象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

『ノクターナルアニマルズ』に見る"女の強欲と男の執念"と。

2017年12月08日 05時05分43秒 | 映画&ドラマ

 ある映画ブログで、2017年のオールタイムベストに選ばれただけあり、実に見ごたえがある。英語字幕でも十分に楽しめた。ただ、オープニングのデブ老婆のヌードダンスに大いに疑問を感じたが、2時間後には、その疑問が晴れた思いがした。

『アライバル(英題)』では、普通のオバはんになり下がってた?エイミーアダムスも今回は気合十分。"孫にも衣装"とはよく言ったもんで、雰囲気が変われば、化粧も変わる。ドレスアップした彼女の存在感は、まだまだ捨てたもんじゃない。それに、周りを固める豪華なキャスト陣と高質の音楽と演出は、流石トムフォード監督『シングルマン』は伊達じゃなかった。

 さて物語は、妻のスーザン(エイミーアダムス)に捨てられ、その上、大切な子供も内緒で中絶された、哀れな売れない作家エドワード(Jギレンホール)。彼は裏切った元妻に、生涯最後の?小説"ノクターナル•アニマルズ(夜の獣たち)"を送りつける。主人公トニーの妻娘がレイプされ、殺害されるという展開に、元妻のスーザンは小説と現実の区別がつかなくなり、酷く精神を病んでいく。

 そんな彼女も現在は、怪しげなアートギャラリーのオーナーとしてそれなりの成功を収めてはいるが、イケ面でやり手の現在の夫は、堂々と浮気を見せびらかし、やりたい放題。お陰で、不眠症に病む中年女に成り下がってたのだ。

 彼女は小説を読み進めるうちに、元夫のエドワードを切り捨て、内緒で中絶をした事後悔と最悪感を覚える。挙句は、過去の新鮮な回想と現在のおぞましい幻想の中でさ迷い、知らぬ間に深いトラウマに陥るのだ。

 そんな中、スーザンは辛かった過去を冷静に振り返り、エドワードの小説家としての才能を認め、自らの過ちを悔い、少しずつ元夫に信頼を寄せるようになる。
 小説の中で、妻子を殺されたトニーが犯人を追い詰め、殺して復讐を遂げ、主人公も死に絶えるが。エドワードのスーザンに対する執着は、彼女の元夫への信頼の回復とは逆に、この小説の中の復讐劇と全く同質のものであったのだ。つまり、この小説の中に、元夫は復讐のシナリオをダブらせてたのだ。

 何とかエドワードと連絡が取れたスーザンは、現夫と別れ、元夫と寄りを戻そうと決心し、新たな未来を思い描く。彼女は高級レストランで待ち合わせをし、ドレスアップして出かけるも、エドワードは来なかったし、来る筈もない。彼女は一人待ち続け、一杯のバーボンを口にする。そして、女の表情が急変する所で、幕が落とされる。

 この先は推測する他ないのだが。この酒には、元夫によって毒が仕込まれてたのは明らかで、エドワードには彼なりの復讐の仕方があった。秘密には秘密でもって返したのだ。男は殺すべくして殺し、女は死ぬべくして死んだ。

 勿論、現実に生きたいと願った女は、お金と欲望に生き、単にそのツケを払わされただけなのだ。まるで、オープニングで曝け出したデブ老婆の裸体の様に。"女の慾と男の執念"が見事に交差した素晴らしい幕切れに、思わずウットリですな。



2 コメント

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老婆のヌードダンス (paulkuroneko)
2018-11-13 11:32:49
お早うではなくて、こんにちわですね。失礼しました。

エイミーアダムスの微妙な老け顔がピタリとはまった映画だと思います。
多分、見てる人の大半はこんな色気付いた中年ババアなんか、痛い目に会えって心の中で叫んだ事でしょうか。

オープニングの老婆のヌードダンスが、強欲にまみれた女の行く末を的確に描いてますね。
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Re:老婆のダンス (lemonwater2017)
2018-11-13 23:47:10
pauさん、ノクターナルへようこそです。

 女性の強欲もそうですが、老婆のヌードダンスは白人の強欲の行方を見事に映し出してると思います。

 ハリウッドはごく偶にこういった揶揄系のシリアスなドラマを作りますね。もっともっとこういう映画を見たいんですが。金にはならないんでしょうかね。
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