ピーテル・ブリューゲル(子)『東方三博士の礼拝』が載った案内チラシ
ピーテル・ブリューゲル(子)『フランドルの村』
岡崎市美術博物館で開かれている「ブリューゲルとバロックの巨匠」展へ。同市制100周年と同館20周年の記念展。以前、ヨーロッパへの旅行で見かけた絵にも出会うこともできました。会期は11月27日(日)まで。
ブリューゲルといえば、現在のベルギーやオランダなどにまたがるネーデルラント地方で、5代にもわたって画家を輩出したという家系で知られます。だから、力を付けるために父や祖父の作品を真似て描いたり、ファーストネームも同じといったケースもあって、いささかややこしい鑑賞になるのは仕方がないですね。
今回展の「ブリューゲル」は『雪中の狩人』などで知られる初代の「ピーテル・ブリューゲル」の長男で、名前は同じ「ピーテル・ブリューゲル」。このため作品集などでは、父親には名前の跡に(父)とか(老)を、長男には(子)を付けて表記されています。
今回の展覧会の「ブリューゲル」は(子)の方です。
パンフレットの表面に掲載されているのが、代表作の1枚『東方三博士の礼拝』。新約聖書なるイエス誕生の祝福にやってきた3人を描いたという、この題名の絵は他の画家もたくさん描いています。
もちろん、農村の暮らしや文化、四季の移ろい、農民の生き生きとした情景を得意とした(父)も描いていますが、子のブリューゲルも負けずに制作。この絵が僕には一番心に残る作品です。
雪が降りしきる村。画面左下が画題の三博士礼拝の場面でしょう。
でも、中央に描かれているのは大きな荷物を背にして行き交い、山や田畑へ出かける男たち。水を運ぶ女たち。馬や犬の姿もあります。雪の中で寒そうですが、生き生きとした農民の談笑や息遣いが聞こえてきそうです。
「礼拝なんか自分たちには関係ない。さあ、急いで出かけよう」
主人公は民衆。宗教行事よりも、ここには農民の生活があるというわけでしょうね。
それにしても、ブリューゲル(子)にとって「親の七光り」と見られるのは不本意だっただろうし、何とか抜け出そうと思ったことでしょう。カタカナで書けば同じですが、(子)は名前の綴りのアルファベットを一部変えたりしたとの説明書きに、なるほどと思ったものです。東方三博士の礼拝にもその思いが込められているように感じました。
展示作品は44点。ブリューゲル(子)の『フランドルの村』、静物画を得意とした弟ヤン・ブリューゲルの作品も。ベラスケスやレンブラント、ルーベンスら光と影で明暗をはっきりさせたバロック絵画の巨匠たちの作品にも引き寄せられました。
ヤン・ブリューゲル、フランス・フランケン『花環の中の聖母の結婚』
ベラスケス『自画像』 レンブラント『襞襟を着けた女性の肖像』
ルーベンス『十字架への道』