確かに嘱託鑑定及び検察回答書においては,現場に印象された白バイのタイヤ痕が前後輪どちらのものか,スクールバスのタイヤ痕が縦横どちらの滑り痕であるかなど,速度を導く検討過程について,県警鑑定と判断が相違している部分はあるものの,嘱託鑑定及び検察回答書のいずれも,衝突時バスは動いており,白バイの速度も時速50ないし70キロメートル程度で法定速度の大幅な超過はなかった旨結論付けており,確定審の事実認定に沿う内容であることから,検討過程の相違が県警鑑定の信用性,さらには①確定審の事実認定には何らの影響も及ぼさない
エ 液体塗布主張は,確定審弁護人が確定審においても主張していたものであり,再審弁護人の同主張も,確定審弁護人の主張の蒸し返しに過ぎないのであるから,その主張自体が失当であることは明白である。
また,そもそも,液体塗布主張は,実況見分を行った警察官が,突如発生した交通事故の現場において,バスに乗車した生徒や野次馬など不特定多数人が現在する,いねば衆人環視の下;バスのタイヤ下に液体を塗布してタイヤ痕をねつ造したなどというもので,当時の客観的状況を無視した,あまりに荒唐無稽な主張であることも明白であり,そのことは確定審の判決においても明確に指摘されている。
オ よって,再審弁護人の液体塗布主張は妥当性を欠くものであり,提出された証拠にも,再審開始要件として刑事訴訟法435条6号が定める新規性及び明白性は認められない。
以上
さて、県警鑑定書・嘱託鑑定書・検察回答書にどれほどの齟齬、食い違いがあるのかをわかりやすく表にしているブログ記事があるのでそちらをご覧いただきたい
上記表は23項目において、各鑑定書の鑑定結果を比較しているが、同一意見となっているのは下記2項目だけだ。
①バスは動いていいた ②衝突地点 そして、表には書かれていないが白バイの速度
それ以外の項目はことごとく食い違っている。事故鑑定に欠かせないと思われる部分のみを上げてみる
①衝突時のバスの速度 ②スリップ痕の長さ ③白バイの衝突時の状態 ④衝突地点特定の根拠等々
片岡の過失が成立するには衝突地点は国道の真ん中でなくてはならないし、その時バスが動いていなくてはならない。だから「御用鑑定人」の意見は一致するが、それを導き出すための根拠やその数値がバラバラの鑑定である。
それでも、下線部①のように検察は断言できるのだ。
特に目を引くのが破片の散乱状況についての部分だ。破片の散乱状況が衝突地点の特定に重要な役割を果たすことは論を待たない。
しかし、専門家であるはずの三者は誰一人として鑑定書の中で触れていない。それにもかかわらず、物理的素養に疑問ある、専門家でもない検察官は「破片の散乱状況からしてバスは動いていた」と今回の意見書で断じている。
この辺りの 武田裁判長の判断も注目したいところだ。
検察意見書に則していくと、弁護側鑑定人の経歴を理由に弁護側鑑定人の意見を不採用とし、3人の鑑定人の意見は最終的に一致しているとして、その意見を導き出す過程の矛盾を無視して採用する。
事故鑑定界を代表すると言われる2人の鑑定人が恣意的に意見を避けた部品の散乱状況については、経歴どころか鑑定人でもなく、物理的素養にも欠けると思われる検察官の意見を合理的として、武田裁判長は採用するはずだ。
そうをしないと、「再審請求審」が開始となる。
ここは武田裁判長の腕の見せ所だろう。
さて、前述の検察意見書の エ)液体塗布説についての検察意見は確定判決をそのまま引用している。要約すれば「衆人環視の中ではできない」等としている。しかしながら、弁護側は「PCでの画像加工と実際の液体塗布の両方を使ってスリップ痕を作成と意見書の中で主張しているのであって、正確に弁護側意見を把握していない。
確定審弁護人とは違って、再審弁護側は事故直後に塗布したと主張しているのではない。
県警本部の応援が現場に当直して、交通部長級幹部の指示があって、初めて液体塗布は可能。所轄の土佐署の判断で今回のような大胆な証拠捏造は無理だろう。
写真1
上の写真はKSB瀬戸内海放送の07年10月3日の報道から切り取った写真だ。画面上の中央やや左の集団に注目する、輪になっている集団の中心に問題のスリップ痕がある。人の壁でスリップ痕を「衆人}の目から隠しているのだろう。このような状況になれば液体塗布作業は「衆人環視」を免れる。また、その描かれたスリップ痕を隠すこともできる。
KSB・HP 07年10月3日映像 1分18秒頃
次に、スリップ痕が液体塗布であると主張する根拠となる写真を掲載する
写真2
上記写真の黄色枠内を拡大する
写真3
通常 スリップ痕はタイヤゴムが路面との摩擦により、路面粒子の凸部分にタイヤゴムがこびりつくものだ。摩擦の生じない路面の凹部分まではタイヤゴムはこびりつかない。よって黒くはならないがこの写真では凹部分にまで液体がしみ込み、路面全体がべったりと黒くなっている。
こういった写真鑑定を専門家の元科警研顧問三宅教授が行い、スリップ痕と言われるものは「液体が塗布されたもの」として地裁に提出している。(三宅鑑定書)
これら高解像度の画像は08年の上告棄却後に弁護団が入手したもので、原審公判では確認することができなかった。
それでも検察官は「再審弁護人の液体塗布主張は妥当性を欠くものであり,提出された証拠にも,再審開始要件として刑事訴訟法435条6号が定める新規性及び明白性は認められない。」という。
次回は三宅鑑定書に対する検察の最終意見を掲載する。今回再審請求で最大の新証拠と言われる鑑定書を、検察も最終意見書の中で最大のページを割いて弾劾を試みている。