「何かひと仕事をしようとする者
は、自分で箸を取らなければ駄目
である」/ 渋沢栄一
「もっとやりがいのある仕事がした
い」「もっとできる上司の下で働きた
い」「こんな会社なんか」・・・。
昔も今も、サラリーマンに会社への
不平不満はつきものだ。とくに若い
うちは、誰しも自信過剰気味なだけ
に、なおさらだ。
だが、会社は学校ではない。仕事は
教わるものではなく、どんな職業も、
結局は道を切り拓いてゆくしかない。
経験の浅いうちは会社や上司がお膳
立てをしてくれるかもしれないが、
そこから先は本人次第。
やる気のある人間には、いくらでも
能力を発揮するチャンスが用意され
ているものだ。それを見過ごしは
ならない。
役に立つ青年はちょうど磁石のよう
なもので、人に頼んで仕事を与えて
もらわなくとも、自分に仕事を引き
付けるだけの力を持っている
栄一は大人物の例に豊臣秀吉を挙げ
ている。秀吉は、一介の匹夫(ひっぷ)
から身を起こして、信長にその才を
認められ、関白まで登りつめた。
だが彼は決して信長に養っても
らったわけではない。
信長は懇切に人の面倒を見るほ
ど甘い人間ではなく、またそん
な暇もなかった。
彼が秀吉の前に最初に用意した
のは「草履取り」といういかにも
貧相な献立だった。だが、秀吉
は喜んでそれに箸をつけた。
要するに、秀吉はつねにみずから
箸を取り、最後は天下統一という
ご馳走を頬張ったのである。