Not doing,but being ~在宅緩和ケアの普及を目指して~

より良い在宅訪問診療、在宅緩和ケアを目指す医師のブログ

胃瘻後に良い時間を過ごす為には

2012-03-07 14:18:29 | 認知症の看取り
昨日は胃瘻の問題点という事で書かせて頂きましたが
一言に胃瘻造設と言っても色々なケースがありますし、
当然ですが導入した全員が後悔をしている訳ではありません。
上手に介護され、良い時間を過ごしている方もおられます。

胃瘻を造設して良かった、後悔していないという家庭には
いくつか特徴があると感じています。それは、

1.患者様に判断能力があり、御自分の意思で胃瘻になった場合
胃瘻は現在90%が家族のみの判断で導入になっています。
しかし、神経難病など患者様が御自身で胃瘻を希望される事も
あり、周囲も納得しやすいのではないかと思います。

2.タフでバイタリティのある若い介護者がいる
介護者が60台くらいまでの元気な方では積極的な介護により
御本人も良い状態が長く維持出来る場合があります。
患者様の体重を支えたり、眠れない日があったりと介護は
精神的にも肉体的にも厳しい事が多いので、逆に病気を
されている方やご高齢の家族では長期間の介護が厳しいと
思います。

3.胃瘻のデメリットを含めてきちんと説明を受けており、
納得(覚悟)して胃瘻が導入になっている。

4.患者様を施設に任せることが出来る
地域にりますが特養は100人待ちなど当たり前で、有料老人
ホームなどの特定施設を利用しながら待つという方が多い
です。都内では頭金なしで20~30万円は最低でもかかります
が、御家族の負担はだいぶ少なくなります。

5.また、人間関係も大きく影響します。ヘルパー、看護師、
医師、ケアマネジャーと合う合わないも在宅介護に大きく
関わって来ます。この辺りも御性格によってはストレスに
なるかもしれません。逆に頼りになる医療者に出会えれば
負担やストレスは減ると思います。

総じて介護者のキャパシティや御性格はかなり大きいのでは
ないかと感じています。
あまり細かい事を心配し過ぎる御家族
では疲弊しやすく、長く続かないようです。

胃瘻導入後に残されたお時間ですが、
1年以内に60%が、3年以内に80%が亡くなると言われています。
しかし、私の経験では落ち着いている方の場合もっと長く
生存される方も多いようです。
長い介護生活になるので上手に助けてもらいながら、
御家族が御自分の負担を少なくする事も、御本人の良い介護
環境を維持するためには必要ではないかと考えています。