goo blog サービス終了のお知らせ 

象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

類体とはなんぞや〜高木貞治とその時代(その8)

2025年07月20日 11時55分37秒 | 数学のお話
 前回「その7」に寄せられたコメントに、”類体とはなんぞや?”とあった。 確かに・・素朴な質問である。 その他のコメントには、”アーベル拡大=類体と覚えとけば誤解はない”と返したが、厳密には”類体⊇アーベル拡大”となる。 当時、類体は特別な(有限次)アーベル拡大体と思われていたが、ヒルベルトは”類体は不分 . . . 本文を読む

アルキメデスの原理に、われ何を思う〜数学は不安を解消する精神安定剤である

2025年07月03日 08時51分31秒 | 数学のお話
 数学でのアルキメデスの原理は「アルキメデスの公理(又は性質)」とも呼ばれ、”2つの実数aとbがある時に、bをある回数だけ足し合わせると、aを超える”というもので、無限の概念を扱う重要な公理とされる。 言い換えれば、”ある線分の長さを1とし、それを無限に分割すると、どんなに小さな線分も必ず存在する”事を意味する。これは、実数には極限が存在し、実数の連 . . . 本文を読む

高木貞治とその時代”その7”〜ドイツ留学と「高木の存在定理」

2025年06月29日 14時53分34秒 | 数学のお話
 昨年9月以来の高木貞治氏(1875-1960)の伝説とその時代ですが、前回「その6」までの計6話で、代数的整数論からイデアル論への流れを振り返り、高木氏の類体論(存在定理)に繋げました。 一方、代数的整数論の分野を1897年の論文「数の報告」で統一したヒルベルト(1862-1943)は、類体論に関する一連の予想(絶対類体)をたて、その結果は高木貞治による類対論の研究の後、1930年までに殆ど証明 . . . 本文を読む

数学は偶然の上に卵を生む(その6)〜ベイズ理論と事後確率と”訴追者の誤謬”

2025年05月25日 04時07分00秒 | 数学のお話
 前回「その5」では、ベルヌーイの「大数の法則」に加え、「小数の法則」を紹介しました。 前者はよく知られる現象でサイコロを無限数回振れば、各々の目が出る確率は1/6というもので、後者は”ある出来事の見込み率はその出来事の最近の発生率によリ上下する”という、ランダムさにも偏りがある事を示す。 特に後者は”ギャンブラーの誤謬”と呼ばれ、運が尽きた時に大当 . . . 本文を読む

「バナッハ-タルスキーの逆理」の証明(完結編)〜トリックとパラドクスは数学の上に卵を生む

2025年05月15日 04時55分11秒 | 数学のお話
 ”1つのリンゴを5等分し、それらを寄せ集め、ジグゾーパズルを組み立てる感覚で同じ形の同じ大きさのリンゴを2つ作り出すなんて・・何もないものから何かを作り出す様なもんでしょ?そんなバカな・・” 大学院生の1人が呟いた。 教授は”いいかい、これはよくある話なんだ。非可測集合や選択公理を用いる時にはよく起こる事で、これは定理としてちゃんと認められてるんだよ&rdqu . . . 本文を読む

”積分論は難しい”と嘆く日本人へ(その6)〜ルベーグ測度と測度論の違い

2025年05月04日 11時31分55秒 | 数学のお話
 前回「その5」では、ルベーグ積分のアイデアを再検証しましたが、リーマン積分では、x軸上の区間[0,1]をn個に分割し、n→∞とした時の微小区間dxとそれに対応するf(x)を掛けた長方形の面積f(x)dxを全て足し合わせ、面積を近似しました。 一方、ルベーグ積分では定義域[0,1]ではなく、値域の[0,∞)を分割する。この時、定義域[0,1]は不自然な形に分割され . . . 本文を読む

「バナッハ-タスルキーの逆理」に見る、人生の選択の難しさと人生の期待値

2025年04月25日 03時22分40秒 | 数学のお話
 ”ある男は分散攻撃という巧妙な戦術を思いついた。それは、滅多に人が踏み込まない地点に狙いを定めたのだが、不気味な荒涼たる谷間だった。ところが、まさに同一の戦術をビーバーが既に思いついていたし、選んだ地点も同じだった”(「ルイス・キャロル詩集」より) 「眠れぬ夜の確率論」の著者・原啓介氏は高校の頃に”人生には悩みは存在しない”との仮説を打ち立てる。社 . . . 本文を読む

数学は偶然の上に卵を生む(その5)〜ヤコブ・ベルヌーイの確率論と推測法

2025年04月20日 04時48分38秒 | 数学のお話
 前回「その4」では、”パスカルの賭け”を中心に述べましたが、39歳という短い生涯を”パスカルの原理”に基づくランダムネスの確率の計算に捧げただけでなく、確率論の中核をなす期待値の概念である”勝ち点問題”にも大きな影響を及ぼしました。 例えば、ワールドシリーズの7試合制での勝敗の不公平さや、少人数での閣議決定による誤謬と矛盾は . . . 本文を読む

眠れぬ夜のルベーグ積分論〜”積分論は難しい”と嘆く日本人へ(その5)

2025年04月10日 07時26分08秒 | 数学のお話
前回までのおさらい 前々回「その3」では、確率論と測度論(積分論)の関係について述べましたが、ルベーグ積分では測度を使って積分値が求まる為に”積分と測度は同じ概念”とも言える。 また、確率論とルベーグ積分論はどちらも測度論という分野に属するが、最後に確率と積分の違いを簡単に言えば、まず測度論では”集合の元の量を測る”訳だが、集合の元の量を&rdquo . . . 本文を読む

パスカルの賭けからベルヌーイの法則へ〜数学は偶然の上に卵を生む(その4)

2025年03月26日 16時00分36秒 | 数学のお話
 前回「その3」では、パスカルの”勝ち点問題”を中心に述べました。 そこで、前回までのおさらいを大まかにしますが、今日の統計学には欠かせない”標本空間”の考え方は、生まれつき根っからのギャンブラーであり、現役の医者で天才数学者でもあるカルダーノによってもたらされた。また、ガリレオは「サイコロゲームの考察」で”確率の事象”を詳細 . . . 本文を読む