世の中は、実体のないものが大手を振るってはびこり、まるですべてを支配している雰囲気さえあります。
人材派遣業のP社は、かつて大学の先生から経済担当の大臣として引き抜かれたTさんの会社だったと思われますが、実体はないのに、いろんなところに入り込んで、仕事の現場は人間が必要なのはだれでもわかっているのに、現場と人間を切り離し、いつでもただのパーツとして人間を入れ込むという、まるでゲームか何かみたいに人間を入れたり出したりしています。働くのは人間なのに、儲かるのは会社ばかりで、よくぞそんな冷酷なシステムを考えたなあと思っていましたが、会社・企業は繁栄したかもしれないけれど、仕事をする人々は自分のやりがいを失ったままです。
お金さえ手に入ったら、文句はないだろうと、会社の幹部は上手にだましたことでしょう。どんなにお金が入ったとしても(実収入はその人の働いた分のどれだけだったんだろう? 半分くらい?)、人はそんなに簡単なものではなくて、あれやこれやと自分の仕事に愛着を持つ生き物でした。
自分の通った道、自分の仕事をした現場、そこで出会った人々、自分が作れたもの、世の中にどれくらいそれが受け入れられたのか、当時の日ざしや風、当時食べたもの、当時の自分の体調、いろんなつまらないことを記憶し、その費やした時間が何か意味があったのではないか、あれが自分の生きていた瞬間ではないのかと思ってしまうのです。
けれども、非情なシステムは、人間を引きはがし、新しい現場に放り込むし、不必要とあれば次から次とクビにしてしまう。かくして人間は消耗物資になり替わってしまった。どんなに思い入れをしても、そんなのは意味のないことでした。「お前の代わりはいくらでもいるし、会社が気に入らない。生きがいが欲しいというのであれば、どこかお前が自己開拓して、自分の道を自分で見つけろ」と突き放すはずです。
そんな実体のない会社だったはずなのに、公の仕事をほとんど請け負い、本来は公共の奉仕者であるべき公務員も切り捨てられることになりました。関西の一地方の選挙民のみなさんたちは、「ザマーミロ、お前らは必要ない」と、公務員の専門性を無意味なものとして捨て去りました。
人材派遣会社がここでも入り込んだはずです。たくさん儲けて、とうとう万博にパビリオンを設置することになったそうです。ここでも自分のところに損がないように上手に立ち回ったことでしょう。どんな展示をするのでしょう?
いかに人間をこき使い、いかに会社は儲けたらいいのかというありきたりの経済論理の展示でしょうか? まさか、そんなことはないですね。人がいかに自らの可能性を伸ばし、自由に生きていくのか。人と未来、みたいな理屈を作り上げるんでしょう。
わざとらしい理屈は要らない。もっと、お金のかからない、ホッとするような空間に行きたい。どうしてそんな汲み取り式のトイレしかない、地盤の緩い、ガス爆発が起こるかもしれない、カジノのための地ならし整備の土地に行くのでしょう。ただではないのに、それでもお金を取るの?
そりゃもう、地盤の緩い土地を作るにも、いろいろと内輪でお金を税金つかって作りましたからね。それを回収するため、いろんな作戦を考えますよ。ただで招待する子どもたちの分のお金は、バス会社やら、駐車場代などをふっかければ、すぐにトントンになりますよ。頭は使える時に使わなくちゃ! ここは世知辛い土地なんですから。ビンボーな国の最先端の貧しい土地なんですから。
私たちは、元手はないけど(ワル?)知恵はありますからね。空っぽのものから金を生み出す錬金術師なんですよ。これぞ虚業なのです。知恵が勝負なのです。バカどもから金を集めるのなんて簡単です。やつらが残業したり、休日出勤した分をすべて私どもで集めさせてもらいます。ご夫婦でお仕事を朝から晩までしてもらって、私どものパビリオンでは夢を見てもらえば、それで虚業のサステナブル、空虚の連環です。すごいでしょ。バカどもはコツコツ働けばいいんだよ。
なんて、悪魔の声がします。どうして世の中は、そんな人たちだけが儲けて、真面目にコツコツ働く人たちが日の目を見ないようになっているのか。私は信じられません。でも、世界を見れば、ぼろい商売をしている人はたくさんです。商売の果てに大統領の地位まで奪おうという人さえいます。世の中ひどすぎるじゃないですか。酷使・搾取されてる人たちが、あんな犯罪人をトップにしてあげようだなんて、これは情報操作なんだろうか。
誰か、この悪い流れを止めてくれる人はいないものか。虚業は実に華麗で、理屈の城に入り込み、完璧に守られているのです。とてもコツコツ働く者たちが勝てる相手ではありません。ああ、いつまでこんな貧しいことが続くんだろうね。