今回もクーリエ・ジャポンレビューコンテストに参加しています。
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第6回クーリエ・ジャポンレビューコンテスト
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クーリエ・ジャポン3月号
今回の特集は、オバマ大統領就任から1年「貧困大国(アメリカ)の真実」。
オバマ大統領が就任して1年―アメリカ国民の目の前に輝いていた「CHANGE(変革)」や「HOPE(希望)」が今徐々に色褪せつつある。
期待したような変化は起きず、貧富の差は大きく広がり、貧困層は拡大している現状。
その実例として4つの項目が挙げられている。
①頑張って働いても食べるものさえ買えない「フードスタンプ(食料配給券)」受給者の増加
②医療保険に入れないため適切な治療が受けられなかったり、加入していても破産に至るという医療崩壊の現状
③富裕層を優遇する大学と、授業料の高騰や高金利学資ローンに苦しめられる一般家庭の学生
④民営化で加速する「刑務所ビジネス」に搾取され続ける貧困層
今回その中でも特に、薬剤師という仕事柄、医療崩壊についての記事を興味深く読んだ。
オバマ大統領が最重要課題として掲げていた、医療保険改革。
アメリカには日本のような皆保険制度がない。
公的健康保険は低所得者向けのメディケイドと高齢者向けのメディケアのみで、国民の約60%は民間保険に加入。そしてなんと15%は無保険だ。
保険に入ってるからといっても安泰ではない。
民間保険は加入しても自己負担金が高かったり、治療内容が限定的で、決められた薬や治療でなければ給付は認められない。そして医療費が限度額を超えたら給付はストップ。
結果、急な病気やケガという不測の事態に充分な保障が受けられず、最悪、医療費による破産という事態が多く発生する。なんと、個人破産の原因の半数以上が医療関係だそう。
その改善策として掲げられた「単一支払い皆保険制度」だが、製薬・保険業界からの反発により排除。事実上、医療改革は形骸化した。
だが、国民は指をくわえて、変化が起きるのをただ待っているだけではない。
例えば、ベッサー郡での貧困者対象の医療制度「ケア・リンク」。
医療費の抑制を目標に、医療提供者と価格交渉することで、顧客の収入に応じた医療費の請求を行ったり、予防治療にも重点をおき、予防注射の提供などもしている。
また、医療ボランティア団体が開催する、貧困者を対象に無料で診察を提供する「フリー医療フォーラム」もある。
2009年8月に行われた同フォーラムには、治療を受けられずに困っている人が1週間で8000人も殺到し、ボランティアの医師らが治療にあたった。
さらに、先日、職場で購読している雑誌
「日経ドラッグインフォメーション」にも興味深い事例が紹介されていたので挙げておく。
アメリカのアッシュビル市では10年以上前から「アッシュビルプロジェクト」というカウンセリングプロジェクトが続けられ、医療費の削減に大きな効果をあげている。
これは慢性疾患の患者が、薬剤師のカウンセリングを定期的に受け、病気や薬・生活改善の知識を身につけることによって、病状を改善したり、早期に治療でき、結果として医療費の抑制につながっているというもの。
少しずつではあるが、医療の現場で動き出して、成果をあげている人々がいる。
アメリカの医療保険制度の破綻は人ごとではない。
日本でも増大する医療費は財政を圧迫しつつあり、国民皆健康保険を維持するために、度々制度の見直しが行われている。
つい先日も、22年度の診療報酬改定の基本方針がまとめられ発表されたばかりだ。
今後は、医療費削減のため、安価なジェネリック医薬品推奨の動きがさらに加速することになるようだ。
現時点ではこういった公による医療改革が中心だが、日本でもいずれ、アメリカのように、末端の現場でも改革が求められていくことになるだろうし、また、私たちでも何かを変えることが可能なのではないかと思う。
医師だけでなく、看護師や薬剤師、栄養士など地域の様々な医療スタッフの力の見せ所なのではないだろうか。
私たちにもできることはあるはずだ。
今回の特集の責任編集者である、ジャーナリスト・堤未果さんの言葉が印象的。
『チェンジは待つものではなく起こすもの』
アメリカでは、失望しながらも、自ら立ち上がり、変化を起こし始めた人たちがいる。
今、私たちも誰かが変えてくれるのを待つだけではなく、自分達で動き始める時なのかもしれない。
そう思わせてくれる特集だった。
最後に、
クーリエ・ジャポンという雑誌について。
3ヶ月前、レビューコンテストに応募するにあたり読み始めたクーリエ・ジャポン。
ふとしたきっかけで手にした雑誌は、世界中のメディアの中から選ばれた記事が、翻訳・編集された、とても読み応えのあるもの。
大量な情報が氾濫する今、月刊誌という形態は、テレビやインターネットに比べると、スピードや鮮度という点からは不利かもしれない。
それでも、じっくりと考え練られ、深く掘り下げられた記事の数々は、一部の表層的なメディアとは一線を画す良質なものだと思う。
様々なメディアが発信する情報には、ときに誇張されたものや捏造されたものが紛れ込む。クーリエジャポンは、それらの多種多様な情報から本物を選び取る手助けをしてくれるのがありがたい。
政治経済など硬質なテーマにとどまらず、食やファッション、カルチャー、スポーツなど幅広い情報を提供するこの雑誌は、読んで、考え、気づき、そして自ら動きたくなる、そんな新しい「チェンジ」の扉を開けるきっかけを様々な人に与えてくれるだろう。
最後に、このブログを読んでる皆さんのために、そして自分のためにもう一度。
『チェンジは待つものではなく起こすもの』である。
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