曲「JAKMAK」
    シテ:梅若玄祥
    ダンス:山根海音 花岡麻里名 飯田利奈子 渡邉はるか 三崎彩 佐藤絢音
    Vn:葉加瀬太郎 Vc:柏木広樹 Vla:島岡智子 Gt:田中義人
    Perc:仙道さおり Bs:一本茂樹 Key:光田健一 Mp:八巻誠

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