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僕僕先生 仁木英之

2010-09-21 18:53:49 | ★な・は行の作家
僕僕先生 (新潮文庫)
仁木 英之
新潮社

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働かず学ばずそして何もなさず 今で言う草食系なニート青年・王弁
ぐうたらとお気楽な日々を過ごしていたが ある日父の使いで仙人に会いに行く

仙人といえば 白髪で長い髭をたたえた風格ある老人を想像するけど
王弁が出逢ったのは“僕僕”という美少女仙人
行きがかり上その弟子となった王弁は 美少女仙人・僕僕と一緒に修行の旅に出ることになる

未知の場所で いろいろな人(人間以外も含む)やものに出会ったり
幾多の苦難を師匠の力を借りながらも自分で乗り越えていったり 
今までにない様々なことを経験する王弁
僕僕に淡い想いを抱くようにもなり さらにその想いを前向きな力にもしながら成長していく


これがまたホントにすこぶる楽しく愉快痛快なお話になっている

素直な王弁も良いし 
どこか飄々としながら でも真に迫る言葉で王弁を導く僕僕も 良い

 
『全ての物は触れたものに影響を受ける。それがたとえ一瞬であろうと、百年の交わりであろうと全く影響が無いということはありえない。』

『縁が無いところを無理やり結んでもそれはよい結果を導かない。』

『無駄なことはせぬほうが天地の摂理に合っている。』

『なにか変化が必要な時に、変化しないのは逆に無理を生んでしまう。』

何かをしたり変えたりするときは 時間と思いと両方がそろわなければダメで
機が熟してそして充分に気も満ちた時 はじめて物事はするりと動く
そういうものなんだろうなと思う


『喜怒哀楽なんていうものはその場限りのものだ。時が過ぎ、状況が変わればあっさり変化するし、どんな強い感情も醒めてしまう。そして感覚に絶対的な正解なんてない。でもだから心を無にして、とはボクは思わない。感情があるからこそ人間はいいんだよ。』

仙人と人間
ずっと一緒にはいられないのは 普通に考えてもわかること 
時間の長い短いは仕方ないし 違うものを無理に合わせることも出来ない
それでも 今の自分に許された時間の長さで一緒にいたい

そんな想いでいる王弁と 師匠・僕僕の旅は どうやらまだまだ続くようで…
この先もとても楽しみです


薄妃の恋―僕僕先生 (新潮文庫)
仁木 英之
新潮社

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胡蝶の失くし物―僕僕先生
仁木 英之
新潮社

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猫を抱いて象と泳ぐ 小川洋子

2010-09-09 20:40:18 | ★あ行の作家
猫を抱いて象と泳ぐ
小川 洋子
文藝春秋

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“幸せ”ってものに定義は要らないと思う
何が幸福で どんな時に幸せを感じるかなんて たぶん人それぞれでいい


ちょっと異質な容姿と独特の気質のせいで 周囲に馴染めずにいたひとりの少年
学校にも友達なんかいない彼が ふと帰り道でマスターというチェス好きのおじさんと出会ったことから チェスの世界にのめり込むようになる
マスターの手ほどきを受け メキメキと腕を上げていく少年は
やがて“リトル・アリョーヒン”というチェス人形として 小さな箱の中で様々な相手と対戦する日々を送るようになる


『最強の手が最善とは限らない。チェス盤の上では、強いものより、善なるものの方が価値が高い。』

マスターのくれた言葉どおり 彼の指すチェスはいつも思いやりにあふれそして美しい
盤の上に静かに広がるチェスの世界は無限に大きく優しく まるで詩的な思考の海のよう

小さな小さな箱の中で無理に体を折り曲げて 来る日も来る日もチェスをする
そんなのさぞ辛い退屈な暮らしだろうと 人は思うかもしれない
でも 
美しいチェスの世界を自由自在に泳ぐリトル・アリョーヒンの姿は 不思議なことにとても幸せそうだ


アリョーヒンのチェスを見守り 棋譜をつけ 
戦いを終えて箱から出たアリョーヒンの痛む身体をさする
いつも傍らにいるミイラという名の女の子

ミイラとアリョーヒン このふたりの関係もとても静かだ
ほんの短い時間そばにいて少しの言葉を交わすだけ
会えない時にやりとりする手紙に記されているのも たった数文字
でも それだけでもお互いの気持ちは通じあって
その手紙は相手への敬意と慈愛に満ちてる
ふたりの間にある繋がりは どんなものよりも深くて強いんじゃないかと思えてくる
想いを伝え合う方法も確かめる方法にも 決まりなんか要らない

自分自身にもしくは自分達にちょうどいい形を見つければ 人とは違っていても それも幸せ


小さくても狭くても そして切なくても
リトル・アリョーヒンとミイラの人生は とても豊かで幸せ
きっとそうだったに違いないと思う

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よろこびの歌 宮下奈都

2010-09-08 10:03:11 | ★ま・や行の作家
よろこびの歌
宮下 奈都
実業之日本社

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一生懸命生きてる女の子達への優しい視線と応援メッセージが 全編に感じられる
とても宮下さんらしい連作集


新設の女子高に入学したいろいろな事情を抱えた女の子達が
ひとつの歌を通して それぞれ悩んだり泣いたり笑ったりしながら成長していく

音楽家の母を持ちながらも音大付属校の受験に失敗した女の子
家にはピアノを買う余裕すらないけど音楽が好きな女の子
肩の故障で大好きなソフトボールをあきらめ心を閉ざす女の子
誰もが見惚れるほどきれいなお姉さんを羨んでいた妹
しっかり者で賢い妹に実はコンプレックスを持っていた姉
などなど
性格も才能も環境もさまざまな女の子達

でもみんな同じ

はじめは 自分だけが何も持ってないし何もできないと思っていた女の子達
人が持ってるものばかりが羨ましくて 自分以外の人がすごくキラキラして見えて
どうしてもぐらぐらと不安になってしまう
 
それでも 周囲との関わりを通して 自分が持っている大事なものに気がついていく
好きなことややりたいことを探して ひとつづつ積み上げて 
少しずつ自信を持って前を向いて歩いていけるようになる
みんなそうやって自分の居場所を見つけて 自分の道を作って進んでいくんだろう

たくさんの人の力を借りながら でもちゃんと自分自身で 
しっかりと揺るぎない自信をつけていかなきゃいけないんだよなと思う


それはいくつになったって同じだ
15歳の少女達だって 四十路のおばさんだって たぶんそれは死ぬまで一緒

本当にこれでいいのかなって迷ったり 
せっかく積み上げたものが崩れそうになって焦ったり 
見つけた場所をとられちゃうんじゃないかと不安になったり
つまらないことで揺らいでしまう自分をたてなおすのに
それはもういつもいつも必死だ


でもそれは私だけじゃないんだろう みんな同じような思いを抱えてる
読みながら みんながんばれと思い 自分もがんばろうと思える
そんな元気をくれる本


それから
ちょっと嬉しいこともありました
私が書いたこの本の紹介を読んだ 教師をしている友人が
生徒達にも読ませたいと 図書室においてくれるようリクエストを出してくださったそう

私のレビューがきっかけで 図書室にこの本が置かれて 
誰かがふと手に取って読んでくれて
ちょっと落ち込んでいた子が勇気付けられたり
何かがかわる最初の一歩になったり
そんなことがあるかもしれないと思うと 何だかとても嬉しかったりします
友人に感謝感謝です

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