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人のセックスを笑うな 山崎ナオコーラ

2011-07-21 20:21:30 | ★ま・や行の作家
人のセックスを笑うな (河出文庫)
山崎ナオコーラ
河出書房新社

ずっと前から衝撃的なタイトルが気になりながらも 本屋さんで素通りしてしまっていた本

いざ読んでみたら衝撃的でもなんでもなく そこに流れる空気は むしろ静謐


美術学校に通う19歳の男の子と39歳の平凡な美術講師ユリの恋愛小説

ユリには結婚生活14年の夫がいる

つまりは いわゆる フリンだ

そして歳の差は20

小悪魔な女教師が生徒と火遊び
倦怠期で夫に飽きた女が若い男をたぶらかした
夫に相手にされない中年女が年下男に寂しさ埋めてもらった

傍からはそんな風にしか見えないかもしれないし 
ずるい女で 都合のいい女かもしれない


ユリにとって果たしてこれは本当に恋愛だったのか?

私は そうだと思う

小説はあくまで“オレ”の視点で書かれ ユリの発した言葉はあっても心情はほとんど描かれていない
でも ユリも恋をしてた
“オレ”が感じていたのと同じ切なさや苦しさを感じていただろうし 同じように相手を慈しんでたと思う


お互い 寂しかったわけでも 何かに不満があったわけでもない
相手に幸せにしてもらおうとか 一緒の将来を考えようなんて思っちゃいない
誰かを好きって思って 会いたいって思って 欲しいって思う
それが倫理的に正しいといえない時もあるし 不倫を推奨するわけでもない 
でも ひとってそういう迂闊なとこもあるんだろう


ふいに 一緒にいて心地よい相手を見つけてしまい かけがえのない時間を過ごした

ただ それだけ

ただふたり一緒に過ごすわずかな時間
長い一生の時間の中で そうやって切り取られた 止った時間や名前のない空間があるのも悪くない


本気だとか遊びだとか 不倫だとか浮気だとか
無理に何かの型にあてはめたり 分類をして名前をつけたりする必要はない


“オレ”がこの先 残った想いを大事に抱えて生きていくのと同じように ユリもきっとこの時間を忘れない


淡々と単純に“好き”って想いだけがそこにあった

それでいいのではないだろうか


『しかし恋してみると、形に好みなどないことがわかる。好きになると、その形に心が食い込む。』

『言葉は何も伝えて来ない。ただ温度だけは伝えられる。』