あなたのすきな本は何ですか?

桔梗です
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いろいろな想いを残してくれたお気に入りを紹介しています

文学賞メッタ斬り! 大森望・豊崎由美

2009-09-25 21:26:10 | ★あ行の作家
文学賞メッタ斬り! (ちくま文庫)
大森 望,豊崎 由美
筑摩書房

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「読者のための文学賞ガイド」です

三度の飯より本が好きという書評家・評論家であるふたりが 有名な文学賞から地方の小さな文学賞まで おもしろ可笑しく懇切丁寧に解説してくれてます

特に芥川賞と直木賞
この権威ある両賞を裏話満載でメッタ斬り!
選考委員の作家さんたちもそして彼らの選評もメッタ斬り!!
ジュンちゃん(渡辺淳一)とテルちゃん(宮本輝)についてはもう言いたい放題で ふたりでいじりまくってキャラ萌えして完全に遊んでます
飲み屋で一杯引っかけて繰り広げているかのような リラックスしたやりとりで それがまたおもしろいです

各章についてる「文学賞の心得」を拾うだけでも 的を得ていて感動です

『直木賞は、賞を与えるタイミングを間違えている。』

なんてホントそのとおり 
なんで北村薫さんにもっと早くあげてなかったんだよと思っちゃいます


それにしても すごいですねこのおふたり
こんなに言いたいこと言っちゃってこの業界で生きていけるんだろうかと 余計なお世話なことを思っちゃいますが…
2008年度版も出てるとこをみると 愛されてるんでしょうね

読んだのは文庫化されてる古い方ですが 全然古さを感じず面白かったです

告白 湊かなえ

2009-09-23 22:29:10 | ★ま・や行の作家
告白
湊 かなえ
双葉社

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4歳の我が子を校内で亡くした女性教師
事故として処理されたその事件が本当は殺人事件であることをつきとめた彼女は 犯人であるふたりの教え子に自らある制裁を加える 追い詰められた少年達は…

教師・犯人の少年達・家族・友人 それぞれがその事件について語る形式は「藪の中」を思わせる

なぜ少年達は女の子を殺したのか

その動機と殺人に至るまでの過程に 寒気と怒りを覚える
自分は周囲とは違う優れた人間だと過剰な自意識におぼれてる少年達
その親も教師もまるっきりエゴの塊で 自分だけがかわいくてたまらない


誰かの気持ちを思う 人を大切にする
そういう心がほんの少しでもあれば…

人の狂気とかエゴを描いた話は好きだ
ひたむきさと紙一重のそれらには美しささえ感じるし 
そうやって表裏一体の感情に揺れ動かされる人間ってもんが愛しいとさえ思うのだけど

この本には 美しさとか人に対する慈しみが全く感じられない

登場人物の誰にも共感できないし 読後感も重く気持ち悪い
ただひとり 子どもを殺された女性教師の心情には同情するが 制裁の手段が許しがたい 
ある病気を使うのだが それをフィクションとはいえこういう使い方をしていいのだろうかと甚だ疑問


もちろんここまで強い人に負の感情を起こさせるというのは それはそれですごいパワーだと思う
大勢の人のレビューにあるとおり 筆力もあり とても上手い作家さんなのだろう

本屋大賞受賞作ということだけど
本のプロ達が大勢お勧めしているということだけど 
でも
私はこれを人に「おもしろいから読んでみて」とは絶対に勧められない

きみを想う夜空に ニコラス・スパーク

2009-09-19 15:02:06 | ★な・は行の作家
きみを想う夜空に
ニコラス・スパークス(著)
エクスナレッジ

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とてもシンプルな恋愛小説

アメリカの海沿いの町 
陸軍兵士のジョンは ボランティア活動中の女子大生サヴァナと出逢ってすぐ恋に落ちる
お互いこれ以上の人はいないと思うようなかけがえのない存在になり ジョンが遠くの任地に行って離れてしまっても ふたりの絆はより一層深まっていくが…

ちょっとしたことからふたりの間に生じたほころび

“会いたい”“少しでも長く一緒にいたい”そんな気持ちは自分の独りよがりなのかといらつくジョン
自分が想うほど相手は自分のことを好きじゃないのかもしれない
そんな不安から生じた誤解やすれ違い
そして アメリカだけでなく全世界を揺るがしたあの事件がきっかけで ふたりの道は逸れていってしまう

お互いに相手を想う気持ちは変わらない 好きで好きで仕方ないのだけど…


「本当の愛とは何か―」を問われる

わが身の幸せより愛する人の幸せを大事にするってのは 簡単ではない
頭でわかってても心がついてこないってのはよくあること

抱きしめることも 忘れ去ることも そのどちらも叶わないのなら
その大切な人の幸せを見守るしかないってのも 
ひどく残酷な答えだなと思う

それでも
その答えを正しいと肯定するようなラストシーン
共に空を見上げて一瞬月をながめるジョンとサヴァナ

ほんの一瞬でも
その幸せな一瞬が心にともす灯のおかげで 自分の道を行こうと思えるのかもしれない

その答えの残酷さと正しさとの間にあるものを“希望”というのかもしれない

ナイチンゲールの沈黙 海堂尊

2009-09-18 12:29:00 | ★か行の作家
ナイチンゲールの沈黙(上) (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ)
海堂 尊
宝島社

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「チームバチスタの栄光」と主な登場人物は同じ
続編ということですが でも雰囲気は何だかちょっと違ったような…
ミステリーというよりはエンターテイメント
ただ 前作の方がテーマが面白くてスピード感も上だったかなぁと思う


網膜芽腫という病気のため眼球摘出の手術を控える少年
病院に見舞いにもこない彼の父親が殺される
犯人も殺害方法も読者には提示されているけど 不定愁訴外来医師・田口とロジックモンスター・白鳥のコンビに新たな人物も加わり 謎を解き犯人を理論で追い詰めていく


今回軸になるのは天才的に歌のうまい小児科のナース・小夜 
上手いだけではなく聴いてる人の心を揺さぶる力がある歌
彼女は歌とともに自分の思い描いた画像を相手の脳に届けることができる

『世の中には、感覚の閾値が低くて五感が混沌とするタイプの人間がいるんだそうだ。例えば味覚と聴覚が入り混じる。あるいは言語に色がつくのを感じる、とか。』

それは共感覚といって “音に色が見える”ってのもあるそうで
歌と画像を混線させる小夜の力は この「共感覚」に近いとのこと


そんな話とか 救急医療が抱える問題点とか 医者の志の話とか
書き手がお医者さんならではって感じの話題が盛り込んであって
その辺はさすがだと思う
おもしろい医療エンターテイメント小説

第3弾「ジェネラル・ルージュの凱旋」も楽しみ

bk1 書評ポータル

2009-09-18 00:09:38 | 番外編
少し前からこのブログに書いているレビューを再編集して
オンライン書店・bk1さんの書評ポータルに投稿しています

ひと月ほど前に一度「今週のオススメ書評」に選んでいただいたのですが
先週は「ジャンル担当者のオススメ書評」で紹介していただきました

明日にはまた更新されて変わってしまうので
証拠にというか記念にというか(笑)ここに貼り付けておこうかと思いまして…

紹介した本は 三崎亜記さん「鼓笛隊の襲来」


以下『bk1書評ポータル(9/11更新)』より


“桔梗 ”さんの書評をご紹介します

「忽然と目の前から消えてしまった恋人への想いと期待を断ち切れずにいる主人公が知恵の輪が解けるのと同時に 自分の気持ちにも決着をつける
 『同じ夜空を見上げて』は ふんわりと温かい気持ちになれる」。
何とも魅惑的な物語。日本文学は伝統的に、こうしたデリケートな感情の機微を描くのに長けていますよね。 “桔梗 ”さん、ご紹介ありがとうございました。


オンライン書店ビーケーワン
http://www.bk1.jp/

ジャンル担当者のオススメ書評
http://www.bk1.jp/contents/shohyou/genre

きみに読む物語 ニコラス・スパークス

2009-09-18 00:04:24 | ★な・は行の作家
きみに読む物語 (ソフトバンク文庫)
ニコラス・スパークス
ソフトバンククリエイティブ

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10代の夏 恋に落ちたノアとアリーは幸せなひとときを過ごす
生まれが違うからふさわしくないと ひと夏で引き裂かれてしまったふたり
それぞれ違う人生を歩きながら過ごした十数年間。。。
他の男性と婚約したアリーはノアに会いに行く
今さら再会してどうなるわけでもなく 自分自身もどうしたいのかよくわからないまま ただずっと心にしまい続けていた言葉を伝えるために
伝えずに後悔することだけはしたくなかったアリー
幾度となく飲み込んで伝えられなかった言葉 一回くらい言ってみたくなるだろな


ノアがとても魅力的
自らはありふれた男だと評してるけど 詩を愛し 空や森や川を愛し 穏やかに自由に暮らすノアは なかなか得がたい稀有な男性
一途にアリーへの愛を貫き通す姿は感動的

アリーもまた 美しいだけではなく 知性や才能 強い精神力や情熱をもち
自分ではなく人に力を与えるような そんな素敵な女性


晩年
ノアは記憶を失くしてしまうアリーに 毎日自分達の恋の物語を話して聞かせる
夜にはまたすべて忘れてしまうアリー
それでも
毎日毎日 ノアに会うたびに何度でもまたそこから恋が始まるというのは なんだかいいなぁと思う


それから 
よく手を繋いだり手を握りしめたりするふたりの姿がすごく印象的
手を繋ぐ瞬間のあの独特のふわりとした温かさが心地よい

夜の光 坂木司

2009-09-18 00:00:24 | ★さ・た行の作家
夜の光
坂木 司
新潮社

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特に天文が好きというわけではなく なんとなく天文部に集まった4人の高校生の物語

彼らは平穏に学校生活を送っているように見えて 実は密かに戦っている 
家族や周囲の人たちの押し付ける価値観や恵まれない環境
それぞれがいろいろなものと日々向き合っている

つらいことや心が折れちゃいそうになることも ほんの少し共感しあえる仲間がいると よしまたがんばろうと思える

この4人の距離感がとてもいい
この頃って いつでもどこでも一緒みたいな仲良しごっこグループを形成しがちだけど
でも かれらは 無駄につるまない
普段一緒にいなくても 全部を打ち明けなくても お互いを認め合ってて 困ってるときはひょいと手を貸してくれる

こういう友達ってなかなか見つかるもんじゃない 心底羨ましいと思う


『屋上でずっと夜空を見上げていると、たまに自分の方が星に向かって登っていくような感覚になる。それは雪が降った日に空を見上げるのと同じようなものだが、晴れた夜の星空だとより美しい。
 空にあるのは星だけではない。飛行機のライトに、遠く離れた人工衛星の光。かすかな瞬きを放つそれらが、星と一緒にふわりと私の魂を持ち上げてくれる。もしかすると、飛べるのかもしれない。そう錯覚させるほどに。
 飛びたい。私は夜空を見上げるたびに強く願う。理由はわからない。いや、わかりたくないのかもしれない。ただ言葉にしてしまった途端、それは陳腐でありきたりな何かに変わってしまいそうな気がする。だから私は沈黙する。いつか、それを本当に理解してもらいたい相手に出会うときまで。』


bk1投稿書評はこちら
http://www.bk1.jp/review/0000478383

水の迷宮 石持浅海

2009-09-17 23:53:24 | ★あ行の作家
水の迷宮 (光文社文庫)
石持 浅海
光文社

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水族館が舞台のミステリー
3年前に水族館で不慮の死を遂げた職員 その命日に水族館の館長宛に脅迫メールが届き 魚達の水槽に次々トラブルが発生する

その中で起きるひとつの殺人事件

職員達は事件の真相をつかみ解決するために奔走する
奔走といっても 主に頭脳を使って論理的に解決を導いていくのが この作家さんの特色だろうか
今回も登場人物たちの頭のキレがすばらしい
私なんかがここの職員だったら 多分最後まで真相に気がつかず 皆に教えてもらってやっと“あぁ納得”っていう使えない役になりそう…


都合よく行き過ぎるとか登場人物が善い人過ぎるとかそんな意見も多いようだけど 私は基本的にこういうハッピーエンドはキライじゃない


みんなが事件をきっかけに一歩踏み出していって 夢のバトンを繋いでいく

夢を夢で終わらせない 

そんなラストがとても清々しく 読後感さわやか


「水の迷宮」に行ってみたくなる


bk1投稿書評はこちらから
http://www.bk1.jp/review/0000478888

こっこさんの台所 Cocco

2009-09-07 22:30:56 | Cocco
こっこさんの台所
Cocco
幻冬舎

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本はまだ読んでないけど。。。
本の発売と同時に配信された 新しいこっこの歌を聴いたので 
感想と勝手な解釈


また
傷だらけの血だらけだ

声も曲自体も 澄んで明るい
けど 何度も何度も聴いて 歌詞が頭に入ってくると
ものすごく痛い歌


      「愛について」
        ...

    届かないからこその想いだと
 それでもゆくと だからこそ ゆくのだと
        ...
   
   どんなにいばら這う道もこの足で
   返り血浴びて なおも切りつけて
  失うものなどない 何もない身体だと
   怖くはないと震える手かざして



       「絹ずれ」
        ...

 ここじゃだめで どこへ行こうと探してる
    ママの着物に踊るさくら色
    密かに想うのは自由だろう
       きれいだろう
    手を下したらもう罪だろう
       汚れるだろう      
        ...

  この手を握るのはだれだろう いつだろう
 今だけ欲しいのはなぜだろう いつからだろう



前作のアルバム「きらきら」を聴いて 
歌からにじみ出る母性とこの世のすべてのものに対する慈悲を感じられて
あぁ 強くなったなと思った
想う人は目の前にいなくなっても 守るべきもののある彼女は強く立つことができるのだろうと…

また 手に入らないひとを好きになってしまったんでしょうか
そして 繋ぎかけた手を自ら離してしまったんでしょうか

どうしようもないことってのはある
好きなもんは好き 仕方ない
妥協したり あいまいにしておくことだって 時には必要
けど
きっと 彼女にはそんなことはできないんだろう
もっと器用にずるく生きれば 楽なのに

“密かに想う”というのは きれいかもしれないけど
飛び越えたい自分と抑える自分との間で 心がずたずたに切り刻まれることだってある
簡単なことじゃない
この手を握って欲しい 今だけでもいいから
そう思ってしまうときもあるだろう


未だ欲しいをものを手に入れられない彼女は 
これからもどこかへ何を探しにいく まだ旅の途中なのかもしれない


がんばれ