象が転んだ

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脱炭素の行方(1)〜普通に真面目な温暖化のお話し

2023年03月12日 05時36分46秒 | ブログ系

 「脱炭素のウソと真実」でも書いたが、ロシア=ウクライナ戦争により(先進国の)CO2ゼロ計画は白紙に戻り、そのしわ寄せは途上国に及びつつある。やがてCO2の議論はCOPと共に腐っていく。
 温暖化問題のネーミングもCO2削減から脱炭素、カーボンゼロからカーボンニュートラルヘと迷走するばかりである。
 まともな議論に戻すには、個々の強欲や利得やビジネスを抜きにして話し合う必要がある。
 CO2問題も最初の頃はまともな議論が交わされてた筈だ。が、巨大なお金が動くビジネスと見るや(エセ環境活動家も含め)あらゆる人種が集まり、こうしたブラックな要素を払拭する為に(気の触れた)グレタ娘を起用した。が、どうやら税金を使い果たしただけの”空騒ぎ”に終わったようだ。
 そこで今日は20年近く前の学術記事の紹介ですが、あの頃は(普通に)まともな議論が交わされてたんだなと感心します。

 地球の様々な生命の営みは炭素の循環によって支えられている。だが産業革命以降、人間による様々な活動が著しく進展した結果、自然界における炭素循環のバランスが崩れつつある。その大きな影響の一つが二酸化炭素による地球の温暖化だ。
 地球温暖化が深刻な問題になってた21世紀初めにしては、マサチューセッツ州の森のCO2濃度は思いのほか低く(360ppm前後で)、世界の平均より10ppm低いのは木々のお陰だ。つまり、太陽の光を浴びた木々はCO2を吸収し、成長の糧にする。
 因みに、150ppmを切れば植物は育たず、全生物は滅びる事が判っている。つまり、CO2濃度の数値もそうだが、バランスも重要なのだろう。
 森の一角に生育する木々は自らの栄養分を作る過程で、人間が引き起こした地球規模の変化をほんの少し元に戻している。車のエンジンをかける、照明のスイッチを入れる、エアコンの温度設定を上げる。その度に私たちは大気中のCO2濃度を上昇させてきた。
 工業国の経済を支えてきた石炭と石油や天然ガスは、何億年も前に植物が吸収した炭素を含む。その炭素が今、煙突や自動車のマフラーから大気に戻っている。これは貧しい国々でも同様である。

 以下、(2004年と)古い記事ですが「地球からの警鐘:炭素の行方」から一部抜粋です。


消えた炭素の行方

 温室効果をもたらすCO2により温暖化が既に起きてる事を疑う科学者はそうはいない。氷河が解け、地球の平均気温が着実に上昇し、もっと深刻な状況になっててもおかしくはない。
 人間が排出する炭素は年間80億トンで、65億トンが化石燃料から、残り15億トンが森林破壊に伴うもの。だが、大気中に残留し温暖化を引き起こすのは、その半分にも満たない32億トン。残りの炭素はどこに消えたのだろうか。
 ”まさしく大きな謎”と、ハーバード大の大気科学者ウーフシーは言う。
 (彼の観測では)人間が招いた危機を、森林・草原・海が炭素の“貯蔵庫”になり、食い止めてるらしい。自然の貯蔵庫は私たちが排出する炭素のざっと半分を取り込み、大気中に炭素が蓄積するスピードを緩め、気候の変化を遅らせている。
 今の所、この働きはうまく機能してはいる。だが、この自然の営みがいつまで続くのか?はっきりは分からない。
 温暖化が更に進めば、森林や海が貯蔵庫から排出源となり、多くの炭素を大気中に出すようになるだろうか。こうした疑念を解明する為に研究者たちは“消えた炭素”を追跡する。

 夏の猛暑や年々激しくなる嵐、降雨パターンの変化や動植物の生息域の変化などは、温暖化がもたらすと思われる異変ではマシな方だ。21世紀末までに大気中のCO2濃度は更に200~600ppm上昇すると予想される。
 人間が排出した過剰なCO2の一部を自然が吸収しなくなれば、2050年より前に激しい変化が起こるだろう。温暖化の進行が速いと大災害を避けられない。
 因みに、”あらゆる恐ろしい異変が起きてもおかしくない。例えば、サンゴ礁が消滅し、砂漠が広がり、海流の流れが変わり・・・世界の他の地域は気温が上がり続ける”とプリンストン大学の生態学者S・パカラは予測したが、(これに関しては)明確な科学的根拠がある訳でもないとされる。

 だが、炭素の貯蔵庫が機能し続けるか、吸収量が更に増えるような事があれば、数十年の猶予を与えられ、世界経済は化石燃料への依存から脱却できるかもしれない。
 一方で、自然の炭素貯蔵庫の解明が進めば、貯蔵能力を高められるし、”人工の貯蔵庫をつくって脅威を封じ込める事も夢ではない”と考える科学者もいる。
 しかし、肝心の”化石燃料からの脱却”はプーチンの戦争により白紙に戻ってしまった。
 こうした希望や不安の背景にあるのが、自然の循環で(私たちの呼吸と同じく現実に起きている事だが)ウーフシーが測定する数値の様に掴みどころがない。

 地球は巨大なガラス瓶の様なもので、一年に何百億トンもの炭素が陸地と大気を行き来している。生物の呼吸や腐敗で放出された炭素は緑の植物に吸収される。海の中でも同様な炭素のやりとりがあり、1000億トン近い炭素が海と大気の間を循環している。
 この様に膨大な自然のガス交換に比べれば、人間が毎年排出する数十億トンの炭素など取るに足りないように見える。しかし、僅かな重みでバランスが崩れる様に、人間の排出は着々と自然のサイクルを狂わせている。事実、大気中のCO2濃度はここ50年程で約30 %上昇した。
 一方で、濃度上昇がこの程度で済んでいるのはなぜか。
 ピーター・タンズらのチームは、世界数十カ所の観測地点で大気のサンプルを集め、CO2濃度の僅かなばらつきを調べている。
 例えば、世界の大都市や工場の多くが集中する北半球ではCO2濃度も高いは筈だが、定点観測によると予想ほどには南北の差は大きくない。つまり、”北半球には非常に大きな炭素の貯蔵庫がある”という。


巨大な貯蔵庫

 海も陸上の植物も大気からCO2を取り込む点は同じだが、残る痕跡は違う。
 植物はCO2を取り込む時に酸素を出すので吸収量に応じて酸素の量が増える。が、CO2が海に溶ける時は大気中の酸素が増える事はない。
 また、植物がCO2を取り込むと残った大気の組成が変わる。植物がよく吸収するのは炭素の同位体の中でも比較的軽い炭素12で、炭素13を含んだCO2が大気中に多く残る。
 だが海はこうしたふるい分けをしないので、炭素12と炭素13の比率は変わらない。
 こうした手がかりから、“消えた炭素のほぼ半分(に当たる20億トン)は海に溶けてる”とタンズらは推測する。

 一方で、北半球で貯蔵庫の役目をしてるのは陸上の植物で、1年に平均20億トン余りの炭素を取り込む。 
 ウーフシーが観測する森林ではCO2の吸収量は、あらゆる要因により目まぐるしく変化する。でも、10年余りの観測データを見る限り、ハーバードの森は大気から多くの炭素を取り込んでいる。
 樹木の成長度合いや地面付近の環境を調べれば、森林の炭素吸収を確認できる。観測の結果、この森は面積1ha当り年間約2トンの炭素を取り込み、細やかながら温暖化の進行を遅らせてきた。
 ”東部の森林は多くが樹齢40~60年で、まだ成長中なのです”
 アメリカでは農地を開拓する為に、広大な森林が切り開かれたが、20世紀の初めに農業の中心地が西部の大草原地帯に移ると、放棄された土地に森が蘇った。まだ樹齢の低い木々はより高く太い大木に育ち、(光合成により)炭素が閉じ込められる。

 ハワイとアラスカを除く米国の48州では、森林や低木林が吸収する炭素量は年間5億トンとされ、米国の車と工場が排出する量の1/3以上が相殺される事になる。これは、京都議定書で定められた排出削減の目標値の4倍以上に当たる。
 故に、北半球で吸収される炭素の総量から米国の5億トンを引くと、15億トン余りが残る。
 ”熱帯雨林やアラスカやカナダの広大な針葉樹林などの成熟した森林は大して貢献していない。呼吸で吐き出すCO2以上に、成長の為にCO2を吸収する事はないからだ。だが、欧州の人工林や中国で新たに植林された森林、何十年もの伐採の後に再び成長し始めたシベリアの森林が、合わせて5億トンを吸収している”と、研究者たちはみている。


森林の枯死と永久凍土の溶解

 1900年以降、世界全体で気温が0.6℃上昇したが、アラスカの一部地域では3℃も上昇している。これら温暖化のお陰で、この20年間で北半球の高緯度地方で植物がより豊かに茂り、成長期も長くなった。
 皮肉にも、温暖化そのものが炭素を吸収する木々の生育を促し、温暖化の進行を妨げてるのだ。が、その効果を帳消しにする気がかりな兆候もある。
 北の生態系は近い将来(高緯度地方の温度がさらに上がれば)、”正のフィードバック”(温暖化によって大気中に放出されるCO2が増え、更に温度が上がる)と呼ばれる現象が引き起こされる恐れがある。

 事実、アンカレジ近くのキーナイ半島では、90年代初めから針葉樹にとりつく害虫キクイムシが大発生し、80万ヘクタール余りのトウヒ林が枯れた。”これだけの規模の大発生は過去250年間で一度もなかった”とされる。
 広大な立ち枯れの森はやがて腐り、森林火事が起きれば、炭素を大気中に放出する。これも気温の上昇が元凶だと予想される。
 つまり、気温が上がると害虫の生活サイクルが速まり、越冬できる確率が高まって害虫がはびこる。また高緯度地方の木々は気温の上昇で抵抗力が衰え、害虫にやられ易くなる。
 更に、樹齢の高い森も温暖化による水不足でストレスを受ける。
 このままでは極北の森林の将来は危うく、ある分析によると、気候変動モデルが予測するペースでアラスカの気温が上昇し続ければ、2090年までに”カナダトウヒの成長は止まる”という。そうなれば、北の大地に広がる針葉樹の森は姿を消し、老木が一斉に枯れて腐れば、大量のCO2が大気中に放出される。

 一方で、この高緯度の多くの地域で永久凍土が解けて炭素を放出するというケースも目立つ。この永久凍土に閉じこめられた炭素は、高緯度地方全体で推定2000億トン。何千年も続いた寒冷な気候がそれだけの炭素を封じ込めてきた。それが今では”巨大な時限爆弾”になろうとしてる。
 タンズによれば、”北極圏の永久凍土が解けて干上がれば、結果的に大気中のCO2濃度は100ppm上昇し、現在と比べ25%増える恐れがある”と。
 しかし、こうした驚異に対し、何か救いはないのだろうか。
 炭素が増えると温帯や熱帯の植物の成長が盛んになり、CO2の上昇が抑えられると多くの科学者は考えていた。
 事実、CO2を多く含んだ空気中で植物は盛んに成長する。自然界でも大気中のCO2が増えれば植物の成長も活発になり、茎や幹や根に炭素が大量に蓄えられ、大気中の蓄積が抑えられる筈だ。
 だが、そうも行かないらしい。7年前に始めた実験では、高濃度CO2の効果で2年ほどは盛んに成長したが、その後の勢いは衰え、元に戻ったという。
 殆どの植物は、窒素やその他の栄養分も余分に摂取しないと高濃度のCO2の恩恵を受けられない事が解っている。
 再生林は大量のCO2を吸収してくれるが、陸上の貯蔵庫の吸収量が大きく増える事はない。つまり、若い木々が成熟すれば、陸上の貯蔵庫はやがて“満杯”になる。
 ”100年程でこの貯蔵庫はなくなると思った方ががいい”とプリンストン大学のパカラは警告する。

 少し長くなったので、ここまでにします。
 消えた炭素は、森林と海が巨大な貯蔵庫となり、温暖化を何とか阻止してきました。
 しかし何でもそうだが、限界がある。
 後半では、海の貯蔵庫としての限界と炭素貯蔵の新たなる模索について書きたいと思います。



4 コメント

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象が転んだ様へ。 (りくすけ)
2023-03-12 09:26:53
お邪魔します。

>20年ほど前は普通にまともな議論が交わされていた。
確かにその通りですね。
それに比べ思惑とカネが絡み合った今は、
事の本質すら見えなくなっている。
貴兄今投稿を拝読して納得しました。
続篇、楽しみにしています。

では、また。
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りくすけサン (象が転んだ)
2023-03-12 11:52:24
いつもコメント有り難うです。

言われる通り
思惑とカネが絡むと、議論も一気に腐り果てますよね。
20年前の記事ですが、書いてて私も普通に納得でした。
それに比べ、昨今の温暖化論は明らかにウケ狙いでウンザリです。
COPでは改めて、温暖化問題の本質を普通に議論する必要があると思います。
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Unknown (1948219suisen)
2023-03-12 12:06:43
すごく勉強になりました。

こういう壮大なテーマを書いてもらうと、日常の些末な問題は雲散霧消します。

が、例の少女が顔を歪めて叫ぶと考えるより前に思考が停止してしまいます。あの少女の叫びは、温暖化問題に対して害あって益なしです。

後編も楽しみに待たせていただきます。
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ビコさん (象が転んだ)
2023-03-12 14:32:15
お褒め頂きまして恐縮です。

グレタ女のキチガイじみた喚きなんか、偉大なる自然の営みに比べたら、塵みたいなもんです。
言われる通り
思考が停止したバカ女の叫びは、使用済み核燃料と同じで百害あって一利なしですよね。

いつもコメント有り難うです。
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