月扇堂手帖

観能備忘録
あの頃は、番組の読み方さえ知らなかったのに…。
今じゃいっぱしのお能中毒。怖。

陰陽師

2013年09月16日 | 歌舞伎・舞踊・文楽
九月花形歌舞伎(東京・歌舞伎座)



東京へ出かけようという朝、5時からiphoneがビービー鳴って叩き起こされ、「ただちに命を守る行動をとれ」と言われても(「特別警報」が設置されて第一号だったとか)、いやー、わたし、今日は「陰陽師」見るので東京行きます、体力勝負になりそうだからもうちょっと寝ます、と布団をかぶってようよう眠りに戻ったところへ、今度は朝のニュースを見た親から「京都、大変ねー、大丈夫ー」とありがたい(T-T)お見舞電話が来て、これはもうダメだ、寝るのは諦めて出かけようと、準備をした。

京都ー静岡(新幹線) 静岡ー三島(在来線) 三島ー東京(新幹線) で、都合6時間半くらいかかってようやく目的地に到着。

新しい歌舞伎座自体を見学したいので、少し早めの時間どりをしていたのだけれども、結局、席に着けたのは開演1時間後。

この公演、染五郎が安倍晴明、他に愛之助、海老蔵、勘九郎、七之助、菊之助、松緑と若手ばかりで演じる新作で、もう、ワクワクするような企画だった。
先に来て見ていた友人に、見逃した部分をレクチャーしてもらおうと思ったら、「特に説明するようなことはない」とのこと。彼女自身、「ときどき寝ちゃって(^_^;)」って。

で、最後まで見て思ったことは、6時間半かけてやってきたけど、仮に間に合わなくて全部観られなかったとしても「特に残念なことはない」なと。

結局、わたしが期待していたのは、耽美路線の「陰陽師」だったのに対して、脚本家が目指したのは夢枕獏の原作にあるおどろおどろしさだったらしい。彼はむしろコミックや映画版「陰陽師」に違和感を持っていたそうだ。

グロテスクな表現が多くてなんだか不快だった。
染五郎みたいな綺麗な役者をつかっているのに、綺麗な晴明になっていなかった。メイクがよくない。昼の部の園部兵衛役のほうが綺麗なくらいだ。
炎が上がるような仕掛けがあってハッとさせられるけれども、何度も同じことをするので効果がなくなる。
狐あそびも悪くないのにくどすぎて飽きる。
オールスターのせいか、誰が主役なのかよくわからない。
全体にメリハリに欠ける。派手な展開のようなのにやたら眠かった。
最後の終わり方も、「ひとはなぜ生きるのか」という問答が唐突、フィナーレのビジュアルが寂しい。

ひとことでいうと、豪華なのに安っぽい。

よかったのは、桔梗役の七之助の最期。道満の存在感。笛の音。

 

*****

「陰陽師 滝夜叉姫」夢枕獏原作 今井豊茂脚本 齋藤雅文補綴・演出
  安倍晴明:染五郎 平将門:海老蔵 興世王(おきよおう):愛之助 
  桔梗の前」七之助 源博雅:勘九郎 俵藤太藤原秀郷:松緑 
  滝夜叉姫:菊之助 賀茂保憲:亀三郎 平維時:亀寿 大蛇の精:新悟 
  芦屋道満:亀蔵 平貞盛:市蔵 雲居寺淨蔵:権十郎 小野好古:團蔵

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