UPDATE 2008.10.8 その後の報道に2つ追加しました。
UPDATE 2009.6.6 その後の報道に3つ追加しました。
2008年10月1日に発足した「協会けんぽ」は、日本年金機構と同じ「非公務員型の公法人」である。正式名は「全国健康保険協会管掌健康保険」という。
ここには、年金のぞき見などの懲戒処分を受けた職員も社保庁から移行した。「懲戒処分の職員は年金機構に採用しない」と宣言した自民党。では既に協会けんぽに移行している懲戒職員はどうするのだろうか。
まず、今年4月に懲戒職員が移行したことが報じられた。
社保庁:健保協会、年金のぞき見職員も再雇用 (毎日新聞 2008年4月15日 東京朝刊)
社会保険庁は14日、08年10月に同庁の医療保険部門を分離して発足させる非公務員型の「全国健康保険協会」で再雇用する職員1800人を内定した。有名人の年金加入記録をのぞき見するなどして懲戒処分を受けた71人も含まれている。
協会は職員2100人で発足。うち300人を民間から採用する。社保庁職員からの希望者は4156人。採用される処分者71人の内訳は、のぞき見59人▽年金の不適正処理8人▽旅費の不適正請求2人--など。
社保庁は同日、休職せずに労組役員をしていたヤミ専従問題で、一部職員に架空出勤簿に基づいて月約3万円の超過勤務手当を支給していたことや、勤 務評定で5段階中2番目に高いAランクの評価を受けていたことを明らかにした。ヤミ専従職員は29人とされるが新協会に移る職員はいない。【佐藤丈一】
現在の協会発足後の報道を見ると、「懲戒」という言葉を含むのは読売のみ
“社保庁体質”変わるか、「協会けんぽ」がスタート (読売新聞 2008年10月4日)
協会けんぽには、約3500万人が加入。保険料率は当面、政管健保と同じ8・2%(労使折半)で変わらない。職員約2100人の身分は非公務員。このうち社保庁出身者は約1800人おり、約2割が懲戒処分を含めた何らかの処分を受けている。(抜粋)
読売の記事によると、何らかの処分を受けた職員約360人が社保庁から移行している。
一方、「ねんきん機構」に対しては、自民党は支持率対策とも取れるパフォーマンスを連発している。
社保庁での懲戒処分職員、年金機構に原則採用せず 厚労相方針 (日経 6月7日)
しかしこの報道では対象はねんきん機構のみとなっている。
自民議員が議員立法するらしい。
年金機構への採用 議員立法へ(NHKニュース 2008年7月17日)
自民党は、社会保険庁を廃止して新たに設立される日本年金機構では、いわゆるヤミ専従問題で懲戒処分を受けた職員だけでなく、改善を怠った管理職についても職員として採用しないとする議員立法の提出を目指すことになりました。
社会保険庁は再来年1月に廃止され、年金の保険料の徴収や記録の管理などの業務は新たに設立される日本年金機構に引き継がれることになっており、政府は過去に懲戒処分を受けた職員については正規の職員に採用しないことにしています。16日に開かれた自民党の作業チームでは、休職の許可を得ないまま労働組合の活動に専念し、不正に給与を受け取っていたヤミ専従問題について「こうした職員を年金業務にあたらせるべきではなく、何ら改善しようとしなかった管理職も厳正に処分されるべきだ」という意見が出されました。
これを受けて、会合では、ヤミ専従問題で懲戒処分を受けた職員だけでなく、勤務評定や人事配置などにかかわった管理職についても、年金機構の職員として採用しないとする議員立法の提出を目指すことを確認しました。自民党の作業チームは、今後、具体的な法案作りを進め、公明党とも協議したうえで、すでに成立している社会保険庁改革関連法の改正案として次の臨時国会に提出したいとしています。
しかしここでも協会けんぽには触れていない。
また10月5日現在、その議員立法の法案はまだ提出されていない。(今後出てくる可能性はある)
政府は今年7月29日、懲戒処分のある社保庁職員を、「ねんきん機構」に移行させない方針を閣議決定した。
しかしその閣議決定文[PDF]でも「協会けんぽ」については触れられていない。
選挙向けパフォーマンスをしている場合ではない
10月2日、厚生年金の組織的改ざんに対して、こうした報道がなされた。
また議員立法するそうだ。舛添大臣は「皆さんのところに紙(証拠)が残っていれば、悪い職員を逮捕できる。問題のうみを出し切って、新しい組織にしたい」と語っている。厚生年金が最も多く改ざんされたと推定されるのは1970年代である。やはり消えた年金と同様、何十年も前の証拠を提示する義務があるのは、国民ということらしい。
これがもし他の先進国なら、政権はとっくに崩壊している。
厚生年金の改ざんは現在143万件確認されているが、これはコンピュータに入力されてから後のデータしか集計していない。従って実際の件数はさらに増えるだろう。大臣は刑事告発する方針の様だが、どうやって検証するつもりなのだろうか。見せしめに数人を告発しマスゴミを騒がせて終わらせるつもりか。
本日10月5日時点で、協会けんぽの職員が処分されたという報道はまだ見ていない。
厚生労働省は、分限免職ではなく有期雇用や厚労省自身が再雇用する方針を望んでいる。それに逆らって(おそらく実際は談合して)、再雇用の道を閉ざす方針をアピールした自民党。新組織で懲戒職員を採用しないなら、当然、ねんきん機構も協会けんぽも同じ基準が必要であろう。
自民党は、少なくとも閣議決定の内容は実行しないと、国民を騙したことになる。目立たなければ、支持率に影響なければ、放置ということでは国民が迷惑するだけである。
ねんきん機構への移行までまだ1年以上ある。1年半前1年と3ヶ月前、自民党は最後の一人まで払うと言って選挙を戦った。今回も、不採用となった職員を、厚労省がうやむやのうちに採用して終わるのが目に見えていると思うのは私だけだろうか。
自民党がもし本気なら、とっとと法改正して、まずは協会けんぽにいる懲戒処分職員の採用取り消しをしてみてはいかがか。
その後の報道
- 首相、不祥事職員は“解雇” 年金機構発足で (共同 2008年10月6日)(魚拓)
「日本年金機構について、懲戒処分歴のある社保庁職員を他省庁などに配置転換できなかった場合、解雇に当たる分限免職とする考えを示した。」
[コメント] 結局、厚労省の方針には逆らえないようです。
- “公務員の厳格処分 公約に” (NHKニュース 2008年10月6日)(魚拓)
自民党の有志の国会議員が、公務員により厳しい処分を科せるようにすることを次の衆議院選挙に向けた党の政権公約に盛り込むよう石原幹事長代理に申し入れた」石原幹事長代理は「前向きに検討したい」と応じた。
[コメント] これはわざわざ公約にしなくても、与党なら今すぐ着手出来る話です。
※NHKニュースを魚拓で読む際、「ESCキー」を押しながら「もっと詳しく」をクリックすると、NHKのページに勝手に飛ぶのを防ぐことができます。
- 背任容疑で職員ら40人告発 社保庁のヤミ専従 (産経 2008/12/26)
厚生労働省は26日、ヤミ専従行為者と上司ら40人を背任容疑で東京地検告発した。舛添厚労大臣は「公的年金制度に対する国民の信頼を裏切った」などとして、告発する方針を示していた。
- 社保庁:「ヤミ専従」職員ら40人を起訴猶予 東京地検 (毎日 2009年2月27日)
東京地検特捜部は27日、厚生労働省が背任容疑で刑事告発した職員と上司の計40人を「既に弁償を済ませている」などとして不起訴処分(起訴猶予)にした。
- 「のぞき見」など処分の2116人も採用 年金機構内定(朝日 2009年5月19日)(魚拓)
後継組織「日本年金機構」(10年1月発足)の設立委員会は19日、社保庁から移行する9971人の採用を内定した。このうち約2割の2116人は、年金記録ののぞき見や国民年金保険料の不正免除などで訓告や厳重注意などの処分を受けた職員。社保庁の正規職員は現在、約1万3千人。年金機構の採用基準により懲戒処分歴のある約850人は採用されないが、それより軽い訓告などを受けた人は移れる。
というわけで、10月1日から一部の健康保険が変わります。
特に、事業所が健康保険組合を持たない中小企業の従業員や家族約3600万人が影響を受けます。
「『協会けんぽ』は医療崩壊を加速」 (2008年9月22日 医療介護CBニュース) (魚拓)
ビデオの番組では、この制度変更で懸念される問題点を指摘しています。