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はやぶさの大冒険 山根一眞

2010-11-24 16:05:44 | ★ま・や行の作家
小惑星探査機 はやぶさの大冒険
山根 一眞
マガジンハウス

小惑星探査機「はやぶさ」が 今年6月地球に帰還したのは私達の記憶にも新しい

そのはやぶさが 2003年に地球を旅立ち 小惑星イトカワの岩石のかけらを拾って
数々の苦難を乗り越えてまた地球に戻ってくるまでの7年間 60億キロの旅を追ったドキュメント
プロジェクトチームに密着して取材してきた山根一眞さんが 一般の人にもわかりやすくはやぶさの冒険の全容を伝えてくれてる本


本来ならもう3年早く 2007年に帰ってくる計画だったはやぶさは
度重なる故障とトラブルで 一時は音信不通の制御不能で行方不明にさえなっていたそう
それでも諦めることなく
“かならず無事でいてくれる”“絶対に地球まで帰せる”
そう信じて懸命に手を尽くすエンジニア達の熱い思いに 読んでいるこちらも胸が熱くなる
瀕死の状態でもなお 彼らの思いに応えるように 何度も何度も残った力を振り絞るはやぶさがまた感動的で
その姿は 単なる機械ではなく まるで魂が宿ってて意思の疎通ができるかのよう

ようやくたどり着き 採取サンプルを入れたカプセルを切り離し 
最期に地球の姿を撮影したはやぶさは 大気圏に突入して燃え尽きてしまうのだけど
その大気圏突入を地上から捉えた写真が掲載されていて これがまた殊に美しい
山根一眞さんオフィシャルサイト


はやぶさが帰ってくる日を明日に控えたエンジニアの言葉がいい
奇跡なのか偶然なのかとみんなが話す中

『奇跡だとはいいたくないですよね。やっぱり努力でしょうね、努力です。とても「おもしろかった」ので、みんな一生懸命努力したんです』

さらにそれについての山根さんのコメントもまたいい

『「おもしろい」という思いはとてもだいじ。「おもしろい」とは好奇心をかきたてられることであり、それが文化や文明の最大の原動力になってきた。(中略)「おもしろい」からこそ努力をして成果を手にしてきたのだ。』


さて ちょっと話は変わりますが

先日JAXAでは新しい宇宙ステーション補給機の愛称を募集していました
何だかこのはやぶさの一件で “がんばれ日本の宇宙開発”って思ってたのと
採用されると種子島でのその補給機の打ち上げに招待してくれるというおまけ付きで
“ロケットの打ち上げ!一度は目の前で見てみたい!!”と思って応募してみたのですが…
結果は採用ならず 
やや残念ではありますが 今後の宇宙開発の更なる発展を期待して 
「こうのとり」(←補給機の採用名称)がんばれです 

そして「はやぶさ」本当にお疲れさまでした

神様のカルテ2 夏川草介

2010-11-15 22:20:00 | ★な・は行の作家
神様のカルテ 2
夏川 草介
小学館

医療はサービス業である

それは間違いじゃない
けどそれをいいことに サービスを受ける権利を振りかざし 自分本位の無茶な要求をする人も少なくない
関わっているのが人の命ともなれば 周囲には理不尽に映っても 当人達には切羽詰った要求のこともある
でも
こちらだって人間だ 
応えられないこともある 出来ないこともあるしミスをしてしまうことだってある
抱える緊張感は決して小さなものではない
ましてや最前線の医師であれば精神的負担は私の比ではなかろう
できないことをできないと言うことも許されず ギリギリのところでみんながんばってる
なのに報われないことのなんと多いことか

『良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬である』

作中に出てくるこの言葉はセオドア・ソレンソンという人のものだそう

世間の理不尽な常識や過酷な労働環境に打ちのめされそうになり それでも理想や夢を捨てず 
患者のために奔走する医師・一止や彼を取り巻く人達の姿に心打たれる


それにしても信州というのは とても豊かな土地だ

雪に閉ざされ空気の冴え渡る真冬の王ヶ頭や 神が住まう山と云われる御嶽山の初夏の風景や 常念山から見上げる満天の星
そして一本の樹に三色の花が咲く“花桃”をはじめ 紅梅・桜・花水木など四季折々の草花があちらこちらに咲き誇る

仕事に忙殺される日々の中で 限られたほんのわずかな時間だけど 
ひとりの人間として 大切な人と共にこれらの豊かな自然を感じながら生きる 
そんな一止と妻・ハルの暮らしぶりがとても羨ましい
王ヶ頭でのふたりの小さな約束
忙しくて忘れられてしまっても その約束をしたことだけで満足しよう 
そう思っていたハルの強さも 
時がたっても覚えていてちゃんと約束を果たした一止の誠実な優しさも
いいなと思う

大切な人に自分の好きなものを見せたいと思う 
一緒に同じものを見てきれいだねと笑い合う 
そうして同じ想いを共有する時間をひとつづつ積み重ねていく
そんな生き方は平凡でつまらないことだと笑い飛ばされるかもしれないけど
そういうしみじみとした幸福感って 他では得られない貴重なもので
簡単なようで実は得難く とても贅沢な時間なのではないかなと思う


花宵道中 宮木あや子

2010-11-01 08:28:01 | ★ま・や行の作家
花宵道中 (新潮文庫)
宮木 あや子
新潮社

江戸末期の吉原遊郭 そこで生きる女たちの儚い恋物語

恋物語とは言っても遊女の話 
本気で男に惚れてしまったら仕事に気が入らなくなるから恋はご法度という吉原の中で 描かれるのは当然“忍ぶ恋”
市井の女性達のように好きな男と所帯を持つことはおろか 一緒に街中を歩くことすらままならない
決して結ばれることなんかない恋は 楽しいことよりも辛いことの方が多いくらいだろう

それでも 彼女達は恋をする

描かれるいくつもの恋は 読み進むうちに繋がり そこに至るまでの長く遠い道のりも明らかになっていく
3章の「青花牡丹」まで読むと 1章の「花宵道中」の背景が鮮やかに浮かび上がり さらに切なさが込み上げる
3章のラストは 母や姉 そして愛しいと思った女 誰一人守ることができなかった男の哀しみや辛さがあふれる

『柔らかな手のひらも、小さな身体も、花の咲くような笑顔も、何もかも今度こそ守ってやらなければならない。待っといてな。』


一番好きなのは「十六夜時雨」

絶対に男を好きになんかならないと固く心に決めていた八津と 髪結いの三弥吉の話
他の男に抱かれるための髪結いを 好いてる男にしてもらわなければならない
そして翌朝名残のある乱れた髪をまた結い上げてもらわなければならない
逢うたびに強くなっていく想いに抗えなかった八津 踏みとどまれなかった三弥吉 
ふたりの心の葛藤と痛みはどれほどだろうと思う

人をひとり好きになり 相手もそれに応えてくれる 
本来ならそれはとても幸せなことのはずなのに どうしてこうも切ないんだろうか


一番怖いのは 失うこと
たまらなく愛しい人と そして自分自身
そのどちらも失わないよう 懸命に生きる彼女達の姿に 心揺さぶられるのだろうと思う


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