甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

菅笠日記19 発心門から蔵王堂です!

2019年03月30日 05時53分45秒 | 宣長さんの旅

 よそよりもワンテンポ遅れる吉野のお山ですけど、サクラは盛りを過ぎていました。まあ、だからどうこうということはありません。一本の有名な木を見たいわけじゃなくて、全体でサクラを見たいんだから、盛りを過ぎていたとしたら、そういう全体を感じればいいわけです。


 なほこゝにてくはしくとひきけば。この二月(きさらぎ)のつごもりがた。いとあたゝかなりしけにや。例の年のほどよりも。ことしはいとはやく咲き出で侍(はべ)りつるを。いにし三日四日ばかりや。さかりとはまうすべかりけん。そも雨しげく。風ふきなどせし程に。まことに盛りと申しつべきころも侍らぬやうにてなん。うつろひ侍りにし。

 こちらの人に、サクラはいつ頃が盛りだったのかというのを訊ねてみたのです。

 そうすると、土地の人は、
 「二月の終わりごろはとても温かだったんです。いつもの年よりも少しだけね。

 それで、サクラもいつもより少し早く咲き始めまして、この三、四日前が花の盛りというような感じでございました。

 それから雨もたくさん降って、風も吹いて、本当の花の盛りみたいなのがない感じで、サクラは終わろうとしているのでございます。


 とかたるをきけば。そのとしどしの寒さぬるさにしたがひて。おそくもとくもあることにて。かならずそのほどと。かねてはこの里人も。えさだめぬわざにぞ有りける。

  うしとらの方に。御舟(みふね)山といふ山見えたり。【萬葉に「瀧のうへの御船の山】されどその山は。瀧のうへのとよみたれば。このちかき所などにあるべくも覚えず。これも例のなき名なるべし。

 というふうに教えてもらいました。その年その年によって、寒さや温かさに従い、サクラも遅くなったり早くなったりすることなのです。吉野のサクラは必ずいつ頃と、土地の人だって決められないものではあるようです。

 私が今いるところからは、牛寅(北西)の方角に(吉野のお山の反対側)には御舟山というのが見えます。

 万葉集の中に、「瀧の上の御船の山……」と詠んだ歌がありましたが、そこでは瀧の上とありましたから、この近くではないようです。これもいつもの私の早とちりなんでしょう。

 でも、よく似た名前は、たくさんあるものです。


 こゝはよし野の里にいる口にて。これよりは。町屋たちつゞけり。二三町ばかりゆきて。石の階(はし)をすこしのぼりたる所に。いと大きなる銅(あかがね)の鳥居たてり。発心門(ほっしんもん)としるせる額(がく)は。弘法大師の手なりとぞ。

 いよいよ吉野の入口にたどり着きました。ここからは町家が山の斜面に沿いながらずっと続いているようです。数百メートルほど歩いて、石の階段を上ったところに大きな銅色の鳥居が立っています。

 金峯山寺(きんぷせんじ)の境内を示す門のようで、扁額には「発心門」とあります。この字は弘法大師様が書かれたということでした。

 さて、有り難い世界に入ってきました。私にも仏さまにお近づきになるチャンス到来です。


 また二町ばかりありて。石の階(はし)のうへに。二王(におう)のたてる門あり。このわたりにも桜有りて。さかりなるもおほく見ゆ。かのみふね山。こゝよりは。むかひにちかく見えたり。

 まづやどりをとらんとて。蔵王堂(ざおうどう)にはまゐらですぎゆく。堂はあなたにむかひたれば。かの門は。うしろの方にぞたてりける。

  そのあたりに。きよげなる家たづねて。宿をさだめて。まづしばしうちやすみ。物くひなどして。けふ明日(あす)の事どもかたらひ。道しるべすべきものやとひて。まづちかき所々を見めぐらんとて。いでたつ。

 それからもうしばらく進むと、石の階段の上に仁王さんが立っておられる門がありました。ここらあたりにもサクラはあって、花の盛りである木もいくつかあります。先ほど見えた御舟山もすぐそこにあるように見えます。

 ひとまず、今夜のお宿を決めなくてはならず、蔵王堂にはお参りしないで、蔵王堂と違う方角に来てみたら、仁王さんの入る門が後ろにありました。

 たくさんある宿坊の、こぎれいなところをと探して、中でしばらく休憩し、おまんじゅうなどを食べさせてもらい、これからの予定をみんなで話し合い、どんなところをめぐりたいか確認して、荷物は置いて、お宿の近くを散歩することにしてみました。


 とうとう吉野のど真ん中へやってきました。ここでどんな出会いがあるのか、どんなことが起こるのか、そんなにドラマチックなことは起こらないでしょうけど、とりあえずここまで来たという達成感はあったでしょうか。



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