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【献本】大切なひとのためにできること 清宮礼子

2011-05-28 16:54:31 | レビュープラス献本
大切なひとのためにできること がんと闘った家族の物語
清宮礼子 文芸社
定価1200円 6月1日発売予定

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レビュープラスさんからの【献本】です
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「大切な人のためにできること」がんと闘った家族の物語

作者は 映画「おくりびと」の宣伝を担当されていた清宮礼子さんというかた
突然末期がんの宣告をされ がんと闘いながら残された命を大切に生きるお父さんと
温かく支える清宮さん達家族の物語

  人は誰でも いつか、おくりびと、おくられびと― (本書帯より)

この本が届いた次の日に 奇しくも 祖父が亡くなったとの連絡が入り
私もおくりびととして葬儀に向かう電車の中で読むことになった

命あるものはいつかかならずそれが尽きる時がくる

わかっていても別れというのはつらいもの
ましてや 自分自身や子ども達の人生もまだこれからで 愛する家族と過ごす時間を楽しみにしていた矢先 命の期限が短いことを知らされたら
私ならどう受け止めるだろう 私ならどう生きるだろう…
たった百数十ページの本 そこに書ききれない苦しみもたくさんあっただろうと思う
それでも 礼子さん お兄ちゃんやお母さん そしてお父さん
誰もがみんなお互いを思いやって 家族のことをとても大切にしていて
残された時間を少しでも明るく楽しく 穏やかに笑って過ごそうとする姿が心に残る

人が生きるというのは どういうことなんだろうと思う

苦しかったり哀しかったり悔やんだり つらいこともあったはずなのに
それでも最期に 愛する人たちにありがとうと言えて ありがとうと言ってもらえる
みんなの心に「ありがとう」が残り 支えてくれたたくさんの言葉が残る
優しかった笑顔が残り 楽しかった思い出が残る

残るのは 記憶

目に見えるかたちではないけど その記憶が きっと生きた証で 
残された人の身体の中にいつまでも温かく生き続けるものだと思う


一緒に生きてくれてありがとう おつかれさま

読み終えて そう言いながら祖父をおくりました
誰かをおくりだすときも 自分がおくられるときも
悔いなくおくりだせるように いつでも精一杯生きていよう

そう思える本


そして
この本の中には がんと闘う人たちの姿が飾ることなくありのまま描かれてる

つくりごとではない医療の現状

医師さえもが手探り状態の 日進月歩のがん治療の現場で 
患者や家族が なにが最善でなにが間違ってるのかを判断するのは容易ではない
少しでも同じ境遇の人の役に立てばと 清宮さんが懸命に集めた情報は
治療の種類や薬の副作用 在宅医療や緩和ケア そして避けては通れないお金の問題と多岐にわたる
がん関連のホームページのアドレスも数多く掲載されている

ぜひ 今闘病中の方や家族の方も手にとり 参考にしていただけたら
いち医療人として私も 嬉しく思う


◇◇◇
おくりびと [DVD]
出演:本木雅弘
アミューズソフトエンタテインメント

―納棺師─それは、悲しいはずのお別れを、やさしい愛情で満たしてくれるひと。(amazon作品紹介より)

ライフ・イズ・ビューティフル [DVD]
出演:ロベルト・ベニーニ
パイオニアLDC

本書のおまけで清宮さんがおすすめされてる映画
―第2次世界大戦下、明日をも知れない極限状態に置かれながらも、決して人生の価値を見失わず、豊かな空想力を駆使して愛する家族を守り抜いた、勇敢な男の物語。(amazon作品紹介より)

◇◇◇


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ひとりが好きなあなたへ 銀色夏生

2011-05-22 16:05:03 | 銀色夏生
ひとりが好きなあなたへ (幻冬舎文庫 き 3-13)
銀色夏生
幻冬舎

私もひとりが好き

ひとりで好きなことしてる時間が好き

でも 人が嫌いなわけではなく むしろ人と関わるのは大好き
一緒に食べたり飲んだり話したりするのは楽しいし 
話をすればするほど もっと知りたいと思うし 仲良くなりたいと思う

たまにその思いが強すぎて 執着しすぎてしまったり
他の人が大切にされてるのを見ると羨ましくなったり 比べて落ち込んでしまったり
つい 周りを気にしすぎてしまうのかもしれない

けれど 人との関わりなんてものは あくまで一対一で
誰かと比べたり競ったりするものではないんだろうなとは思う

人それぞれに 好きな人がいて 尊敬する人がいて 大切な人がいて 
守ってあげたい人がいたり 教えてあげたい人がいたり 応援したい人がいたり
それは当たり前のことで
自分は放ったらかしなのに どうしてと責めても仕方のないこと
自分がどの場所にも入れてもらえないからといじけても仕方のないこと
見てもらいたい 関心を持ってもらいたいなら 
自分で その人の中に自分なりの居場所を作らなきゃいけなかったんだろうなと思う


人との関係なんてのも 結局は 自分の考え方次第で
他の誰かになんとかしてもらうようなものではないのだろう

例えば 10分会ったとする

“たったの10分…私はその程度の時間しか割く価値がないと思われてる”って考えるか

それとも

“時間がない…でも10分でもいいから私に会いたいと思ってくれてる”って考えるか

事実は同じなのに 捉え方で全く違う10分になる

単純に考えて 自分の心に従うなら 楽しい10分の方がいいと思ったけど
気持ちは私の自由 自分で選んで作り上げていくもの
嫌な10分だと思うなら いつでもやめればいい ただそれだけのこと


『ひとりが好きな私
 私はそんな私が大好きです

 いつも
 自由な気持ちになる時
 草原のようなそよ風が吹いてきて
 ひとりの私を包んでくれる

 ひとりの時間があるからこそ

 好きな人といる時間のよさもわかる』




ペンギン・ハイウェイ 森見登美彦

2011-05-12 15:45:58 | ★ま・や行の作家
ペンギン・ハイウェイ
森見登美彦
角川書店(角川グループパブリッシング)

とても理知的な少年である
お父さんからもらったノートに 自分の考えたことや疑問 それについて研究したことを 毎日のようにたくさん書いている
友達のウチダ君とは よく宇宙の話をしたり一緒に実験をしたり
同じクラスのハマモトさんとはよくチェスの勝負をする

そんな賢い小学4年生のぼくの ひと夏の冒険と淡い恋の物語―


突如ぼくの住む町に現れたペンギンの群れ
給水塔の裏の森の中で見つけた謎の物体
そして歯科医院のお姉さんの不思議な力


男の子というのは“お姉さん”という存在に弱いものらしい
同じ女性だけど お母さんともクラスの女子とも違う
なんだかやわらかいようなあったかいような 優しくてでも時には叱ってくれたり いろんなことを教えてくれそうで おまけにきれいだったり聡明だったりしたら…
そんな存在に淡い憧憬の気持ちを抱くもんなんだろう

ぼくも そう

お姉さんに恋をしたぼくは 必死に謎を解き明かそうとする 
お姉さんを元気にしてあげたくて 一生懸命で でも 世界は理不尽でどうにもならなくて
世界の果てを見てしまうというのは とても悲しいことでもある

でも そうして 男の子はひとつづつ階段を上るのかもしれない
恋をして失くして でもちゃんとずっと大切に持ったまま大人になる
それはそれはとてもすてきな男の人になるだろうと思う


『ぼくはお姉さんにいろいろなことを教えてあげるつもりである。ぼくはどのようにしてペンギン・ハイウェイを走ったか。ぼくがこれからの人生で冒険する場所や、ぼくが出会う人たちのこと、ぼくがこの目で見るすべてのこと、ぼくが自分で考えるすべてのこと。つまりぼくがふたたびお姉さんに会うまでに、どれぐらい大人になったかということ。
 そして、ぼくがどれだけお姉さんを大好きだったかということ。
 どれだけ、もう一度会いたかったかということ。』

私を離さないで カズオ・イシグロ

2011-05-04 17:11:54 | ★か行の作家
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
カズオ・イシグロ
早川書房

ある目的のためだけに生まれてきた子ども達
彼らの命の使い道は あらかじめ決められている

自分が 人ではなく 道具としか見られていないと気がついたとき
身体のごく一部分のパーツしか必要とされてなくて
どんな顔しててどんな人柄で 何が好きで何を考えているかなんて どうでもいいことだとしても
それでも笑っていられるだろうか 
人生を楽しむことができるんだろうか

一見幸せで楽しい平凡な日々 でも 他の人たちとはどうも扱いが違う
小さな違和感が徐々に膨らみ やがて確信に変わる
真実を知ってもなお 静かに受け入れて 何かを諦めながらも いま目の前にある時間を丁寧に生きる

自分の価値やそこにいる意味すらわからなくなりそうな
そんな残酷な生き方にも 
人って慣れるものなんだろうか
人ってそんなに強くいられるもんなんだろうかと思う


静かに流れるようでいて心がざわつく そんな感じのお話