録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

デジタル放送の問題点を二つに分けてみると

2009-08-04 21:24:29 | B-CAS&規制撤廃運動
最近、アナログ録画機の調子が相次いで悪くなってます。レコーダーのDMR-1000と、キャプチャーボードのPX-TV432P。どちらもアナログの主力機として長く愛用してきたのですが・・・。DMR-1000は、録画を行っても、追っかけ再生はできるのになぜか録画終了と同時に番組がHDDから消されてしまい、番組を保存することができなくなっています。PX-TV432Pは、録画した映像の画面が崩れて見られない動画しかできなくなりました。夏の暑さもあるのでしょうが、酷使し続けてきたのでボチボチ限界なのかも。代用品も手に入らないことだし、アナログをはずす日はウチでは近いのかも知れません。

で、こっちでは今日発売の雑誌「週刊現代」を買ってきた。東京あたりでは昨日すでに発売されたかも知れないが、わたしのところは基本一日遅れなので。読みたい記事は「どこも書かない地デジのウソ」。ただ、このタイトルにはやや偽りありで、それほど目新しいことが書いてあるわけでもない。内容は主に電波利用料の激安問題や、デジタル放送にかかる費用の税金負担分、ゴミの増加や越境放送にプロテクトを掛けるデメリット、地デジ難民の発生、普及率に隠された二台目三台目のテレビの問題など。いまさらそれほど読む価値があるわけでもなく、わたしらにとって最大の問題である「B-CAS利権」や「コンテンツ権のための規制」などには一言も触れられていない。以前も「紙の爆弾」などで書かれた、雑誌型の主張のまとめでしかない。この問題に興味のある人は、読んでもさほど面白いものではないかも知れない。

そういえば、ふと疑問に思った。なぜこういう週刊誌型の雑誌は、デジタル放送の普及や必要性・電波利用料などには熱心だが、B-CASカードや録画規制に関しては全く誌面を割こうとしない。なぜだろう。出版社もしょせん著作権側の団体ゆえに、番組著作権側と談合して報道しないようにしているのだろうか? さすがにそれはないだろう。新聞とテレビのようなつながりを出版社においては感じないし、そもそも何かの法律で報道とは「テレビと新聞のこと」と定義された問題を、出版側は恨めしく思っているはず。わざわざ助けてやる義理はないし、何の得も無い。むしろ書いてやった方が記事が面白くなる。それに、大手ではないが、アングラ系の雑誌がデジタル放送の問題点を書く場合は主にB-CASや録画規制であって、普及や電波使用料のことは取り扱わない。どうやら、業界ではこの二つは分けて考えられているようだ。
ネットでは一緒くたに扱うことの方が多い両者。ウチでも基本的に区別して取り上げたことはない。普及率が伸びない大きな原因として規制に対する反発や、その不便さがあるのは周知の事実だが、マニア層はともかく録画をタイムシフトとしてしか使わない一般層は、それに気がついていない人も多そうだ(すでにHDD録画によって、番組を"残す"という文化も一部マニアだけになりつつある気もするし)。マニアが困ろうと、自分たちにとって障害とならないのなら、それはどうでもいいことである。ゴシップ情報誌はマニアを相手にしていないので、もっと一般層にわかりやすい、金と数字の問題だけに絞ったのであろう。逆に、マニア層にとってはそういうゴシップより自分に直接かかる被害の方が重要である。今回の「週刊現代」のように、必ずしもデジタル放送不要、という人は少ないはずだ。少なくとも過去のアナログ放送はともかく現状のアナログ放送よりは画質が断然上だからである。アナログの画質が元に戻らないのなら、規制さえ撤廃してくれれば即アナログ波など停波してくれても構わないという意見すら実は多いかも知れない。案外相容れないものであり、二つに分ける意味は結構あると思う。
こういう考えは、たとえば現在募集されているパブリックコメントを書くにも重要である。普及や税金の問題と、規制や利権の問題を両方とりあげて書くと、複雑化するか、長文化するかのどちらかになってしまう。そうでなくてもパブコメの募集など、ポーズだけのタテマエといわれることもあるうえに、自分たちに都合のいい情報だけを拾って合成する特殊フィルタを持つ著作権業界に読ませる文になるのだから、シンプルであるに越したことは無いだろう。今回は主にコンテンツの問題に関して募集されているので、普及や税金にはあまり触れない方がいいかも知れない。せいぜい「規制が続けば、それだけ普及は遅くなる」と触れれば十分だろう。

ただし、どう分けても分け切れず、両方に属する問題がある。電波利権問題である。ゴジップであると同時に、実害も及ぼす重要な問題だ。ウチではまともに扱ったことは無いので、ちょっと大きく取り上げる。
テレビ局の電波利用料が極めて安いことはそこそこ知られているが、「週刊現代」の記事では具体的な金額が上げられている。とは言っても、自民党の河野太郎氏のブログ、それも昨年の2月という古い生地の引用だが。せっかくなので、リンクを貼っておく。

衆議院議員 河野太郎発行メルマガ「ごまめの歯ぎしり」ブログ版 本邦初公開?

「電波を独占して上げる収益に対して利用料が千分の一。低すぎませんか。」
とおっしゃられているが、これを低すぎると思わない人はそういないと思う。現代の記事によれば、6年前(2003年のことか)で、テレビの電波利用割合は9%で、負担金は1%。一方、携帯電話・PHSは11%と割合は少し多いだけなのに、料金の負担は90%以上となっている。リンク先の表は2006年度のもので、その時点での電波使用割合はあきらかにされていないが、河野太郎氏が週刊現代の取材で語った文を引用させていただくと
「電波利用料の80%以上を携帯・PHSが負担させられていました。これに対し、携帯電話の1.4倍もの電波の周波数帯域を利用していた放送局(テレビ・ラジオ)は電波利用料全体のわずか6%の負担でした」
とある。少し電話の料金が減り、テレビ・ラジオ(ラジオの負担はたかが知れているだろうが)が増えているものの、それでもなお利益の0.1%でしかない。そのテレビの上げる収益を考えれば、全額テレビが負担したところで利益の1.5%程度、多めに見ても2%。なのに、実際は携帯電話の利用者がその穴埋めをさせられているのだ。放送をスクランブルに変えて、自分たちの都合のいいように市場の受信機をコントロールしているというのに、こういう金銭的特権を持つことに理不尽さを感じない人はそうはいないだろう。
ところが、世の中は広いもので、理不尽と思わない人もいるのである。割とテレビに出るので、誰でも一度は見たことがあるだろう民主党の原口一博氏その人である。この人は以前、テレビで「民主党が政権をとったら、テレビの電波利用料を安くします」とはっきり明言しているのだ。ただのテレビ局へのリップサービスと思ったら、さにあらず。同時に「テレビ局への規制を緩和し、より自由な報道が行えるようにします」とも発言している。これは民主党の政策集にある「通信・放送行政を総務省から切り離し、独立性の高い独立行政委員会として通信・放送委員会(日本版FCC)を設置し、通信・放送行政を移します。これにより、国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消するとともに、放送に対する国の恣意的な介入を排除します。また、技術の進展を阻害しないよう通信・放送分野の規制部門を同じ独立行政委員会に移し、事前規制から事後規制への転換を図ります。」と一致するため、公約には一切かかれていないものの、民主党の総意と考えてよさそうである。安くなった分は、おそらく携帯電話の使用料に広く浅く加算されることになるだろう。
ただし、この放送分野に関する文、「政策集」には載っているものの、PDFで公開された「民主党マニフェスト2009」には載っていない。意図的に掲載を見送られたようだが、民主党サイト内ではしっかり掲載されているのでやめるというわけではないらしい。今月総選挙もあるが、放送分野に改善を求めようと思うのなら、民主党だけはやめておいた方が良さそうだ。他がいいとは言わないが。

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4 コメント

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Unknown (emanon)
2009-08-05 21:27:18
 今年の暑さに熱ダルですか熱伝導シートの劣化とか廃熱ファンの寿命も考えられるのですがタイマー発動ですね
PX-TV432P中古で出てはいるのですが必要ですか?
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Unknown (krmmk3)
2009-08-05 21:59:07
>emanonさん
レコは多分HDD(交換はできるんですが、IDEのみ)、PX-TV432Pは酷使によるチップの寿命でしょうね。まだ予備はありますので、大丈夫ですよ。
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Unknown (arpus)
2009-08-06 00:37:20
日本的な政府と業界からの天下りで実質的な抑止力のない行政法人には当然反対ですがFCCの役割自体は否定するものでもないと思っています。
統合的で公平な通信電波管理&監視を行ってくれるなら政党や官僚から切り離した方が健全でしょうから。
BPOやNABのようによく分からない有識者達によるよく分からない審査基準や、JATEのように組織が形骸化したような団体が更に増えるだけという危惧が捨てられないのが辛い所。

電波利用料が放送と通信で違うのは放送は不特定対象への送信、通信は特定者による送受信ということで、前者の方が公共性が高いとされている分は加味されると思います。
しかしこれも昔の話。それこそ20年以上前の考え方から変化していない。
テレビは既に内容に公共性が失われ災害時の情報を得る装置としても据え置きされた受像器に比べ、携帯電話や公衆無線LANなどの普及により個人が携帯するデバイスのほうが災害対応などに対するシステムはより構築しやすくなってきているはずで(残念ながら出来ているとは言わないが)、テレビ(ラジオ)業界に対する過度の優遇は縮小するべきということには強く賛成です。
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Unknown (krmmk3)
2009-08-06 01:07:19
>arpusさん
放送局の行為に対する監視を民間だけが行うには時期尚早、というか、タイミングが悪すぎると考えています。現在のような移行時期、ましてそれをいいことにやりたい放題の放送業界と著作権業界。現状で国の機関による監視を解くことは、得策とは思っていません。業界にできることにキッチリとした法を用意し(当然他の法律との整合もとったもので)て優遇を減らし、放送以外の部分での暴走を止めてから初めて民間に委ね、番組内容の監視を行わせるのがいいと思っています。利用料に関しては、スクランブル放送や規制の強要を続ける限り、その公共性は無いとわたしは考えています。
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