録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

ロクラク裁判はアレで本当に良かったのか

2011-01-21 22:45:14 | B-CAS&規制撤廃運動
あまり誰も気にしていない体調報告~! 気管支炎を起こしちゃいました! 少し長引きそうです。


本来昨日取り上げるべきでしたこの件、今日にさせてもらいましたのは、どうしても欠かせない「カラオケ法理」というものを少し調べたかったからです。法律の専門家ではないものでそっちの問題にはそれほど詳しくなく、Wikiなどで簡単にみただけでは理解できなかった話だったので。

即席の勉強で仕入れた知識で書いたために間違っているとかずれている点もあるかも知れませんが、あらかじめご理解くださいませ。

そもそもはJASRACに著作権使用料を払わずに、客にカラオケを歌わせていたスナックが著作権侵害として訴えられたカラオケスナック事件がキッカケです。普通に考えたら悪いのは店の方ですが、著作権の侵害を実際に行っていたのは、お店で著作権付きの歌を歌った客の方であるというのが店側の理屈。店は場を提供しただけで侵害には当たらないというわけです。この理論の前に原告側は悩み、判決は最高裁までもつれ込むことになりました。そこで1988年に最高裁が使った理屈が「店側はカラオケが歌えることで客の勧誘を行っているし、カラオケの機器も設置し、それを使わせることで利益を上げている。よって店側も著作物利用の主体と見なすべきである」という考え方。利益が出ているのだから無関係じゃないという法律解釈の理屈、これがカラオケ法理です。これによって店側は敗訴しました。
これ自体はわたしの目からみたら正当な解釈であり、賛同も得られる法理であると思います。ところが、これを最大限に利用したのがテレビ局です。テレビ局は、主に海外在住邦人向けにインターネットを介して録画番組を転送するサービスは、昔いくつもありました。そのことごとくに対して裁判を引き起こし、先のカラオケ法理を
「利益を得ている以上、サービス提供側が主体として考えるべき。よって、多数の番組を録画して多数の人間に配布するのはサービス提供会社が主体となっていると判断するのが妥当で、その行為は私的利用の範囲を超えている」
とこういう考えにしてしまいました。録画番組を会社で録画して大勢の人間にばらまいているのと同じだという解釈でしょうか。先のカラオケ法理の本来の概念などすっ飛んでいますが、それでも最高裁判断を引用して作り上げた理屈である以上、その効果は絶大だったのです。録画ネットをはじめ、多くの海外邦人向け録画サービスが同じ理論でつぶされていきました。だから、実はラクロクが裁判で負けても不思議でも何でも無かったのです。

最高裁、「ロクラク」訴訟でも審理差し戻し
「複製の主体は利用者」とした二審判決を破棄

むしろ画期的であったのは破棄された二審。全戦全勝を誇っていたテレビ局側のカラオケ法理の暴走に釘を刺した知財高裁の判決の方だったと言えるようです。もちろん此度の最高裁判断で覆りましたが、それでも判例が残ることに変わりはありませんから。
ちなみに、「まねきTV」にカラオケ法理が使えないのは、まきTVが録画サービスでなく視聴サービスのため。録画がまねきTVの設置場所で行われていないからです。だから、テレビ局を勝たせるには、ほぼ全てのサービスを否定する自動公衆送信による権利の侵害という方法しかなかったのです。

ただですねぇ、ロクラクには他の事件とは違う一面があると思うんですよ。それは、ロクラクだけが録画に使う機器を自社開発しているからなんです。
ご存じの通り、日本のデジタル放送はかつてのVHSビデオの時とは比べものにならないほど参入メーカーが少なく、市場もほぼシャープ・パナソニック・ソニー・東芝の4社で占められ、量販店ではそれ以外には三菱とDXアンテナがあるくらいで、中小企業のメーカーというのがほとんど存在しません。ロクラクシリーズを販売する日本デジタル家電は、そのほとんど唯一の例外・中小企業でありながらデジタル放送用レコーダーを販売するメーカーなんです。それが行えるのも、事業の柱の一つとして海外向けレンタルサービスを行っているからです。それゆえ、例えカラオケ法理の判決が出たとしてもまだあきらめておらず、公式サイト(ここの一番下)でも「今回の最高裁判決によりましても、引き続き、適法な事業であることには変わりがありません」とし、高裁の場で争っていく考えのようです。
で、それでもテレビ局がこのサービスを敵と見なし、海外事業をつぶしてしまうようだと、日本デジタル家電自体が崩壊しかねません。そうなると、レコーダー事業そのものが独占禁止法違反として問題のある市場とされかねません。いやね、わたし個人としては今のレコーダー市場なんぞつぶれてしまってもかまいませんよ。でも、今一部大手だけの独占市場となっているのはその企業にとっては予想外の結果ですし、何より魅力ある製品の作りようがない規制ラッシュの中でなんとか少しでもいいものを作ろうとしているメーカーの努力が水泡へと変わるのはさすがに惨めなもので・・・。そういうわけで、自社製品を使った事業くらい認めてやるのがスジだとわたしは思うんですけどね。

もちろん時代に流されずにすみ、ガラパゴスにすらなろうとしないテレビ局のキー局と地方局という遺物構成を守るために努力を惜しまない方々には何を言っても無駄なのでしょうけど。それにしても、テレビ局の態度。端から見たら哀れそのものなんですが・・・。たまには自分たちの姿をテレビでも鏡でもいいから"うつして2見ようとは思わないのでしょうか。

コメント (9)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« まだやっていた、地デジ難視... | トップ | 砂上の楼閣 »

9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (emanon)
2011-01-21 23:41:52
 >気管支炎
気管支炎ではかなり辛いですよね… 、腫れたへんとうせんが何処かに触れる刺激が問題なのですから油を少量口に含んで軽くつばを飲むようにすれと 問題のところに回るので刺激を受けにくくなるやりかたもありますけど 不味いイソジンでうがいをするように処方されたかな 
何か最後に ジン が付くと地デ~ジンが両手を振って浮かんできてしまう だいぶ洗脳されてるやw コタツを見たらMSI MSIと来たらアフターバーナー それも置いといて

SDカードで持ち運ぶのはそろそろ行渡ったでしょうから
そろそろ大手デジタル家電のレコーダーから携帯やそれに近い無線通信でノーパソに送れば日本の電波規制内でも不満の無い使用環境がそろうのですけどね、自分たちの納得のいく管理も出来るし NTTも高速無線通信と光回線を普及させやすい
返信する
Unknown (容堂)
2011-01-22 02:13:03
気管支炎まで行く前に病院行かないとダメよ…
ブログ更新してる場合じゃないって。
コメントの投稿確認のPHSは電源オフ!!
耳鼻科か内科にレッツゴー!!

それにしても、この「カラオケ法理」ってやつは解釈のしよう次第でなんとでもこじつけられますよね。

・犯罪の疑いがもたれている小沢○郎を国会に引きずりださないで放置している民主党
・このままでは財政破綻することがわかりきっているのに具体策を打ち出さないで放置している民主党
・財政破綻したらとんでもないことになるのがわかりきっているのに超党派の議論をいまだに応じようと
 しない野党の方々

あ~ぁ、国会なんて犯罪者の巣窟みたいなもんですな(怒)
返信する
テレビ局の遠回りな自殺に巻き込まれていような (ARX7)
2011-01-22 10:02:45
 技術が進歩すればテレビが部品化。部品化すればそれを使った別の機器やサービスが出てくるのは当たり前…なのですが、どうもそれはお気に召さないようで。
 日本は家電の純輸入国に転落しました。もはやハイビジョンみたいな次のうねりを生み出すことは余程の奇跡がない限り無理でしょう。新しいうねりを潰す限り。こうして日本から仕事が逃げていく。こうして放送局の言うことを聞いてくれる機器メーカーが消えていく。AppleやYouTubeが日本の放送の言いなりになってるか?最後に困るのは自分自身だと思うのですが…。
返信する
Unknown (913d)
2011-01-22 18:50:14
うーん、納得いく法理なんでしょうか?これって判決が出た当初から解釈次第でいかようにでも対象を拡大できるということで非常に危険な法理ということだったのではないでしょうか。この法理を認めてしまうと例の録画補償金裁判もメーカーが支払えって解釈が成り立ってしまうんじゃないでしょうか。法治国家においては、法が現実に追い付いていないのなら法を改めるべきであり、こういう重要事項において曖昧な法解釈を認めてしまうと非常に危険なのではないのでしょうか。
返信する
考えれば考えるほど (nao)
2011-01-22 19:21:01
ロクラクって、機器をレンタルして自分で二ヶ所に設置するものでは無いのですか?
なんでこういう理屈になるのか考えれば考えるほど分かりません。
返信する
これでは (イナマ)
2011-01-22 20:59:52
>法廷意見が指摘するように,放送を受信して複製機器に放送番組等に係る情報を入力する行為がなければ,利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであるから,放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているかという点は,録画の主体の認定に関して極めて重要な意義を有するというべきである。したがって,本件録画の過程を物理的,自然的に観察する限りでも,原判決のように,録画の指示が利用者によってなされるという点にのみに重点を置くことは,相当ではないと思われる。

上記がダメなら、レコーダをレンタル商品に出来なくなるのだが…。
レンタルした機器を自分で設置してもダメってことでしょう。
返信する
ということは (nao)
2011-01-22 22:41:16
カラオケ法理でのカラオケ屋に相当するのは、今回のラクロクの件では誰になるのでしょうか。
ラクロクを作っているメーカーは、カラオケ屋ではなく、カラオケの機器を作っているメーカーに相当するのでは?
返信する
ロクラク (nao)
2011-01-22 22:55:05
また書き間違えてしまった。
返信する
Unknown (krmmk3)
2011-01-23 22:43:28
>emanonさん
医者にはそう言われたんですけどね、自分は全然痛くないんですよ、咳がひどいだけで。抗生物質とが医者から出されてますけど、そこまで大げさなものかな? と思います。
ダビ10がある限り、無線転送も不便がつきまとうかDRM付き変換済みファイルのどちらかという状況は永遠に変わらないでしょうね。

>容堂さん
ひどいとは全然思ってなかったんですよ。長いなと思っただけで。
国会議員は特権の塊ですからね。結局自分の職や立場を守るっていうのが一番大事と思っている人たちが中核に居続ける限り、政党はその手段でしかないですからね、当分国は動きませんよ。

>ARX7さん
最後に残るのは海外メーカーを全部追い出して、国内の鎖国化ってことになるしかないのでは。B-CASはその第一歩を飾るのでしょうね。

>913dさん
当時の空気までは知らないのですが、カラオケ店のやり方も悪質なもののようでしたし、他に取る手段もなかったと思いますよ。問題は後に万能判例に化けてしまうところまで裁判官には読めなかったってことでしょうか。法の改正も、今のようにマスコミ業界に便利に使われている以上、改正は多分無いです。ああいうのってマスコミが騒いでナボですから。

>naoさん
ロクラクだとソニーのビデオになってしまいます(^^)
それはおいといて、実はわたしもさっぱりわかりません。「親機のお預かりは一切できません」と断ってますし。とにかく「サービスつぶし」が最優先されちゃってる感じですね。レンタルだから本質は会社では理論が乱暴過ぎますし。

>イナマさん
無理矢理理屈をつけるとしたら、そういうことしか無いでしょうね。需要や法律よりもマスコミの意志優先が最高裁の考えなのでしょうか。
返信する

コメントを投稿

B-CAS&規制撤廃運動」カテゴリの最新記事