あなたのすきな本は何ですか?

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いろいろな想いを残してくれたお気に入りを紹介しています

九つの、物語 橋本紡

2008-08-31 14:38:16 | ★な・は行の作家
九つの、物語
橋本 紡
集英社

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やさしくてあたたかいお話
瀬尾まいこさんとなんとなく雰囲気にてるかな…と思った

大学生の女の子ゆきなはちょっと引っ込み思案で地味目なフツーの女の子
対してお兄ちゃんは かっこよくて話上手でマメでひたすら明るく前向き おまけに料理も上手 もちろんやたら女の子にモテる でも実は…

ゆきなは 彼氏の香月君やお兄ちゃん 周りの人たち いろんな人と関わりながら考えて迷って 喜んだり落ち込んだり いろんなことに気がついて自分自身を見つけていく
その時の状況やゆきなの気持ちが それぞれの章で有名な九つの物語とリンクしている

お兄ちゃんのキャラがおもしろい
女の子にはひたすら優しく「好きだよ」とか「きれいだよ」とか湯水のように垂れ流す でもそれは決して口先だけの言葉を吐いてるわけでなく まじめにその時は本当にそう思ってるんだそうで それはかなり生粋の女ったらしだ

周りから見るとお兄ちゃんはかなりふざけた人間だろう 
だけどお兄ちゃんは『深刻になりすぎることの無意味さをわかって』いて 『辛くて、悲しくて、どうしようもないときこそ、笑うことが必要なんだって気付いている』 そんな素敵な男の子だ

『黙ってるくらいだったら、何か話したほうがいいよ。あるいは動いた方がいい。たとえ間違った方向に進むことになったとしても、立ち止まっているよりはずっとましだ。だって歩いてさえいれば、どこかにはたどりつくだろう。想像もしなかった場所かもしれないじゃないか、そこが。』
『真面目さが必ず何かを生むわけじゃない。呑気に笑って、何も考えず、ただ歩く方がいいときだってあるはずだ。』

九つの物語=ナインストーリーズ? サリンジャー関係あり?
と思っていたら やっぱり最終章絡んでました
予感的中がちょっとうれしい

レインツリーの国 有川浩

2008-08-25 22:15:53 | 有川浩
レインツリーの国
有川 浩
新潮社

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昔読んだ大好きな本をきっかけにネット上で知り合ったふたり
自分と似ていて少し違う感性 琴線に触れる誠実な言葉と理屈
そんなものを見つけてしまったら惹かれるのは当然だろう

彼女の方は抱える事情と元々の性格のせいで なかなか素直になれない
それでも何度も切れかかる糸を男の子は一生懸命繋ぎなおす

繋ぎかかった糸を やっぱり面倒くさいからと断ち切ってしまうのは簡単なこと
いつまで繋いでいられるかわからない糸 
いつ切られるか 切りたくなるか そんなことを心配して憂うより
今この繋がってる瞬間を大事にした方がいいのではないか
そう思った

女の子の性格がそのまんま自分の嫌な面と被るのでギクリとしながら読んだ
僻みが強いくせにプライドが高くて面倒くさい
静かに意固地でこじれるとしつこい
普通の女の子みたいにかわいくいられない
あー まるっきり私だ
めんどくさくなると「もういいっ」っていきなり断ち切ってしまうとこなんてそっくり

それでも彼女と同じく言葉は大事にしてるつもりだ
大切な人がくれる言葉をひとひとつ大切に受け止める
それが仇になることもあるけど…
胸を打つ文章もコピーして気軽にいろんな人に送れる世の中だ 
私がもらった言葉もただそんな中のひとつかもしれない
そんな軽い言葉なんか受け流してしまえばいい そうすれば楽だと思うけど
でもやっぱり信じていたいのかもしれない

くまとやまねこ 酒井駒子

2008-08-21 21:35:21 | ★さ・た行の作家
くまとやまねこ
湯本 香樹実,酒井 駒子
河出書房新社

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大好きな酒井駒子さんの絵本

ある朝 くまのなかよしのことりがしんでしまうところからお話がはじまる

心を閉ざしたくまはやまねこと出逢い ことりとの思い出と向き合うことで 歩き出すことができるようになる

喪失と再生

全部モノトーンの絵で暗くなってしまいそうなのに
酒井さんの絵からはとてもやさしい光があふれます
言葉のないページもあれば 逆に絵のないページもある
その余白が何ともいえません

森のなかのぽっかりと日のあたるばしょの絵が大好き

流れる星は生きている 藤原てい

2008-08-18 23:44:17 | ★な・は行の作家
流れる星は生きている (中公文庫BIBLIO20世紀)
藤原 てい
中央公論新社

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終戦時 三人の幼い子どもを抱えて満州から引き上げた藤原ていさんの
壮絶な手記
私なんかがレビューを書くのはどうかと思うほど 書かれている事実は重い

苦難の連続の中で人間はこんなにも強くなれる
希望を捨てずにいられることができるんだと驚いた
いつの時代も 困っている人につばを吐きかけるような人間もいれば
手を差し伸べ希望を捨てるなと励ます人間もいる
非道な人たちに酷い目にあわされながらも
着ているものや姿はボロボロになっても 
最後まで誇り高く生き抜いた藤原さんがすばらしいと思う

心にずしりと残る本

時の“風”に吹かれて 梶尾真治

2008-08-18 08:45:14 | ★か行の作家
時の風に吹かれて
梶尾 真治
光文社

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いろいろなテイストの11の話が詰まった短編集
シリアスだったりブラックだったりシュールだったり
かなりくだらなくて笑っちゃうような話もある

面白かったのはタイムトラベルものの表題作「時の風に吹かれて」
過去に戻ってやり直してみたい もしあの時違う選択をしていたら…
誰もが一度は抱くそんな思い
過去へ向かうことは不可能といわれているタイムマシン
いつかは可能になるのかな
時間を遡って大切な人を助けることができるようになるのかな

「その路地を曲がって」「再会」もほんわかしていてよかった
実際には目に見えないかもしれないけど 人の想いが作り出すものってあると思う

詩集「エイプリル」 銀色夏生

2008-08-13 20:20:44 | 銀色夏生
詩集 エイプリル (角川文庫 き 9-66)
銀色 夏生
角川グループパブリッシング

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最近子育てエッセイとか旅行日記のような本ばかりで遠ざかっていたのですが
久しぶりに初期の頃の銀色夏生さんが戻ってきたようで嬉しい

このふたりは恋愛関係とは言えないような淡い微妙な関係なんだろうか
お互い言葉にはしなくても深く信頼してるような認め合ってるような感じ

『愛じゃない』とか『オファーと合意』とか
『ふたつの世界』『会うということ』『励ます』…
いつも気に入ったページの端を折りながら本を読むんだけど 
折ってばかり
一番は とても短い詩だけど『望み』
なんか知ってるなこういう気持ち

夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦

2008-08-07 21:08:51 | ★ま・や行の作家
夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦
角川書店

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はじめは古めかしい硬い感じの文章に慣れなくて読みづらかったんだけど いったん入り込めたら面白かった

天然系のかわいい女の子と彼女に惚れてなんとかお近づきになりたいと四苦八苦する男の子(一歩間違えばストーカーだよ…)
外堀埋めることだけに必死でなかなか直接行動に出られない男の子が純粋でいい
ふたりの周囲や間に紛れ込んでくる不思議なキャラクターの面々がくりひろげるドタバタ喜劇
一番雰囲気近いのは昔のマンガ「うる星やつら」かも

第二章の学園祭の話がハチャメチャで面白い
緋鯉を背負った女の子と韋駄天コタツと学園祭テロリストとパンツ総番長と象の尻女の追いかけっこ
さらに天狗やらごはん原理主義者やら閨房調査団やら絡んできて…
何のことやら
たぶんレビュー読んでもわかんないだろうなコレ

ドタバタの中で吸い寄せられたひと言
『一期一会という言葉を知っているか。それが偶然のすれ違いになるか、それとも運命の出逢いになるか、すべては己にかかっている。』

イニシエーション・ラブ 乾くるみ

2008-08-06 22:47:51 | ★あ行の作家
イニシエーション・ラブ (文春文庫 い 66-1)
乾 くるみ
文藝春秋

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ラスト2行で脳天かち割られました
あなたは一体誰?!

そりゃ2回読みたくなるよ

恋愛小説としては内容は真新しいものではないと思う
げにおそろしきはおんななりってとこか

どの恋愛も通過点 死ぬ前に最後にしてた恋が本物だねきっと

楽隊のうさぎ 中沢けい

2008-08-04 23:30:31 | ★な・は行の作家
楽隊のうさぎ (新潮文庫)
中沢 けい
新潮社

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子どもでもない大人でもない微妙な時期の入り口に立つ中学1年生の男の子・克久
引っ込み思案でちょっと不器用な克久は 心の中にうさぎを飼っている
そのうさぎはいじめられる克久に言い返せとはっぱをかけたり 叱られてる最中に歌ってたりする
克久の心の中の葛藤や矛盾が手に取るようにわかって面白い
なんとなくクラスでも浮いている彼は吹奏楽部という居場所を見つけ少しずつ成長していく

ひとりの少年の淡々とした成長物語だ

まず各パートが煉瓦を焼き その一つ一つを積み上げてやっと一個の構築された音楽になる 
吹奏楽ってのはそういうものだそうだ

阪急電車 有川浩

2008-08-04 08:52:19 | 有川浩
阪急電車
有川 浩
幻冬舎

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めっちゃ ええ話やなぁ~と関西弁で感想を言いたくなる

偶然電車に乗り合わせただけの人たちの人生がほんの少しだけ重なる
繋がることで 何かに気がついたり 勇気をもらったり 
恋が始まったり 終わったり
こういうのってとても幸せなひとときだと思う

結婚寸前の彼氏を地味なおとなしい友達(厳密には友達ではないが)に寝取られ
結婚式に討ち入る翔子の話が好き
そりゃ それくらいの仕返しをしたっていい “恨むな”なんてキレイ事だ
仕返しをしたあとの凛とした翔子がカッコいい

えっちゃんとアホな彼氏の話もおもしろい
アイロンの話は涙が出るほど笑えたし
やけっぱちになるえっちゃんをなだめる彼の優しさと誠実さがいい

ちょっと甘~い素敵なお話がいっぱい詰まった連作短編集だと思う
少しずつ重なっているから連作ともちょっと違うのかな…?
リレーのバトンパスみたいな感じ

新撰組血風録 司馬遼太郎

2008-08-01 22:16:17 | ★さ・た行の作家
新選組血風録 (中公文庫)
司馬 遼太郎
中央公論社

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時代小説も司馬遼太郎も初挑戦
友達が貸してくれなければ 絶対自分では手に取らないだろう

これが予想以上におもしろかった

新撰組 カッコいいけど要はただの人斬り集団じゃないか そう思ってたけど 
この本では今まで名前も聞いたことないような人にもスポットがあたって
とても人間味あふれる話が展開されている

一番好きなのは当然「沖田総司」
ひょうひょうとして どこかいつまでも無邪気な子どものような雰囲気がいい

『胡沙笛を吹く武士』の鹿内薫も印象的
自分の命も顧みず敵に切り込んでいった勇ましい武士が
愛しい妻を手に入れて子どもを得ると 急に牙の抜け落ちた獣のようになってしまう
一番に守るべきものは 大きな理念や共に戦ってきた同志ではなく
自分の大事な家族とその家族を支えるべき自分の命
そんな当たり前ことも 許されるようになったのはつい最近のことなんだ

敷居が高いと思っていた司馬遼太郎さんの本
他のも時間ができたらゆっくり読んでみたいものだ