月扇堂手帖

観能備忘録
あの頃は、番組の読み方さえ知らなかったのに…。
今じゃいっぱしのお能中毒。怖。

顔見世 昼の部

2010年12月13日 | 歌舞伎・舞踊・文楽
當る卯歳吉例顔見世興行東西合同大歌舞伎(京都・南座)

今年は昼の部のほうが好みだなと思い、こちらへ。

海老蔵休演の代役が仁左衛門になったのも、わたくし的には密かに喜ばしい。

「羽衣」

前場と後場がありストーリーもお能と同じ。ただ、羽衣を着ていない前半の天女は人間に化けているのかとても俗っぽい。

後場になってようやく天女らしい装束に。お能と同様、天冠と長絹。

天に帰るところは、松林の絵の裏にある階段を昇っていき、頂上に達すると松の絵がパタンとめくれて雲になり、より高みへ昇ったことになる。知恵に感心してしまう。

孝太郎は、お化粧でちょっと損をしてないだろうか。
顔のたるみをとって、お化粧を工夫をしたらもっと美女になれそうな気がする。

「菅原伝授手習鑑-寺子屋」

子役がたくさん出てくる。寺子屋に来ているのだが、リアルな学校はどうしてるのだろうとちょっと心配。

道真の実子、菅秀才(かんしゅうさい)は陶器のお人形のよう。
小太郎他の子供たちも皆、愛くるしい。ひとりひとりの名前はわからず残念。

幕開きに涎くり与太郎だけがムキになって墨を摺っていたり、松王丸が客席から拍手が起こるまでしつこく咳き込んだりして笑いをとる。

それにしても、親の都合で命を差し出されても逆らわない小太郎はけなげである(涙)。

「阿国歌舞伎夢華(おくにかぶきゆめのはなやぎ)」

花道から出てきた伊達男に「いやー、仁左衛門、若いなぁ!」と驚いたものの、よく見たら愛之助だった。秀太郎の養子とは思えないほど仁左衛門に似ている(と思うのはわたしだけだろうか)。

本物の仁左衛門は、もちろんもう少し老けているわけだけれど、玉三郎との連れ舞になんだかしみじみしてしまった。

そういえば、歌舞伎を観るようになったのは、20年ほど前、孝玉のコンビに出会ったからだ。ずいぶん時が経った。

「伊賀越道中双六-沼津」

十三世仁左衛門の追善ということで、片岡三兄弟の共演。

こちらも舞台装置があれこれ面白かった。富士山の背景が大胆にパタンとめくれたり、その他もろもろ、妙にアナログでしかもダイナミック。

我當扮する平作と仁左衛門の十兵衛が舞台から降りて客席を歩き、また花道から戻ってくる(なので、昼の部は1階がベストか)。

仁左衛門はもちろん美しく凛々しく素晴らしかったけれども、それでも今日の一番は、何と言っても我當だ。

役柄を越えて、素の人格まで尊敬できる芝居(芝居ではないのかもしれない)。

おかげで、お話の中へぐぐーっと引き込まれる。我當、最高! 

「兄弟ってええなぁ!」と客席から声もかかっていて、それを他人が言ってよいのかどうかはわからないけれど、みな心にそう感じていたと思う。追善には何よりの舞台だった。



お昼ごはんに花萬で買った「歌舞伎巻」。
鰻と卵の太巻きでけっこう美味しかったけれども、なにしろ海苔が噛み切れなくて困った(_ _;)
この箱、何かに使えないかしら。





*****

「羽衣」天女:孝太郎  伯竜:愛之助
「菅原伝授手習鑑-寺子屋」
    松王丸:吉右衛門  
    千代 :魁 春
    戸浪 :芝 雀
    涎くり与太郎:種太郎
    園生の前:扇 雀
    春藤玄蕃:段四郎
    武部源蔵:梅 玉
「阿国歌舞伎夢華」
    出雲の阿国:玉三郎  
    女歌舞伎 :笑也、笑三郎、春猿、吉弥
    男伊達 :愛之助、翫 雀
    名古屋山三:海老蔵仁左衛門

十三世片岡仁左衛門を偲んで「伊賀越道中双六-沼津」
    呉服屋十兵衛:仁左衛門
    平作娘お米:秀太郎
    池添孫八:進之介
    荷持安兵衛:歌 昇
    雲助平作:我 當


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