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魔法飛行 加納朋子

2008-11-27 20:34:02 | 加納朋子
魔法飛行 (創元推理文庫)
加納 朋子
東京創元社

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主人公の女子大生・駒子は身の回りで起こる謎を物語にし 友人である小説家の瀬尾さんに送る 物語とそれに対する瀬尾さんの感想文と 不思議な手紙 最後にそれらが全部つながってひとつのストーリーが出来上がる

さらっと読み直してみてやっと『空を想う』思い出しました
たぶん加納さんも空が好きなんだろう
人工衛星スプートニクに乗せられた犬が聞いていたはずの鈴の音
シャガールの「魔法の飛行」
UFOを信じている男の子 風船
スペースシャトルから毛利さんが送った「ハロー、…」
物語には「空」につながるものがたくさん出てくる

『夢は未来につながっていた方がいいに決まってる。~本当にその方がいい。過去に還っていく夢よりも。』

『空を想う心。そして人を想う心。両者はイコールで結ばれるべきものなのだ。』

『人から人へと向かう心というものは、魔法の飛行そのものだと思わないかい?二人の間に横たわる時間や空間、それに考え方や価値観の相違、様々な実際面での問題-そういった諸々のものを、ときに人はなんて軽々と飛び越えてしまうんだろう。』

燃えよ剣 司馬遼太郎

2008-11-14 09:06:45 | ★さ・た行の作家
燃えよ剣 (上巻) (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社

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貸してくれた友人いわく「読んだら歳三に惚れるよ」

上巻の半分くらいまで読んだときは “え~?こんなヒドイ男のどこがいいの?!”と思ってた
だって 喧嘩っ早くて人は斬りまくるし 女性の扱いは酷いし…

でも新撰組の副長になって さらにお雪という想い人と出逢って
なんだか少しずつ変わっていったように思う

下巻は特におもしろかった
鳥羽伏見の戦いで敗れ 近藤勇とも別れ それでもひとり信念を貫き 負け戦の中に身を投じる姿は やはりかっこよかった

『時勢などは問題ではない。勝敗も論外である。男は、自分が考えている美しさのために殉ずべきだ』

このストイックさが男性にも人気がある所以だろう

ただ
私はお雪と淡く切ない恋におちる“素”の歳さんの方が好きだな
彼女との関係と彼女自身をとても大事にしている歳さんの様子が微笑ましい
歳さんを追いかけてきたお雪と過ごす二日ふた晩の描写は あまりに切なく胸に迫るものがある

友人の予言どおり
この本読むと惚れます 土方歳三に

人間の土地 サン=テグジュペリ

2008-11-14 09:04:45 | ★さ・た行の作家
人間の土地 (新潮文庫)
サン=テグジュペリ,堀口 大学
新潮社

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『愛するということは、おたがいに顔を見あうことではなくて、いっしょに同じ方向を見ることだ。』

大好きな一節

こないだ読んだマンガ「ムーンライト・マイル」にもさらりと引用されていて、おおっと思った 好きなものに好きなものを見つけると嬉しい

「星の王子さま」ほどメジャーではないし 訳が硬質な感じで慣れるまで読みづらくはあるけど でも 好きな本


郵便飛行機のパイロットとしての経験談を中心に作者の生き方みたいなものが書かれている
人間と自然に対する愛情の深さがうかがえるのは「星の王子さま」と共通してると思う

『人間と、そのさまざまな欲求を理解するためには、人間を、そのもつ本質的なものによって知るためには、諸君の本然の明らかな相違を、おたがいに対立させてあってはいけない。そうなのだ、きみらは正しいのだ。きみらはいずれも正しいのだ。』

『たとえ、どんなにそれが小さかろうと、ぼくらが、自分達の役割を認識したとき、はじめてぼくらは、幸福になりうる』

『真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係の贅沢だ。物質上の財宝だけを追うて働くことは、われとわが牢獄を築くことになる。人はそこへ孤独の自分を閉じこめる結果になる、生きるに値する何ものをも購うことのできない灰の銭をいだいて。』


『飛行機は、機械には相違ないが、しかしまたなんと微妙な分析の道具だろう!この道具がぼくらに大地の真の相貌を発見させてくれる』

空を飛ぶといろいろなものが見えてくるものなんだろうか

青い空も星空も大好きでいつもつい見上げてしまう
こっこ 宮沢賢治 サン=テグジュペリ … 
いつも空を見上げてるような人も 好き  

いつもの朝に 今邑彩

2008-11-05 22:15:22 | 今邑彩
いつもの朝に
今邑 彩
集英社

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頭脳明晰 スポーツ万能 容姿端麗で絵の才能もある兄
何もかも平凡で冴えない弟 と画家の母親
数年前に事故で父親を失くした家族はそれなりに幸福に暮らしていたが
ある日 弟が小さい頃から大事にしていたくまのぬいぐるみから古い手紙を見つけ出し 兄弟の思わぬ秘密が明らかになる

常に光のあたる兄と いつも比べられて影になる弟
真相がわかるにつれ それぞれが心に抱えていたゆがみが浮き彫りになる

過去に起きた酷い事件
少年は自分を引き取って温かく育ててくれた恩人一家を惨殺する
きっかけはたった一度の万引き
彼らの前ではよい子でいたかったから
そして
好きな人の笑顔を見たかったから
もう一度 その人の笑顔を見たかっただけなのに

間違えることってのは誰でもある
大事なのは赦すこと
間違えちゃったひとを そしてその過ちの原因を作った自分を
赦すのは難しいことだと思うけど

いろんなものを赦してきたつもりだったのに自分だけを赦してなかった母
彼女もきちんと自分の心と向き合うことができてよかったと思う
その彼女の言葉

『神様がいるとしたら、それは、空の彼方にでんとかまえて下界を見下ろしているのではなくて、自分の姿を地上に住む人間の数だけに分裂させて、人間一人一人の中に住み着いているんじゃない?~そうすれば、高みから見下ろしているよりも、沢山の溺れそうになっている人を助けられるじゃない。~本気で助かりたいと願っている人たちに内側からそっと力を貸してやればいいんだから』

ホラーでもミステリーでもなく 不思議と温かい読後感の本でした