故赤塚不二夫氏の漫画に「
目ん玉つながりのおまわりさん」という氏名不詳のキャラクターがいました。このおまわりさん、いつも些細なことで怒って空に向かって拳銃を撃ちまくりながら「タイホする~」と走り回るのが口癖の名脇役でした。「でした」と過去形にしてはいけませんね。なぜなら、今でもつまらない事で怒って「タイホする~」とわめくおまわりさんが結構いるようです。
●高知県で年間40人以上が軽い違反で逮捕されている
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拘置新聞には珍しく警察の取締りに疑問を投げかける記事。しかし、高知県警の警官が岡山県警にタイホされた不祥事のさりげないフォロー記事かも....(笑) |
09年12月25日の拘置新聞夕刊社会面トップに「軽い交通違反 逮捕246人」という大見出しが踊りました。高知県の話ですが、違反点数が3点以下の軽い交通違反で警察が逮捕した人が約6年間で246人、最多の05年には70人、平均すれば年間40人以上も逮捕されているようですね。警察の対応に疑問を投げかけているように見える記事です。県警の広報部だと思ったのは気のせいだったのでしょうか?(苦笑)
高知県警によると、軽い交通違反でも「違反者が逃走したり証拠を隠滅する恐れがあるとき」現行犯逮捕するらしいですね。ところがその逮捕すべきかという基準が無く、現場の警官の判断に一任されているというから「何とでもなる」のです。
●態度が悪いだけで逮捕?この記事に、先日岡山県警に逮捕された高知県警の警官の事が書かれています。記事によると、高知県警の警官が免許証を示して警察官だと告げているのに逮捕されたとしか読めません。ウソ言いなさんな。それだけで逮捕されることはないでしょう。
また、高知県警幹部の「
自分なら逮捕しないだろうが、
態度に腹が立ったのではないか」と他人事みたいなコメントも載っています。高知県警が岡山県警や本人に事情を聞かないはずがないのにね。身内の警官が逮捕された不祥事を隠ぺいしていたことも含め、正直に言うつもりはないことが読み取れます。
高知県警幹部は「態度が悪いだけで逮捕された」みたいな言い訳の前に「自分なら逮捕しないが」と部分をくっつけたのが官僚特有の印象操作ですね。つまり「高知県警は逮捕しないのに、岡山県警は態度が悪いだけで逮捕するんだ」みたいな印象を与えたいのでしょう。高知県警もいい加減な逮捕の乱発をやっているのに、そんな訳ゃぁないでしょう。拘置新聞も高知県警の詭弁をそのまま記事にするから提灯.....
(自粛)
この記事は、交通違反から逮捕に至る事例がいくつか紹介されています。「昨年、高知市で一時停止違反で「逃走した」として逮捕された女性は、違反事実を認めているのに『手錠をかけなくても.....』と話した」という記事から伺えますが、警官の停止合図に気がつかなかっただけというのもありえますね。「逃走した」かどうかといった事実認定は両者の主観で食い違うことがあるでしょう。そもそも、速度違反の証拠隠滅などどうやってできるのでしょうか?
免許証の提示を拒否するのは無免許の可能性がありますから、逮捕もやむをえないでしょう。しかし、態度が悪いという警官側の主観だけで「タイホする~」なんてやられたら、たまったものではありませんな。
おい、こらお前!
などと言って市民に対して威張っていた時代の警官と同じです。
不当逮捕は人権問題だという意識を持って欲しいものです。
●国家権力にたてつく市民は逮捕してよいのか?反則金を納めれば済む軽い違反なのに、なぜ逮捕に至るのでしょうか?この記事には、逮捕に至ったいくつかの事例が紹介されています。中には不当逮捕だとして訴訟にまで発展するケースもあるそうです。
それが、交通違反切符へ指印を拒否したとして現行犯逮捕された男性のケースです。この男性が逮捕と留置の違法性を主張し、新潟県警を相手取って国倍訴訟を起こしました。地裁では「この男性は免許を提示し、家の電話番号を申告しており、速度が計測された結果が残されており、証拠隠滅や逃亡の恐れが無かった」として県警側に60万円の賠償を命じたのです。ところが二審の東京高裁では「現場での男性の態度が極めて非協力的」として男性側に逆転敗訴を言い渡した、と記事に書いています。
この東京高裁の判決理由にただ驚くばかり。東京高裁によると「切符への指印拒否は「非協力的」なんで逮捕オッケー」だと言っているのです。これは市民感覚で納得いかないですねぇ。納得できない違反なら指印拒否するのは当然の権利でしょう。不当逮捕は人権問題という意識がない司法と警察がグルになって、市民を「協力的」にさせる運動でも進めているのでしょうか?
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白バイ事故現場から南へ約0.5kmで見かけた土佐署の「ネズミ取り」風景。コソコソ隠れた陰湿な取り締まり方には以前から批判が強かったのですが、エロDVD自販機に隠れるような風景は日本全国さがしても高知県警だけでしょう。白バイ事故で有名になった高知県の「ナニコレ珍百景」に登録できそうですね。ちなみに白い車は、現場検証の時に片岡さんを乗せたシャコタン族車のような土佐署の覆面パトみたいです。 |
東京高裁のアホ裁判官によると、
違反事実を認めないと国家権力にたてつく市民は逮捕しても構わないようです。どうやら些細な違反事実争う裁判がバンバン起こされるとめんどくさいのかもしれません。どうせ
訴訟しても無条件に国家権力の勝ちにするから無駄にモガる
*1な、という意思表示(見せしめ)のようにも思えます。これが民主主義国家の姿でしょうかね?
●権力批判を書かない新聞社へ変節?このように司法の異常な基準が見えてきます。にもかかわらず、拘置新聞社は、この事件の弁護士が「速度違反の証拠隠滅ができるはずがない 国民が逮捕の妥当性をチェックできることが必要」と訴えていると記事を締めくくっています。弁護士の言葉を借りないと司法や警察への批判が書けないのでしょうか?腰が引けているように見えるのは気のせいではないでしょう(笑)
実は、拘置新聞社は県警の不当逮捕を叩いた社説を載せたことがあるのです。たぶん10年以上前になりますが、はっきり覚えています。どこの新聞社も社説記事を書くのは論説委員クラスのはずです。そのような人が軽い人身事故を起こして逮捕された当事者体験から社説を書いたようです。その社説は、個人的な恨みより「証拠隠滅や逃亡する恐れもないのに逮捕するのは不当」だという立派な論調でした。軽い交通事故でも論説委員ですら逮捕されるんだ、とちょっと驚いて読んだので印象に残っているのです。
それから10数年。どうも、県警捜査費問題の報道以後は拘置新聞社は「マカレスト」的な方向に変節しているように感じます。この背景には、県警不正捜査費の報道によって何らかの不利益を被り(あるいは特権的便益を得た?)、それ以後権力批判を避けているのではないかと勘ぐりたくなります。今や、県警幹部と地元新聞社幹部が呑みに行っているとウワサされるぐらい仲がいいようです。
「今年はお世話になりました。来年もよろしくぅ」なんて忘年会やっているのじゃないですか?
今回の記事を載せた拘置新聞の勇気だけ(笑)は評価できます。しかし、新聞社が権力批判を逃げたぶん、市民感覚でブロガーが突っ込みを入れるしかないのです。まだまだ甘い。今後はもう一歩の踏み込みを期待したいところです。
*1 モガる:土佐弁で、権威や権力などに反発したり、1人であっても大勢に反対することを言います。頑固者という意味の「いごっそう」とは異なり、やや偏屈で意図的な反抗というニュアンス。反対語は付和雷同。高知県人は反骨精神が豊かで、権威や権力にたてつく県民性があるからこういう表現があるのです。しかし、最近の高知県人はモガリストが減り、長いものにマカレストが増殖しているらしい。
今年はこれで締めます。
来年もよろしくお願いします m(_ _)m