もしアナタが信頼してる世界的権威のあるお医者さんから、”老いは病気である”といきなり言われたら?
アナタはどう応えるだろうか?
”そういうアンタこそ、病気じゃないのか?”って言える人は、相当な現実主義者で頭のいい人かもしれない。
”えええぇ〜本当なの?目からウロコで〜す”と驚いた人は、3000円近く出して「ライフスパン(老いなき世界)」を買い、老いをストップさせる?という”長寿サプリ”を数千円出して飲む方がいい。
万が一、120歳まで生き延びれたら、それこそ安い買い物だろう。
もし、若く健康でいられる時期を長くできたらどうだろうか?幾つになっても、若い体や心のままで・・・あなたの人生はどう変わるだろうか?
ハーバード医学大学院で遺伝学の教授を務め、長寿研究の第一人者であるデビッド・A・シンクレア氏は、その様な世界がすぐそこまで迫ってる事を示す。
本書では、なぜ老化という現象が生物に備わったのか?を”老化の情報理論”で説明し、どのようにして老化を治療すべきか?を最先端の科学的知見を元に提示する。
私たちは寿命を延ばすと共に、元気でいられる期間を長くする事もできる。”老化遺伝子”が存在しない様に、老化は避けて通れないと定めた生物学の法則など存在しない。
生活習慣を変える事で”長寿遺伝子”を働かせ、長寿効果をもたらす薬(サプリ)を摂取する事で老化を遅らせ、・・・老化のリセットスイッチを利用し、若返る事さえも可能となるだろう(Amazon)。
カルト的長寿論
アマゾンで紹介されてるこの序文を読んだだけで、少しアホ臭となった。
”世界の100人”もここまで堕ちると、同情すら覚えてくる。
このオーストラリア生まれのお偉いオッサンは、ただ単に生物学を否定し、遺伝子学を担いでるだけじゃないのだろうか。
”老化遺伝子”とか”長寿遺伝子”とか”長寿薬”とか、まるで新規のカルト理論みたいで、人を騙すにはもう少し言い方があるだろうと、憐れみさえ感じてしまう。
更にこのオッサンは、”寿命が延びても、人口は急激に増加しない。また、人口が増加しても科学技術の発達により、人類は地球環境を破壊せずに、更なる発展を目指す事ができる”と吠えてるではないか。
但し、1093件のレビューのうち60%近くが5つ星で、平均は4つ星を超えるから、不特定多数の凡人の興味や好奇心を引いてるのも確かではある。
しかし、だ。大体において、真の評価とは星の数よりもその内容にある。
特に、我ら浅学非才の民は専門用語に弱いから、こうした(500頁にも及ぶ)分厚い専門書を評価できる日本人は1%もいるだろうか?多分、殆どの日本人は500頁と聞いただけで尻込みするだろう。
それでも5つ星を与えた60%の人種って、内容がキチンと理解できたんだろうか?それとも殆ど読む事なく、”いいね”を押したんだろうか?
そこで、敢えて星の少ないレビューを眺めてみる。そこには意外な本質が見え隠れしている様に思えたからだ。
利己的で権威主義的な疑惑付き健康本
”人間だけが化け物の様に長生きする事に固執し、生体の自然なサイクルを乱して平気なのか?新しい産声をあげた子供の為にも古い世代は自然消滅するのが自然の摂理ではないか。
これは保守的とか革新的の問題ではなく
道徳の問題だ。国の借金も増え続け、若者の税金負担も重くのしかかる。ただ新しい発見だからと飛びつくのは愚かであり、それは革新ではなく利己的な発想である”
”複雑な専門用語がたくさん出てきて・・・圧倒的多数の人間が理解できないのではないか?という疑問がある以上、この書を読むことは勧めない。
難しい表現を用いる人は頭が悪く、自分の学を表す事に重点を置くあまり、敢えて難しく書く。本当に頭のいい人は読む人の事を考えて誰にでもわかる様に、時には幼稚でユーモラスな表現を使って書く。
著者は何を伝えたいのか?何を目的にしているのか?私には疑問に思える。老いる事に不安を感じたり、恐怖感を覚える人に希望の光を与えるものには到底思えなかった。
権威主義的色彩が強い人の主張には懐疑を持った方がいい”
”結局、書かれている事は研究段階であり、人類が老いなき身体を手に入れる為の方法が確立された訳ではない。また、老いなき世界を実現するべきだと主張する根拠も、納得できる形で述べられてる箇所はなかった。
崇高な人間は死ぬ事ををいとわない。野卑で肉欲的で世俗的な人間は皆、用もないのに長生きしたがる。そうなれば、世の中は生存の価値のない者ばかりになり、この世はまるで汚水溜めじゃないか”
”<ヘイフリック限界>を知ってたら、本書の主張が間違いな事が分かる。また、高額なNMNサプリの宣伝とも見える。
NMNサプリを飲むと、細胞がヘイフリック限界を超える事が出来るのだろうか?だとすれば、ノーベル賞級の業績であるが、間違っているのは明白だ”
”老いを病気と受け止め、若かりし頃に単細胞生物で確信した理論を、多細胞生物に当てはめていく過程に数十年の時を費やしたとは思えないほどに、提示される成果の多くは研究途上の未完成で、実績と述べるには拙速に過ぎる。巷の健康書の域を出ないし、そもそも経口摂取で多少の老化防止成分を摂取した所で、頭の先から足の先までの何兆という細胞が老化していくのを、どれだけ押し留められるのだろうか?”
老いとは?
”老いとは、遺伝子のコピーを繰り返す度に起きる劣化(コピーミス)である”という言を聞いた事がある。
人間の細胞は、常に入れ替わっており、昨日の私は今日の私とは違う。細胞の入替わりは頻繁に起こってるが、当然寿命が長ければ長いほど、遺伝子コピーのミス(の可能性)は高くなる。
この時、普通ならDNAの修復機能が働く訳だが、これが異常をきたす”コケイン症候群”という病気が存在する。老化が加速し、殆どが20まで生きるのが不可能とされるとても稀な病気である。
人体には60兆もの細胞が一時も休まず壊れては作り、という”神秘の作業”を続けている。つまり、遺伝子が正常にコピーされ、五体満足でいる事の方が奇跡なのである。
分子生物学者の福岡伸一氏は”生命とは何か?”というテーマに対し、以下の様に語っている。
DNAの2重らせん構造の発見に始まった20世紀の生命科学は、この問いに”自己複製するシステム”と答えた。
でも私は、この利己的遺伝子の考え方はもはや古いと思う。彼らは生命を一側面からしか見ていない。生命が生命たる特性は、生命の内側のもっと深い所にある。
生命は利己的に見えて、利己的ではない。
生物は互いに他を支えつつ、律している。つまり利他的で相補的だ。
絶え間ない物質・エネルギー・情報の交換。それは自らを壊しつつ、創り変える事でなされている。
自らを壊す事は、エントロピー(乱雑さ)増大の法則に対抗する為に、生命が進化の出発点で選び取ったたった1つの方法だ。
生命の生命たる所以はここにある。
生命とは何か?
そう問われたら、私は”動的平衡”であると答えたい。相補性を維持しつつ、分解と合成を繰り返し、危ういバランスを保つこと。
かくして動的平衡は、私の生命論のキーワードとなった(「動的平衡」宣言)。
最後に〜ホルマリン漬けの老人
こうした福岡氏の言葉を借りれば、老いも同じ様に、”エントロピー増大”の法則に従い、”動的平衡”に従うという事になる。
つまり、「老いなき世界」というのはあまりにも利己的で、”生命を(その利己的という)一側面からしか見ていない”という事になる。
エントロピー増大の法則とは(簡単にいえば)、”物事は放っておくと乱雑・無秩序・複雑な方向に向かい、自発的に元に戻る事はない”ということ。一方で動的平衡とは、生命の持つ柔らかさや可変性、そして全体としてのバランスを保つ機能の事である。
故に生命は、エントロピー増大の法則を先回りし、自らをあえて壊し、作り変えるという自転車操業を続け、(動的平衡により)生物はその生命を維持する事ができる。
結局、老化とはその過程で起きる劣化であり、遅らせる事は出来ても、なくす事は不可能である。
私たちの身体は分子の(それもほんの一瞬の)”淀み”でしかない。つまり、我々の生命は”分子の流れ”の中にこそあり、留まる事なく流れ続け、危ういバランスの上にある。その生命のあり方こそが”動的平衡”である。
言い換えれば、老化とは生き延びる過程で積み重なった”歪み”(いや濁り)とも言える。その歪みを修正する事は可能だが、なくす事は不可能だろう。
一方で、シンクレア氏は(愚かにも)老化を単純に情報として捉え、長寿遺伝子や長寿サプリまでをも引っ張り出しては、老化を死滅させようと血眼になる。そこには、明白なビジョンというよりは、権威主義的強欲しか(悲しいかな)見えてこない。
老化はあらゆる生命体に与えられた特権でもある。それを無視しては、生命の神秘すら説明できないだろう。
発酵も老化と考えれば、シンクレア氏が主張する「老いなき世界」とは、(無残にも)ホルマリン漬けされた”永遠に腐らない”死んだ老人の事を指すのであろうか?
ここまで届きそうだけど
権威主義も
ここまで来ると暴力だ
生き物は歳をとるから
進化するとも言えるし
老化は悪い事ばかりでもない
と思うんですが
結論から言えば、転んだサンの言うコピーの劣化なんですよね。
細胞は50〜60回分裂するともうそれ以上分裂しなくなる。
つまり生物の体を構成する細胞にはテロメアの短縮と呼ばれる限界(寿命)があり、ある回数以上は分裂できない。すなわち細胞には寿命があるってことだね。
以上余計な補足ってことで
老化も同様ですよね。
進化のダイナミクスという点で見ても
シンクレアの主張はおかしい、いやクレイジーと思うんです。
結局、科学が権威と結び付くと、こうしたカルト系学術誌が跋扈するんですよね。
私も速攻で調べました。
細胞が一定回数以上分裂できない理由として、染色体の”テロメアの短縮”という現象がある。染色体DNAの末端部はテロメアと呼ぶTTAGGGという塩基配列で構成され、テロメアは染色体の構造を安定化するなどの役割をもつ。
細胞分裂にてDNAが複製(コピー)される度に、テロメアの配列部分が50~100塩基ずつ短くなる。細胞分裂が繰り返され、テロメアがある限度を超えて短くなると、染色体の構造が不安定になり、DNA配列が削れてしまう。結果、細胞はそれ以上分裂できなくなる。
結局、シンクレアのオッサンが言ってるのは、テロメアの減少をサプリで無くすって事ですよね。ウーン、どうなんだろ?何兆もの細胞群にどうやって作用させるのか?それも問題だけど・・・
偉そうに、こちらも補足でした。
こちらこそ有り難うです。
分厚い化粧とCGでゴマカしてんですよ。
或いは、無理矢理シリコン詰め込むか。
特にCGの進化は恐ろしい程で、ハリウッドでもよく使われる技法ですよね。
多分、スッピンになれば同年の一般女性よりかは明らかに劣化してる筈です。
これも単なる寿命の引き伸ばしに思えてくる。
結局、寝たきりの時間が大きく伸びるだけで、医療を圧迫し、国家の大きな負担になる。
現役ならともかく、死を待つ時間だけが伸びるというのも考えものだけど。
シンクレア氏は不老長寿を本気で夢見るエゴイストなんだろうな。権威主義もここまで来るとボケ老人の戯言のようにも思えるんだが。
結局は歪みきった近未来の超高齢化社会なんですよ。
それに、120年も生きられたら人類は崩壊するでしょうか。
そういう事も含め、インチキに近い専門書という事で、でもそこまでしないと売れない出版業界も深刻ですよね。