時は詩人である。皆さまは、
何を言っているのだろうと、と
首を傾げられるかもしれない。
しかし、詩人とは言葉の網で時
を生け捕りにする魚師みたいな
ものなので、多少の脈絡のなさは
お許し頂きたい。
そう、魚師である詩人は、文字を
打ち込むキーボードのキーに、
“今”という魚を、ピカピカ光る
鮮魚のまま封じ込めることにやっ
きとなる。
銀色の刃物のような尾びれや背鰭
と格闘しながら、命懸けにもなる。
また深い海に潜り“過去”という
名の美しい巻貝を盗むのに余地が
ない。
未来は波間に漂う深緑色の藻だ。
それを網で掬い上げ、先取りする
ことに懸命になる。
大海に生きる回遊魚のような人
の一生を見つめて、その生き様
を書き記す。
恋の歌を書いても、人生の喜び
や悲しみを綴ったとしても、そ
れは時を描くことに他ならない。
一瞬たりとも留まることのない
のも、消え去り、流れ去ってゆ
くものを追いかける作業。
今日もどこかで、時の狭間に迷い
込んだ詩人が、難破船で独り言
を呟いている。
所詮、勝目はないのだ。詩人が
どんなに頑張ったて、時の方が
ずっとずっと詩人なのだから。
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「色彩のブルース」中森明菜 nakamori akina
https://www.youtube.com/watch?v=zwvIKTo_kZg