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仏果を得ず 三浦しをん

2011-09-23 10:09:41 | ★ま・や行の作家
仏果を得ず (双葉文庫)
三浦しをん
双葉社

文楽(人形浄瑠璃)を一度観て虜になり その世界に飛び込み 
太夫(文楽で義太夫を語る人)としての修業を積む主人公・健

義太夫に熱い情熱をかける健が 師匠や相方の三味線ひきや友人とのやりとりの中で さらに恋をすることで 人間を描く文楽の真髄をつかみ 人としても太夫としても成長していく青春小説
青春とはいっても主人公の年齢はおそらく30代 それでも青春は青春 歳には関係ない!(笑)


恋は唐突に落ちるもの

相手が芸でも人でも同じ
夢中になるのに 理由なんかない
気がついたら好きになってる
心捉えられた瞬間は覚えてても どうしてなのかは本人にすらわからなかったりするもんだ

さて その恋のお相手の真智さんが あっけらかんとしてて実にいい
文楽に熱中するあまり 「ちっともそばにいてくれへん」と今まで付き合っていた彼女から振られ続けていた健
決死の覚悟で 自分にとっては文楽が一番だから「二番目でもいいか?」と問う健に
あっさりと「ええよ」と答える真智 さらにその後続ける言葉もホント痛快で
真智のおおらかさに心から拍手したくなる
「私と○○とどっちが大事なのよっ!」なんてことは 男の人には言ってはいけないのだろう


それから 印象に残ったのが健の友人の言葉

『恋愛でダメにならない秘訣を知っとるか?相手に何かしたろと思わんことや』
『幸せにしたろとか、助けてあげんととか、そんなんは傲慢や。結局お互いにもたれかかってぐずぐずになるで。地球上に存在してくれとったら御の字、くらいに思うておくことや。』

わかる それはそうだろうと頭では思う
でもちょっと寂しいなとも思うのだ 
せっかく縁あって好きになった相手なら 何か役に立ちたいし関わってほしいとも思うのだけど
そんなのは自分のエゴなのかもしれない 
本当は ただそこに居てくれるだけで充分と そう思わなきゃいけないのかもしれないなぁ



読む前は 文楽?じょうるりってどんなの?近松門左衛門?
むずかしそう…と思ったけど そこはさすがしをんさん
人の脆さや情けなさに向けられる温かい目線が感じられる文楽という伝統芸能
文楽作品そのものにも興味が湧いてくるほど わかりやすくその魅力を伝えている 

「油地獄」という演目の解釈をめぐっての太夫達の会話

『恋愛で男が要求される、一番大切なことは?』
『優しさですかね?』
『馬鹿か、きみは。色気だよ。』


ジェノサイド 高野和明

2011-09-22 22:19:24 | ★さ・た行の作家
ジェノサイド
高野和明
角川書店(角川グループパブリッシング)

約30年も前に ひとりの科学者によって書かれた「ハイズマン・レポート」
それは人類滅亡のシナリオ
小惑星の衝突 地磁気の変動 核戦争 新種のウイルス
そして―

米国ホワイトハウス 大統領や補佐官やCIA長官らが集まる閣僚会議で取り上げられたひとつの報告
「人類滅亡の可能性 アフリカに新種の生物出現」

同じ頃 日本で創薬を学ぶ大学院生・研人のもとに 一通の不可解なメールが届く
送り主は急死したはずの父 自分が進めていた研究の後を引き継いでくれという依頼
その研究とは ある新薬を合成すること
父の残したヒントを手がかりに新薬の合成に挑む研人

さらに アフリカ・コンゴでは秘密裏に 冷酷なある作戦が進行していく
その任務を背負わされた傭兵部隊は 内戦の続くコンゴで 想像を絶する悲惨で残酷な光景をまのあたりにする

創薬の研究 DNAの変異 遺伝病の治療 生物の進化論
アメリカの政治と指導者の心理
世界規模で繰り広げられる情報戦や ジャングルでの戦争やジェノサイド(大量殺戮)
さまざまな要素が複雑に絡み合い
日本とコンゴ ふたつの局面から 物語はあるひとつの真実に集束していく


おもしろかった

そして 怖かった

人間ってのは生来 凶暴で残虐な生物のようだ
人類の歴史は戦いの歴史 いつまでも戦争をくりかえす
自分の強さや優性を誇示するために 自分の欲望を満たすために 何でもする生き物
私達現代人が今この地球上で唯一生き残っている人類でありえたのは 知性ではなく残虐性のおかげだという

それでも 救いはある 
読み終わった後には そんな私達人間にも 救いはあると思える

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