地図のいろいろ

半世紀も地図作りに携わっていましたので、この辺で振り返って地図を見直してみようかな~・・・。

胆沢平野(扇状地)-2

2008-12-02 15:36:28 | Weblog
1/5万地形図で胆沢平野(胆沢扇状地)を取り上げてみました。

わが国における最大級の扇状地なのと同時に、6層の河岸段丘を持つ複雑な扇状地です。
北部の胆沢川沿いは標高100m前後ですが、南部の高位部は150m前後あります。
20m間隔の等高線の1/5万地形図ではその実態はつかめませんが。

この胆沢平野(扇状地)を豊かな穀倉地帯にするには、先人たちの大変な苦闘があったようです。
それは、一番低いところを流れる胆沢川の水を段丘の高位部にいかに導くかです。
扇状地は河川が伏流し、時には水無川になります。その上、ここは南北に50m~60mの高低差を持つ6層の河岸段丘が並んでいます。
そこに、地図に見られるように、扇頂部から扇の骨のような用水路が作らています。
古いのには、茂井羅北堰、茂井羅中堰、茂井羅南堰があります。中ほどに、角塚古墳があるように、この地では古墳時代から農作業が営まれたようです。
南部の用水路ほど胆沢川上流から引かれています。寿安上堰、寿安下堰、がそうです。
これはキリシタンたちによって築かれたとか(命名のごとく)・・・
さらに高地部には、今なお多くの用水留池が散らばっているように、導水をあきらめて、雨水や湧水に頼ったようです。そして、水田よりも畑作や桑畑や果樹園が多く広がっています。

用水のほかに、この地帯の特徴にエグネ(居久根)と呼ばれ防風林に囲まれた農家があります。1/5万地形図に緑色で着色してみました。
地形図の凡例には「樹木に囲まれた住居地」とあります。
これは、防風林を主な目的にしていますが、他に、日陰作りや防寒、防雪、肥料(落ち葉)、燃料(薪)、薬などなど・・・に便利に活用されていたようです。しかし、今の時代にはそぐわなくなってきたようですが・・・。
同じような景観は、砺波平野(富山県)や出雲平野(島根県)にも見られます。
私も、今から約半世紀前、出張で鳥取、島根に行った際、大山の近くで農家の見られない田園風景に遭遇したことがあります。それは、西に向かう車窓からは防風林で農家が隠されていたからです。
鍵の手に背の高い木が農家を囲っていました。一寸、異様な景観でした。

地名にも、この辺りが穀倉地帯であることを思わせる地名が多いですね。
「○○田」「○○谷地」「○○刈田」「○○田中」「○○堰田」、南側には「○○畑」「○○柴山」・・・
そして「荒屋敷」「八幡屋敷」「作屋敷」「萩屋敷」など農作業のための大家族の住んでいたらしい「屋敷」の付いた地名など・・・

地形図を眺めていると、只でいろんな景観が想像できて、楽しいですね。
同時に、現地に行ってみたくもなりますが。

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