あなたのすきな本は何ですか?

桔梗です
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いろいろな想いを残してくれたお気に入りを紹介しています

よもつひらさか 今邑彩

2008-09-30 20:18:56 | 今邑彩
よもつひらさか (集英社文庫)
今邑 彩
集英社

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12編の世にも奇妙な物語 
“戦慄のホラー短編集”と書いてあるとおり 戦慄の~は大げさなキャッチコピーだと思うけど 確かに背筋がぞくりとするような結末の話が多い

印象的なのは「よもつひらさか」
ひらがなだと何だかわからないのだけど 漢字で書くと「黄泉比良坂」
古事記に出てくる それを下ると黄泉の国に至る坂 現世とあの世の境目だそう
娘に会いに行くために田舎の坂道を歩いていた男性は 急に気分が悪くなり たまたま通りかかった青年に助けられる
歩いていた坂の名は よもつひらさか
もしそこで死者の差し出す食べ物を口にしてしまったら 二度と帰れなくなってしまう… 


未来を見せてくれる鏡の話「ささやく鏡」 生きているかのように変化する絵の話「遠い窓」も幻想的でおもしろかった

怖いけど かなり好きな雰囲気の作家さん
「鬼」もそうだったけど 危うい境目をうまく書く人って好き  

鬼 今邑彩

2008-09-30 19:59:48 | 今邑彩

今邑 彩
集英社

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人の心の隙間に住み着いてる鬼 平穏な生活をしてるぶんには気がつかないだけでもしかしたら誰にでも住んでるのかもしれない


そんな“鬼”を描いた8編の短編集

子どもを思う母親の心に棲む鬼「カラス、なぜ鳴く」
できた姉を慕う妹の心に現れた鬼「たつまさんがころした」
長すぎるかくれんぼの話「鬼」
美しい先生が大好きなあまりの「メイ先生の薔薇」

ダークサイドに引きずり込まれまではしませんでしたが 読んだあとちょっと鳥肌立ちました
特に女性ならではの 誰かを想い過ぎるあまりに壊れていく感じを書くのが上手ですね 
愛しいと想う気持ちと狂気とは表裏一体なんだなと思います

他人の“鬼”にふと気づいてしまった瞬間ってすごく心が塞ぐ
鬼を見つけるととても哀しい気分になってしまったり 怒りでムカムカしたりしてしまう
でもそういう危うさって私にもあるんだし きっとあって当然なんだろう
そんな心の鬼ともうまく折り合いをつけながら生きなきゃいけないんだろうな

宮沢賢治詩集

2008-09-22 22:10:27 | ★ま・や行の作家
新編宮沢賢治詩集 (新潮文庫)
宮沢 賢治,天沢 退二郎
新潮社

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何でもっと早く読まなかったんだろと後悔するほどよかったです

最初の「序」からすごいですね 
彼の思考の根っこのところがすごくよくわかります 
私達が実体のあるものとして見たり感じたりしているものはごく一部 時間や空間などの制約を取っ払うと実はもっといろんなものが存在してるのかもしれませんね 彼には何が見えていたんでしょうか

「春と修羅」「小岩井農場(パート九)」「告別」「眼にていふ」が好き

「眼にていふ」の最後のところ特に好きです
『あなたの方からみたらずいぶんさんたんたるけしきでせうが
わたくしから見えるのは
やっぱりきれいな青ぞらと
すきとほった風ばかりです』

科学的専門用語も多用されてる独特の世界には たくさんの音や色 風や空や光 いろいろなものが浮かび上がっていて
眼だけに頼らず 彼のように様々なものを見ることができたなら楽しいのだろうなと思います

となり町戦争 三崎亜記

2008-09-19 16:53:49 | 三崎亜記
となり町戦争 (集英社文庫)
三崎 亜記
集英社

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道路工事などの公共事業と同じように 町の経済活性化のためにとなりの町と戦争を始める ひとりの一般市民が突然スパイに任命されて戦争に参加する…
というお話

役所の戦争担当の人たちは 他の業務と何ら変わらず 淡々と戦争に関する業務をこなす

なんだろ あまりに淡々としすぎてて よくつかめなかった
どんな戦争をしてるのかも描写されていないし その辺は読者自身が考えろってことなのかな

最後に安っぽい恋愛話になっちゃってるのも気が抜けちゃったし
なんだか消化不良でした

設定は荒唐無稽でおもしろいと思ったんだけどなぁ

バスジャック 三崎亜記

2008-09-19 16:46:37 | 三崎亜記
バスジャック
三崎 亜記
集英社

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7つの短編集
これも三崎さんらしい あり得ない設定の不思議な話たち

私たちが見ているものは本当にそこにあるものなんだろうか
逆に 見えてないけどあるものって実はいっぱいあるんじゃないだろうか
そんなものを気づかせようとしてくれてるんだろか

現実とか記憶とか確かだと信じてるものでも 実はそうでもなくて
ときどき揺らいだりブレちゃったりしてるのかもしれない
それでも確かなものは“在る”よ そう言われてる気がした

一番良かったのは「動物園」
野崎のおじさんの言葉がいい
『その、何てぇんだ?自由とかよぅ、束縛されねぇとかよぅ、そんな上っつらな言葉に乗せられて檻から出ようとするばっかりがただしいことじゃあねえと思うんだ』
『それによぅ、ユズキさんを囲んでる檻ってのも、あんたを守るためにあんのかもしれねえし、もしかすっとユズキさん自身が作ったものかもしれねえからな』
乱暴だけど愛のある言葉だなぁと思う

鼓笛隊の襲来 三崎亜記

2008-09-19 16:29:43 | 三崎亜記
鼓笛隊の襲来
三崎亜記
光文社

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9つの短編集
どれもこれも現実にありえない設定
鼓笛隊が台風のように日本に上陸して襲ってくるとか
自分をリセットしたい人たちが覆面をかぶって生活するとか
ある一部の人間には押すとどうなるかわからないスイッチがついてたりとか…

ふしぎな雰囲気の話ばかり
星新一さんとか阿刀田高さんを髣髴させるという評もうなずける

温かかったり ちょっと背筋が寒くなるような終わり方だったり いろいろな感覚が味わえるけど
好きなのは
忽然と目の前から消えてしまった恋人への想いと期待を断ち切れずにいる主人公が
知恵の輪が解けるのと同時に 自分の気持ちにも決着をつける 「同じ夜空を見上げて」
待つことがかなわないのなら 祈ればいい
ほんわかと温かい気持ちになれる

治験 仙川環

2008-09-15 22:15:22 | ★さ・た行の作家
治験
仙川 環
双葉社

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失業中の30歳宮野は職安をでたところで見知らぬ外国人に“仕事をしないか”と持ちかけられる
その仕事とは アメリカの会社「マックス・イミュノ」の健康食品を日本で販売すること
末期ガンに劇的に効くという健康食品 法外な報酬 どっからみても胡散臭い話を宮野は「ま、いっか。」といとも簡単に引き受ける
案の定その健康食品によるであろう健康被害が起こり 仕事を紹介した外国人は会社ごと行方をくらます
母が騙されたという女性と共にアメリカまで渡り 真相を突き止めようとする宮野だが 意外な展開が待ち受けている

うーん あらすじを書くととても面白そうな医療モノかと思えるのだけど…

なにしろ軽い 軽すぎる 素材は悪くないのに中身がスカスカな感じ
主人公もすぐ「ま、いっか。」と軽すぎる言動が鼻につく

こんなデタラメな健康食品を簡単な気持ちで売って一儲けしようなんてとんでもない話
ガンを患った人やひどいアトピーの人 彼らは藁にもすがる思いで祈るように怪しい健康食品に手を出す そんな心に付け込む商売を簡単に引き受ける宮野にむかっ腹が立って仕方がなかった でもそんな話が現実にもゴロゴロ転がってるんだよな

ただの作り話なのに 何むきになってんだろ 私…

クライマーズ・ハイ 横山秀夫

2008-09-11 21:09:16 | ★ま・や行の作家
クライマーズ・ハイ (文春文庫)
横山 秀夫
文藝春秋

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硬質な話

1985年に起きた航空機墜落事故 地元新聞社でそのニュースの全権デスクに任命された悠木
彼の記者として親として人間としての苦悩とか葛藤が丁寧に書かれてる
読む前は敏腕記者のサクセスストーリーかと思ってたのだが まるっきり逆
ふつうのおじさんが悩んで迷って失敗しながらも 前に進んでいく物語
最後まで自分の仕事に誇りを持って信念を貫いた悠木はカッコいいと思う

『生まれてから死ぬまで懸命に走り続ける。転んでも、傷ついても、たとえ敗北を喫しようとも、また立ち上がり走り続ける。人の幸せとは、案外そんな道々であうものではないだろうか』

クライマーズ・ハイ
高い山を上を目指して必死に登っていると 興奮状態が極限にまで達して 恐怖感とかがマヒして ガンガン登っちゃう そんな状態になるそうだ

高揚感と達成感に導かれるように 高みへ高みへ…ってなるんだろな
その心理はわからないでもないのだけれど


ユージニア 恩田陸

2008-09-11 20:47:55 | 恩田陸
ユージニア (角川文庫 お 48-2)
恩田 陸
角川グループパブリッシング

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文庫化されたので買って再読

数十年前に起きた大量毒殺事件 犯人の自殺により終結したはずの事件だが真相は…

後に集められた 生き残った人や関係者達の証言
初めは断片だったものが 進むにつれて少しずつ本当に少しずつ繋がってゆくのだけど 繋がったかと思うと違っていたりして

読みながらわからなくなってまた戻ったり
犯人はわかる気がするんだけど 肝心の動機とか 犯人の考えていることが見えてこない 見えたと思うと崩れてしまう

最初に読んだときに犯人だと思っていた人物は もしかして犯人じゃないのか?
今回読み返してそんな気すらしてきた

冒頭の意味ありげな詩
『ユージニア、私のユージニア。
私はあなたと巡りあうために、
ずっとひとりで旅を続けてきた。…』
そして 白い百日紅と青い部屋 彼女は何を懺悔していたんだろうか 感情を表に出さなかった穏やかな彼女が秘めていたものは何だったんだろうか

なんとも曖昧な幻想的な 独特な雰囲気の小説

結局繋がりきらなかった
時間をあけてもう一度読んでみるかな また違うものが見えてくるのかもしれない

装丁が単行本の方が断然よかった そっち買った方がよかったかなと今更後悔…

頭のうちどころが悪かった熊の話 安東きみえ

2008-09-07 22:22:38 | ★あ行の作家
頭のうちどころが悪かった熊の話
安東 みきえ
理論社

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以前新聞に載っていた小泉今日子さんの書評が印象的で ずっと読んでみたいなと思っていた本

いろいろな動物が出てくる七つの寓話 つかみどころのない不思議な話

でも『七つの寓話の動物達は、みんな誰かのことを思って生きている』という素敵な書評どおりの話

「ないものねだりのカラス」がおもしろかった 健気な切ない話かと思ったら 肩透かしくらった…

むずかしく考えることはない 大事なことはそう多くはないんだと思う