あなたのすきな本は何ですか?

桔梗です
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いろいろな想いを残してくれたお気に入りを紹介しています

月曜日の水玉模様 加納朋子

2008-06-23 22:48:03 | 加納朋子
月曜日の水玉模様 (集英社文庫)
加納 朋子
集英社

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20代のOL陶子が 朝通勤電車で出会った男の子・萩くんとふたり 
周囲で起こる様々な事件を解決する
事件といってもそこは加納朋子さん 殺人事件なんかじゃなく“日常に転がる謎”

美人で頭の回転も速くさばさばした陶子も魅力的だけど
一見ぼーっとして頼りなげだけど 実はすべて見えている萩くんがいい味出してる
『まるで気づいた素振りも見せず、冗談のオブラートにくるんだ本音を聞き取っているし、賢しげな言葉に出さないだけで、実は驚くほどに色々なことを見ていたりする。決して馬鹿でも鈍くもない』
そんな人だ

それから
『女の敵は女』
多分それは正解
でもそんな敵を蹴散らす力をくれたり 味方してくれるのも“女”だと思う
妬みとか僻みとかで足引っ張るのも女だけど
「引っ張れないくらい突き出てしまえばいい」
「間違ってるのはどっち?胸を張って顔を上げて笑ってればいい」
以前そう言って力をくれたのは素敵な女性達だ
私も女の味方になれる女でありたいと思う

木洩れ日に泳ぐ魚 恩田陸

2008-06-19 22:33:23 | 恩田陸
木洩れ日に泳ぐ魚
恩田 陸
中央公論新社

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「黒と茶の幻想」とイメージが似てるかな

アパートの一室にいる一組の男女 彼らは翌朝にはそこを離れ別々の生活を始める
過去に山登りをしたときの事件(事故?)を振り返り 一晩話をするふたり
何も起こらない
ただ話をしていくうちに 次第にふたりの関係とか真実とかが明らかになる
忘れていた過去や記憶もふとよみがえり 迎える意外な結末

う~ん まさに恩田陸ワールド

ある一人の人間が死んでいて ふたりはお互いを疑っている状況で
交わされる会話がすごい
腹のさぐり合いというか 裏を読んで裏の裏そのまた裏を読んで…
フクザツ

この男はずるい
すべてわかってるのにわからない振りをして
自分から決着をつけたがらない
いざというとき責任を取らなくて済むように逃げるんだろな
優しく純粋にみえるけど 冷淡でずる賢く残酷だ

彼女の方は強くて好き
決して流されず 自分で何かを選ぶ強さがある

『今にして思えば、私が彼を好きだったのは、彼が私をすきだったからだ。
~(略)今ならばわかるけれど、好いているほうは、
相手が自分の好意に応えているのかそうでないかを瞬時に見破るものだ。』

本当に好きなのか よせられる好意に応えているだけなのか
その判断って難しいと思うんだけどなぁ
私は 直感を信じてもはずれてばかりだったような気がする
そういうのってみんな瞬時にわかるものなんでしょうか…


イン・ザ・プール 奥田英朗

2008-06-18 20:02:26 | ★あ行の作家
イン・ザ・プール (文春文庫)
奥田 英朗
文藝春秋

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おもしろかった

風変わりな精神科医・伊良部のもとを
少々ココロを病んだ人々が訪れるが
カウンセリングとか投薬とかありきたりな治療は一切しない
治療どころか 悩める患者を巻き込んで一緒に人生楽しんじゃってる
患者もこれでいいのか?治るのか?
と思いながらズルズルと伊良部のペースに引きずられて
最後には皆こんなものかとお気楽に生きられるようになるのが爽快

人間誰でも何かに依存して生きてる
これに出てくる患者達も 泳ぐこととかケータイとか
様々なものを心の拠りどころにしてる
かなりデフォルメされてるが ケータイ依存の子なんて
本当に現実にもいそうだ
普通と異常の境界線ってムズカシイかもと思った
私だって今 本とテニス取り上げられたら壊れるかもしれない…

まぁ まっとうに生きなくてもいいんじゃないか?
伊良部見てるうちにそう思った
テキトーに力抜きながら 楽しく生きようね

すべてがFになる 森博嗣

2008-06-16 13:02:17 | ★ま・や行の作家
すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)
森 博嗣
講談社

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硬質なミステリー

答えは目の前にある
あとはただ立てた仮説を実証 違ったら戻る
また予想して仮説を立てて実証 合ってたら次へ 
その繰り返し
これはダメこれもありえないと排除していけば残る道は一つだ
例えれば完璧に組み上げられたレゴブロックの大作
その中から違う色のブロック一つを見つけられる?エラーはどこにある?
そんな思考を楽しむ感じ

動機よりも感情よりもまず論理ありき
天才の思考というのは面白いけど恐ろしい

探偵役の西之園萌絵が魅力的
ちょっとわがままなお金持ちのお嬢様で頭脳明晰
3桁×4桁の掛け算を一瞬で答える頭の持ち主
ところが好きな屑川先生のことになるとその頭脳もまるっきり役に立ってないのがカワイイ

『知りたいことはすぐ目の前で見られる。話したい相手はいつも目の前にいる。それが、ごく自然なことです。…今の世界がどれだけ中途半端で不自由か…遠くの声が聞こえ、遠くのものが見えるのに、触れることはできない。たくさんの情報を与えられても、すべてが忘れられ、失われるしかない。情報の多さで隣の人も見えなくなる。人はどんどん遠くにいってしまうわ。』
作中の天才科学者四季のセリフ
10年以上前の作品とは思えない程 今の社会とそっくりだ
いくらネットワークが発達して家から一歩も出ずに何でも事が済んでしまうようになっても やはり「触れていたい」という欲求はなくならないと思う
失くさないでいてほしいと思う

怪笑小説 東野圭吾

2008-06-13 22:09:46 | 東野圭吾
怪笑小説 (集英社文庫)
東野 圭吾
集英社

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なんだかちょっと軽めの本が読みたくなったのでふと手にとってみたら…

おもしろい!
東野圭吾ってこういうのも書くわけ?って意外に思いました

イチオシは「あるジーサンに線香を」
タイトルからバレバレだけど「アルジャーノンに花束を」のパロディー
「アルジャーノン~」ものすごく好きな本なんだけど こうも可笑しく切なくパロディーにされちゃうと拍手モノ

他にもちょっとブラックな笑いとパロディーがいっぱい
普通の東野圭吾に飽きたらまたこのシリーズ読もうっと

星々の舟 村山由佳

2008-06-12 14:27:51 | 村山由佳
星々の舟 Voyage Through Stars
村山 由佳
文藝春秋

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かなわぬ恋に悩む兄妹・暁と沙恵を中心に 
その兄・妹・姪・父がそれぞれの視点と時間軸で 
今までを振り返り これからを見据える

同じ出来事でも 自分と他人とでは認識がずれていたりする
そうするとそれぞれの抱える思いもずれてきて
そこから誤解とかすれ違いとかいろんなことが生じてしまう

各々がいろいろな想いを抱えて ときに立ち止まりながらも
幸せを探しながら強く生きていく

みな大事な何かを手に入れられなくて
それでも 必死に生きていく
何かを永遠にあきらめられずにいるというのは過酷なことなんだな

『行き止まりまで見届けないから、いつまでもずるずる引きずることになるんだ。』
『どこまで見届けてもあきらめのつかないことだってあるんじゃない?』

かなわぬ恋 結ばれぬ二人 なんて使い古された設定だけど
村山さんの手にかかると不思議と 切なくも温かい
必ずひとすじ希望の光が見えるような終わり方だからだろうか

初ものがたり 宮部みゆき

2008-06-09 22:31:04 | ★ま・や行の作家
初ものがたり (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社

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岡っ引きの茂七とその子分達が数々の事件を解き明かす捕物帖
江戸時代でも人間模様は多分今とそう変わらない
身勝手な男 不憫な子ども 親子の深い情愛 兄弟間の憎しみ…
痛ましい事件もあるが 主人公茂七の人柄が温かく 
美味しそうな食べ物がたくさん出てくるので
ほのぼのした気分で読める

「凍る月」が心に残る
『どういう形ででもそばにいることが自分の幸せだと言い聞かせていた~
それがどんなにおかしなことか、きれいなことではあるけれど、
どれほど自分の心を損なうことであるか~』
それに気づいたおさとは 妻のいる好きな男の前から消える
それでも やっぱり 男の幸せを願ってる
あきらめてくれたのかと安堵する男の姿が少々憎たらしく滑稽
身勝手な小心者だ
受け止めきれないなら放せばいい
そう思う けど
簡単じゃないよなぁ 手の中にあるもんを放すってことは

もし放さなかったら 放れなかったら 心は壊れるんだろか

沙羅は和子の名を呼ぶ 加納朋子

2008-06-07 22:12:03 | 加納朋子
沙羅は和子の名を呼ぶ (集英社文庫)
加納 朋子
集英社

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まず感想ひとこと 加納さんの本の中で1、2を争うくらい良かった
全体に流れる空気が好き

「黒いベールの貴婦人」
一瞬で取り返しの付かない想像も付かないことが起こるというのはある 
現実にも かなりの頻度で
『違う幸福が手に入ると信じるのは愚かだろうか?』
どこにも悪意は存在しなかったのにね

「エンジェル・ムーン」
偶然と作意そこに起こる奇跡 加納さんの好きなテーマ
『言ってしまったことへの後悔に、言えなかったことへの後悔。私の場合、格段に前者が多い』
このセリフはぐっさり刺さったな
私も圧倒的に前者が多い 思ったことをすぐ口にして後悔してばかりだ

「フリージング・サマー」
在るのは善意のみ
大切な人へのすべての想い 氷漬けにして冷凍庫へ
そうすれば 覚えていられるんだろか

「天使の都」
天使は誰のところにもやってくる
許すというのは大事なこと 人を許せるかどうか自分を許せるかどうか
天使の都にあった人を幸せにする小さな嘘

「海を見にいく日」
人の痛み 見える人には見える 何も言わなくても見えちゃうんだよな これが

「橘の宿」
自分が手に入れた美しい女 女の喜ぶ顔を見るために男は一生懸命だ
好きな人の嬉しげな顔を見るのは幸せだろう
儚き夢の話

「花盗人」
花盗人にも罪はあるさ 盗んでるのは花だけじゃないからね

「商店街の夜」
絵を描く友人がいる
自ら“うつしえ”と称する彼女の絵は 本当に今にも動き出しそうだ
何かが棲んでいるのではないかと思うほど
絵でも小説でも音楽でも 
才ある人が生み出すものには“何か”がいる そう思ってる

「オレンジの半分」
なんだかなぁ 紗英のやってることがどうにも受け付けない
無邪気なふりして残酷っていうか失礼極まりない
私だったら殴ってるね 自分の身内でも

「沙羅は和子の名を呼ぶ」
もしあの時違う選択をしていたら…
自分の出世のために選び結婚した女性は万事ソツなくこなし何の不満もない
それでも昔好きだった美しい女性が心の片隅にいる
ふとした拍子にひらくもう一つの世界 そして背負う十字架
どうして自分はここにいる?
選んだのは自分だ 見るのは前だけでいい わかってても揺らぐ想いかな


好きなのは「フリージング・サマー」「天使の都」「商店街の夜」

レインレイン・ボウ 加納朋子

2008-06-07 21:13:13 | 加納朋子
レインレイン・ボウ
加納 朋子
集英社

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加納さんお得意の 日常に潜む謎をからめた連作集
高校時代のソフトボール部のメンバーのひとり千寿子が亡くなり
知らせをうけて集まった女性達
千寿子が死んだ本当の原因を軸に女性達の話が描かれる

20代後半ってのは女の人にとって 人生の重要な選択がいくつかある
結婚・出産もそう 仕事だっていろいろある時期
迷い悩みながらも自分の場所を探し見つけていく
たおやかな女性達の姿に昔の自分が重なったりする

『自分で思っている自分が、必ずしも本当の姿に近いってことはない。」
この本のテーマでもあると思うけど 
「虹」だ
人間なんて「この人はこういう人」って簡単に決め付けられない
テキトーだと思ってた人が案外マジメだったり
ノーテンキに見える人が実はとても気を使うタイプだったり
いろんな面が重なりあってできてて
こう見せたいを思ってる一面だけ表にしてたりするんだ
それが難しいけどおもしろいところだったりする

『往々にして、冗談や悪ふざけには本音が紛れ込んでいるものよ。』
んー 実にスルドイ… そのとおりだと思う

ZOO 乙一

2008-06-02 20:53:01 | ★あ行の作家
ZOO
乙一
集英社

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ダークな星新一って感じのホラーな短編集

かなりグロテスクで血なまぐさいんだけど
読み出したら止まらない
怖いんだけど そこにあるのは絶望の中に見えるかすかな希望だ

「陽だまりの詩」が一番好き 
命あるものは多分ひとりでは生きていけない 
当たり前だけど 隣に寄り添い支えてくれるもののありがたさを痛感する
陽だまりのような暖かい話