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「優雅な生活が最高の復讐である」再読

リブロポートからこの本が出たのは、奥付を見ると1984年。
1998年に原著の新版が出版され、2004年におなじ青山南さんの翻訳で
新潮文庫から決定版として出版されていた、ということを知り
両方を図書館から借り出してみました。

旧版は紫色の綺麗で小さな本、という記憶だったのですが、
どうやら記憶違いだったようで、少し和紙のようなイメージのする、
やわらかいベージュ色の紙のカバーが巻かれた本でした。
本文は色紙に刷られていて、評伝部分と写真部分では色が違えてあります。
この評伝部分の紙が(日焼けしてしまっているので良く分からないのですが)
どうやら赤紫っぽい色だったようで、その印象が残っているのかもしれません。

優雅な生活が最高の復讐である (新潮文庫)優雅な生活が最高の復讐である (新潮文庫)
Calvin Tomkins 青山 南

新潮社 2004-08
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さて、この本は作家のフィッツジェラルドの友人で、
彼の代表作となった「夜はやさし」の主人公のモデルと言われている
ジェラルドとセーラのマーフィ夫妻について書かれています。
彼らは1920年代のフランスで知り合いました。
マーフィ夫妻は、当時パリで活躍していた
ピカソ、レジェといったアーティストたちと親交があり、
夫のディックはゴンチャロヴァに絵を学んでいたそうです。
(昔読んだときは気がつきませんでしたが、当時のプラナリアはゴンチャロヴァを知らなかったのでしょう)
パリのアメリカ人「祖国放棄者」たちとはあまり付き合わないようにしていたようですが、
学生時代からの友人であるコール・ポーターや、ヘミングウェイとは交友を深めています。
ですから、1920年代好きにはたまらない本でもあるのですが、
実は今回の新訳決定版、なぜか読み進めるのに莫大な時間を要してしまいました。

先ほど少し旧版と見比べてみたのですが、新しく書き直された部分以外の、
もとからある部分も細かく表現が変えられているようです。
これは原著が変わっている、というよりは、訳者の推敲の結果とも思えるのですが・・・、
なぜだか旧版の文体の方が、自分の気持ちにぐっと来るようです。

旧版が出た当時は、ようやく再発見されたばかりだったジェラルドの絵ですが、
その後研究が進んだ結果、確認できる作品の点数も大幅に増えたそうです。
(といっても10点が15点になっただけですが)
新版にはその成果も収録されていますから、やはり今読むなら新版だと思うのですが、
個人的には本文の美しく設計された活字組も含めて装丁も素敵な旧版が、
(奥付に造本装幀は戸田ツトム、組版設計は府川充男とあります)
本と言うものに対するフィティッシュもあり、いとおしいかもしれません。

(全くの蛇足)
書名の「優雅な生活が最高の復讐である」と言うのは、
ジェラルドが見つけてきた古いスペインの諺だそうですが、
いまひとつ意味が取りにくいですよね。
新版のあとがきに分かり易く書かれていました。
「なんとかして優雅に暮らすことが過酷な人生への復讐でもあるのだから。」
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