NHKは一番人気の男子バレーの生中継を数多く放送し、”若者離れ”が進む五輪視聴率の平均値を押し上げたとされる。
だが”若者”をTVの前に釘付けにするまでには至らなかった。
但し、今回のパリ五輪で日本が獲得した金メダルは20個と過去最多を記録した前回の東京五輪の27個に次ぐ歴史的な快挙となった。これはアメリカや中国(共に40個)に次ぐ堂々の3位で、開催国フランスですら16個だから、今や日本はオリンピック大国とも言える。
勿論、オリンピックがもはや国民的行事にはなり得なくなったとの”皮肉”な裏返しとも取れるが、少なくとも前回の東京五輪よりかは、”国民的”に盛り上がったのは言うまでもない。
因みに、人気だけを見れば、男子バレーの準々決勝イタリア戦がトップで平均世帯視聴率(NHK)23.1%。圧倒的な脚力を誇るアフリカ勢の中で、6位入賞と孤軍奮闘した女子マラソンが18.7%(同)を記録し、競技全体の2位に食い込んだ。一方で、閉会式は0.1%(開会式は10%前後)だったというから、やるだけ無駄って事だろうか。
柔道、レスリング、体操といった伝統のお家芸でメダルを量産し、フェンシング、飛び込み(水泳)、馬術、ブレイキンといった普段は馴染みのない競技でも、日本勢の活躍が印象に残った。一方で、時差が8時間と深夜から早朝に集中した生中継に、視聴者はどの様に五輪を楽しんだのか・・
前回(東京五輪)に次ぐメダルラッシュで、TVに釘付けになった人も少なくなかったろう。五輪には理解のない私も、深夜の生中継に見入ってしまった1人である。が、五輪中継の視聴パターンを分析すると、TV局間や競技間で明暗が生まれた。また、IOCによる若年層狙いの成否も浮かび上がる。
以下、「金20個でも"若者離れ"は避けられなかった・・・」より大まかに纏めます。
”若者離れ”が止まらない
夏季五輪史上初のスタジアムの外で開会式が行われたパリ五輪。評価は分かれる部分もあるが、街全体というキャンバスに光と色、そして歴史と芸術で彩った演出は、フランスらしくもあった。少なくとも、東京五輪の開会式とは雲泥の差だ。
開会式は、NHKが午前2時台から生中継し、TV朝日は直後の朝8時から伝えた。
結果は、深夜早朝のNHK生中継の個人平均視聴率は、朝8時からのテレ朝の半分程に留まった。つまり、睡眠を削ってまで生の開会式を見ようとは思わなかったのだろう。
但し、あくまで平均であり、データを詳しく分析すると、65歳以上を除き、男性が女性を上回った。結果で言えば、男たちは生放送の為に起き、女たちはマイペースで録画を楽しんだとなる。更に年齢別でば、若い程に生中継に拘り、年配ほど無理をしなくなる。
一方で、”関心のあり方”による差も顕著であった。”スポーツに関心あり”層は生中継派が多く、”ダンスに関心あり”層は前者の平均を上回った。加えて”国際問題に関心あり”層が気を吐き、200カ国以上および難民選手団が参加する開会式には、生中継に拘ったようだ。
次に、GP帯(夜7~11時)放送の個人視聴率を比較すると、NHKの(同)平均が6%弱と他局を大きく引き離した。2位はNHKの3/4に留まったTBSで、3位は7割強のTV朝日。4位がTV東京で6割強、ほぼ同じ割合で5位となったのが日本テレで、最下位はNHKの半分に及ばないフジだった。
NHKはバレーボールの生中継を多く放送し、視聴率全体を押し上げた。一方で、民放は1局あたりの中継が極端に少なく、ほぼ毎日交代で担当し、1局が期間中に生中継したのは数日に過ぎない。また、その少ない日数にどの競技を受け持ったかで明暗を分けた。
但し、年齢層別の各局数字(GP帯)を見ると微妙な問題が見え隠れする。確かにNHKはトップだったが、男女50歳以上では他局に大差をつけたが、49歳以下ではテレビ局間の差は大きくない。
例えば、NHKの半分に及ばなかったフジだが、コア層(男女13~49歳)では、両局の差は6割に縮み、19歳以下では7割となる。つまり、オリンピックは中高年のもので、若年層ほど関心が薄れた。
これに対し、IOCは若者対策に力を入れ、スケボー・BMX・ブレイキンなど新競技を正式種目に組み込んだが、TV同様に五輪にも”若者離れ”の波が押し寄せている。
各局分担金の仕組みとその限界
オリンピックは特殊な仕組みで放送されているが、NHKと民放連で作るJC(ジャパンコンソーシアム)が、夏冬の大会をセットで放映権を購入する。
今回の放映権額は、22年の北京冬季五輪とパリ夏季五輪の組合せで440億円に上った。これをNHK7割、民放3割で分担し、民放の3割は東京キー5局で分担するので、1局辺りだとNHKの1/10にも満たない。
つまり、これが生中継に如実に表れるのだ。NHKは放送が毎日あり、しかも人気競技の中継が多い。故に、好調な視聴率を維持出来る。が、7対3割合の分担金を反映した”くじ引き”で担当中継が決まる民放各局は、運次第で人気競技を扱えない。
例えば、今回最下位に沈んだフジは、人気競技がバスケット女子の第3戦くらいで、良い時間に放送したにも、個人視聴率2%前後に終わった枠が3つもあった。確かに、男子バスケもテレ朝が広瀬すずを起用し、人気挽回を狙ったがその効果には疑問が残る。
事実、五輪中継は毎回NHKの一人勝ちが続いているが、民放は高騰する放映権料に対し、視聴率は振るわない。結果、2012年のロンドン大会以降、赤字が続くという。それでもJCから降りられないのは、五輪という国民的イベントを放送するプライドの問題と、生中継以外のバラエティ番組などで五輪の映像が使えなくなるのは困るという事情からだ。
だが、視聴データから判断すれば、同システムは見直しが必要なのは明らかだろう。
一方で、個人視聴率(GP帯)の上位を見ると、ベスト5のうち4位までをバレーボールが占めた。球技の中でもゲーム展開がスリリングでテレビ向きであり、人気選手が活躍してる事、そして日本が熱戦を繰り広げた点が大きかった。他には柔道や卓球が気を吐き、柔道90kg級銀の村尾選手の準々決勝は個人視聴率5位、卓球男子団体3位決定戦は同6位だった。
つまり、知名度の高い選手が出場し、TV的な要素のある競技が上位に入る。
一方で、意外に低迷した競技もある。放送時間が深夜早朝となったが、期待通りにベスト4に進めなかった種目で、サッカー男女、バスケ男女などは残念な結果に終わった。
他方で明るい兆しもある。
IOCが若者対策として正式種目に組み込んだ競技が、目論見通り若者にリーチしていた点だ。例えば、大逆転で2連覇を果たした堀米雄斗のスケートボード男子ストリートは、個人視聴率では12位だったが、コア層では5位に食い込んだ。また個人視聴率では振るわなかったBMXリースタールは”スポーツ好き20代以下”の視聴率は5位に浮上し、含有率では”同60歳以上”を上回った。
つまり、オリンピックにはまだまだ新たな波を作り出す余地がある。だが一方で、テレビ局間の明暗の問題も残る。
長年続けてきたJCという慣習は、放映権の高騰と視聴率の低下という現実を前に見直す余地がある。
28年のロス五輪では、更なる新種目が登場する。TBSが長年放送してきた”SASUKE”が近代五種の中の馬術に代わって入る予定だ。
以上、PRESIDENTOnlineからでした。
最後に
パリ五輪自体は、非常に良く出来た大会だと思った。但し、日本のメディアの騒ぎ方やそのあり方には疑問も残る。
お笑い芸人やアイドル女優らがパリに列挙して押しかける(五輪中継では)毎度おなじみの)その光景には、ウンザリでもあった。
元金メダリストらの出演も、私には余計に思えた。的を得ないコメントも多く目立ち、二言目には”頑張れ”とか”諦めるな”と言った軍隊主義的精神論に終止する。
特に、内村航平(体操)の男子バスケット日仏戦後の発言には呆れた。特に、”ブーイングはフェアじゃない”とか”背が高いだけでセコい”とか、素人にしても無知の度が過ぎる。
(体操とは異なり)世界トップレヴェルの競技人口と人気を誇るプロスポーツの本質が判っちゃいない。つまり、4年に1度しか注目されないマイナーな競技である体操と、同じ視点で見てもらっては困るのだ。
ほぼ中国資本で製作された大会だったが、どうやらパリでもフランスでも、五輪はお祭りにはなっても、国民的行事にはなり得なかったようである。
惨憺たる閉会式を除き、大会自体は十分に盛り上がったとは思うが、放映権を稼ぐコンテンツになり得るかどうかは疑問が残る。
一方で、28年のロス五輪は史上初の3度目の開催となるが、派手なお飾りだけで薄っぺらな舞台になるのは目に見えている。
今や、時代も若者もオリンピックという安っぽい舞台を必要とはしない。そんな視点でオリンピックのあり方を考え直す方が得策にも思える。
即ち、オリンピックが舞台装置である必要はどこにもない。既に、過去の産物になってしまったアスリートの祭典に、我らが望むものはありそうにもない。
若者が見ないオリンピックから誰も見ないオリンピックヘ・・・それでも”悲しすぎた”オリンピックよりかはマシだったかもしれない。
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