月扇堂手帖

観能備忘録
あの頃は、番組の読み方さえ知らなかったのに…。
今じゃいっぱしのお能中毒。怖。

縹緲の露――能《野宮》

2014年06月22日 | 歌舞伎・舞踊・文楽
ボヴェ太郎舞踏公演(京都・京都芸術センター大広間)



チラシの写真に惹かれて行ってみた。

会場は78畳敷きの和室。二方の隅に三列の客席を作り、残った空間が舞台。
笛と小鼓、地謡2名。

ボヴェ氏は舞踊家ではあるけれども、能楽を現代的に舞うといった趣旨ではまったくなかった。

能楽はただでさえ装置も簡素で構造もシンプルだけれど、そこからもっともっとそぎ落とした末に残るものを探している試みなのかなと思う。

お囃子もふたり、地謡もふたり。作り物はもちろんなく、装束すらつけない。面もつけない。

だから、見るほうはそうとう《野宮》について知っている必要がある。そうして、お能を見るときよりもさらに想像力がいる。それがあれば、縹渺たる草原にひとりさまよう女性が見える。彼女の充たされない思い、心残り、羞恥、そんなものが風に吹かれて草と一緒に鳴っているのが聞こえる。そのような意味では面白かった。

黒い長袖シャツの下には袴様のものを穿き(つけ?)、白足袋で終始摺り足。腰を落として超スローモーション。中入りもなく70分間、ずっと動き続けていた。ものすごい体力と集中力だ。

構成人数が少ない分、ひとりひとりの働きが迫力をもって伝わってくる。吉浪師の謡に凄みを感じた。田茂井師と綺麗にハモるのも感動。

*****

構成・振付・出演:ボヴェ太郎
笛:杉信太朗 小鼓:曽和尚靖
地謡:吉浪壽晃、田茂井廣道

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2 コメント

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確かに (きゅうる村)
2014-06-23 12:33:39
こういう方向は、現代に能を生かす一つの試みですね。シテの所作だけに集中させ、ほかはそぎ落とす。
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お能の魅力 (月扇堂)
2014-06-23 23:53:49
他の分野のひとをここまで引きつける魅力が能楽にはあるのですね(v_v)
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