あなたのすきな本は何ですか?

桔梗です
訪問ありがとうございます
いろいろな想いを残してくれたお気に入りを紹介しています

夜市 恒川光太郎

2009-01-19 22:04:08 | 恒川光太郎
夜市 (角川ホラー文庫)
恒川 光太郎
角川グループパブリッシング

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ホラーというよりファンタジーに近かったです
静かで淡々と流れる時間と空気が心地よいです なんだか懐かしいような匂いも漂ってます

「夜市」
欲しいものが買える「夜市」に行き 才能と引き換えに弟を売ってしまった少年の話 
一度夜市に行った者は密かに開かれる夜市の気配を感じることができるそう
弟を買い戻すために再び夜市を訪れる少年は弟を見つけ出すことができるのか…


「風の古道」
どちらかというとこっちの方が好きな話
生きている人間は通ることはできないはずの「古道」
そこは日常世界とはまた別の世界がひろがっている
迷い込んでしまった二人の少年と 彼らを助けながら旅を続ける永久放浪者

『道は交差し、分岐し続ける。一つを選べば他の風景を見ることは叶わない。~誰もが際限のない迷路のただなかにいるのだ。』

眠れぬ真珠 石田衣良

2009-01-19 22:03:15 | 石田衣良
眠れぬ真珠 (新潮文庫)
石田 衣良
新潮社

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45歳の独身女性版画家と17歳年下の映画監督の卵の青年の恋のお話

石田衣良さんって繊細な恋愛話を書くので好きだったのですが
コレはあまりにリアルというか いかにも男性が書いたなというか…
しつこく繰り返される“更年期障害”という言葉と症状の描写とか
欲望に素直というより色情って感じになる女性がちょっとコワい

でも 確かに45歳版画家女性はカッコいいです
年齢を重ねることで失うものを認めながらも得るものの多さをわかっている
こういう風に歳を取れたらいいなと思います


『でも、現在がある』
南の島まで追っかけてきた青年が 私たちに未来なんかないと言う版画家に返す言葉
今がよければいいじゃんという刹那的な言葉ではないです
将来を憂うより今この時間を大切にってことですよね

途中 う~んと思うところは多々ありましたが
青年が口が上手すぎるとことかやたら積極的なのも不自然だったし
でもまぁ 終わりよければすべて良しってところです

子どもたちは夜と遊ぶ 辻村深月

2009-01-18 23:32:56 | 辻村深月
子どもたちは夜と遊ぶ(上)
辻村 深月
講談社

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正直 上下巻続けて読むのがつらくて 
何日も間空けて 他の本を間に入れてやっと読んだ
おもしろかったんです
でも 
読み続けると気持ちがぴーんと張り詰めてしまって痛い感じ
冷酷な殺人ゲームの描写や寄生蜂の話は夜うなされてしまいそうなほど…
それでも嫌悪感を感じないのは 人物の繊細な心理描写のせいなのか
好きな人への優しさ 友達に対する嫉妬や悪意や複雑な思い
そんなもんがぎっしり詰め込まれて書かれてるのも 読んでて痛い理由かも  

天才的な頭脳を持ちながらも暗い過去を引きずる浅葱
いつも穏やかな秀才・狐塚
華やかな容姿と痛々しいほど周囲へ気を使う繊細な心の持ち主の月子
などなど 登場人物たちがみんな美形で頭がよい
ちょっと現実感がないのだけど でもそういう設定って割と好き
恩田陸さんの学園モノもそういえばそうだし

繰り返される殺人ゲームの真相はちょっと意外だった

すれ違ってしまった想いが 残念です



SUPER MARCKET FANTASY Mr.Children

2009-01-15 15:35:47 | 番外編
SUPERMARKET FANTASY [通常盤]

TOY'S FACTORY Inc.(VAP)

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「HANABI」

いつまでもそばにいられるわけじゃないし いつでも会えるわけじゃない
それでも もう一回 もう一回… 
次の一回はないかもしれないから 後悔しないように大切に

『めぐり逢えたことでこんなに 世界が美しく見えるなんて
 想像さえもしていない 単純だって笑うかい?
 君に心からありがとうを言うよ』 

そんな風に思える人に出逢えるのは幸せ
自分もそんな風に想ってもらえたら もっと幸せ



「エソラ」

『でも雨に濡れぬ場所を探すより 星空を信じ出かけよう
 雨に降られたら 乾いてた街が 滲んできれいな光を放つ
 心さえ乾いていなければ どんな景色も宝石に変わる』

勝手な希望的観測とわかっていても 何か(誰かを)を信じたいときがある
信じられるってだけでもあたたかい



「少年」

『「幸せ」はいつだって 抱きしめたとたんにピントがぼやけてしまうから
 そうなる少し前でしっかり見届けよう なんて、できるのかなぁ?』

少し前がいちばんドキドキする瞬間かもしれない







重耳 中・下巻 宮城谷昌光

2009-01-09 15:16:31 | ★ま・や行の作家
重耳〈下〉 (講談社文庫)
宮城谷 昌光
講談社

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中巻下巻と怒涛の読了です
たくさんの人物が出てくるけどそれぞれ魅力的で 長さを感じずどんどん読めてしまいます
まるで映画を観てるかのようで 古代中国の歴史物って面白いですね

重耳の祖父・称がようやく晋を安泰に導いたのに 後を継いだ息子の詭諸(きしょ)が新しい若妻驪姫(りき)に溺れ 計略に嵌って重耳たち公子を次々追い出してしまう
そこから重耳の19年にも及ぶ長い流浪生活がはじまる

どんな苦境に立たされても 臣下を思いやり 親や妻を大事にする重耳
そんな穏やかで聡明な重耳を慕って 人々が集まり彼を守り立てていく

重耳を中国の覇者にするのが夢だと 重耳ならそれができると信じる臣下
そんな臣下を信頼し 期待に応えようとする重耳

こういう人と人との信頼関係は今も同じだ
人が人を育てる 人との出会いと関わりによっていろんなことが変わってく
仕事に限らず 尊敬できる師や信頼できる仲間に出会えるってのは幸せなことだと思う

優秀だったはずの兄は意外に脆く 君主の座につくことなく自害
愛嬌があり賢かったはずの弟は甘やかされたせいか浅薄な人間で 君主になるもののすぐに裏切られる
結局成功したのは平々凡々としてた重耳
持って生まれたものよりも環境が大事ってことか
かわいい子には旅をさせよとか 苦労は買ってでもせよとか そのとおりかもしれないと思う

長い長い重耳の流浪生活の苦労が報われてやっと君主となる重耳の姿に感動 
一緒に苦労した臣下たちもさぞ嬉しかっただろうと思う

とても面白い小説でした

レキシントンの幽霊 村上春樹

2009-01-04 21:57:02 | 村上春樹
レキシントンの幽霊 (文春文庫)
村上 春樹
文藝春秋

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つかみどころのない不思議な雰囲気の七つの短編集
やっぱり村上春樹さんは長編よりも短編の方が断然好き

「氷男」「七番目の男」もよかったけど

イチオシは「沈黙」

高校時代にクラスメートから無視という嫌がらせを受け それに耐えた男の話

頭の回転と要領の良さで人の注目と人気を集めるだけの浅薄な青木 主人公は彼に嫌がらせをして優越感にひたっている青木を見て憐れみにも似た感情を覚える

『この男にはおそらく本物の喜びや本物の誇りというようなものは永遠に理解できないだろうと思いました。~ある種の人間には深みというものが決定的に欠如しているのです。~その深みというものの存在を理解する能力があるかないかということです。でも彼らにはそれさえもないのです。それは空しい平板な人生です。どれだけ他人の目を引こうと、表面で勝ち誇ろうと、そこには何もありません。』

『でも僕が本当に怖いと思うのは、青木のような人間の言いぶんを無批判に受け入れてそのまま信じてしまう連中です。自分では何も生み出さず、何も理解していないくせに、口当りの良い、受け入れやすい他人の意見に踊らされて集団で行動する連中です~彼らはそういう自分たちの行動がどんな結果をもたらそうと、何の責任も取りやしないんです。本当に怖いのはそういう連中です。』

確かに 人を苛めて嬉々としている人間も怖いけど 自分の軸もなく安易に流される人間が一番怖い
誇り高く潔く孤独と闘った主人公はカッコいいと思う 

それともうひとつ ずしっときた文章
『人は勝つこともあれば負けることもあります。でもその深みを理解できていれば、人はたとえ負けたとしても傷つきはしません。人はあらゆるものに勝つわけにはいかないんです。人はいつか必ず負けます。大事なのはその深みを理解することなのです。』

山田詠美さんの「風葬の教室」と同様のテーマ こちらは男の子版といったところでしょうか

ひつじが丘 三浦綾子

2009-01-02 17:18:39 | ★ま・や行の作家
ひつじが丘 (講談社文庫)
三浦 綾子
講談社

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高校を卒業してすぐ友人の兄・良一に求婚された菜穂実
純粋で子どものように無邪気な彼の愛を信じて 駆け落ち同然に結婚するも態度は豹変する お酒飲んで暴力は振るうわ 浮気はするわ…
そんな良一から離れた菜穂実の心は 以前好意を示してくれていた男性に惹き寄せられる でもその男性は友人・京子の好きな人で…

あらすじを書くと陳腐な恋愛モノのようになってしまうのだけど
でもそんな単純な話じゃない 

誰かが悪いわけじゃない 
相手の幸せを願うあまりに心がすれ違ってしまったりする
頭ではわかっていてもどうしようもない心の動きってのはある

自分の気持ちと相手の幸せとを天秤にかけて かたむくのはどっちだろうか



テーマは“愛と赦し”

普段シラフで聞いたら赤面してしまうような言葉が随所に出てくるけど 不思議と物語に溶け込んでて違和感はあまりない

『愛とはゆるすことだよ。ゆるしつづけることだ』
『愛するとはね、相手を生かすことですよ』

三浦さんは敬虔なクリスチャンだったそうで これらのセリフにとても説得力がある

人は神じゃないから過ちをおかすのは当然のこと
大事なのはゆるすこと 過ちを繰り返してもゆるし続けること


ひとはよわいものよ とてもよわいものよ
ひとはつよいものよ そしてはかないもの
そんな こっこの詞がふと思い浮かぶ


弱さも脆さも 全部ゆるして それでいいと
そのまんま受けとめて それでいいと
人に対しても自分に対しても
そういうふうに生きていけたらいいなと思う